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「麻薬ですか?いや、この世界にそんなものを他の世界から持ってくるなど……考えられませんね」

「では、違法ではない合法ドラッグということなのでしょうか?」

「そもそも、この世界に麻薬という概念はないのです。呪術か毒しか、存在しません。そんな幻覚を見るなど……薬でどうにかするという発想はありません」

なるほど。そう言われてみれば、なんとなくわかる。

谷本の秘密の地下通路のこと言っといた方がいいよね?アイコンタクトで本部長に視線を向けると、本部長他オジサントリオは大きく頷いてくれた。

「なんだって!?どこかの屋敷の地下室と繋がっているという話は本当か!?」

「そこには、秘密の魔方陣もあって……」

王弟殿下は、ふぅーっとため息をつかれて、

「おそらくそこは、デズモンド子爵家のことだと思う」

デズモンド子爵家というのは、娼館を経営していて、魔法にも通じている家だそうで金に汚く、儲かることなら悪事でも簡単に手を染めることで有名な家。

うーん。それなら、あの倉庫、爆破してもいいよね?でも、あの魔方陣は欲しいところ?あれがあれば、いつでも、ニッポンへ行き来できるし、別にまりあがいなくても、捜査本部にあれば便利じゃない?

「え!?魔方陣を移動できるか?だって!?理論的にはできるけど、なんでまた?」

もう、王弟殿下に協力を仰ぐことしか思いつかないまりあは、洗いざらいをぶちまける。

「わかった。その地下通路に案内してくれ」

王弟殿下をあの倉庫へ案内するより前に、もう一度、アソコに潜った方がよさそうだと思っていると、オジサントリオもクーパーさんも同意見のようだった。

その帰り道、谷本商会へ寄る。もう何も言わなくても、阿吽の呼吸で分かり合える。

これは異世界で起きた殺人事件ではない。事件の根っこにはニッポンの事件が関わっている。まりあたちはその使命を受けて、今、この世界に来ているのだから。

まりあたち一行が到着すると、見張り番の警察官は敬礼をして、中に通してくれた。

入る順番は、クーパーさん、まりあ、オジサントリオとなって、それぞれ手には懐中電灯が握られている。

あれから谷本の所持品を探したが、やはりカードキーはなかった。だから今度も、まりあが開けなければ、開かない。だから先頭に近いところをキープする。

念のため、今度もそれぞれに隠ぺい魔法をかけ、それと索敵魔法も追加でかけている。もし、何かしら敵意のあるものが近づいてきたら、共通の認識としてわかるようになっている。

さすがに2回目ともなれば、前回のように騒ぐオジサンはいない。革靴では音がするので、底の分厚いゴム製のスニーカーを履いている。

20分ぐらい歩いたところ、ようやくこの前の電子キーが必要な鉄の扉が見えてきた。

索敵を作動しても、扉の向こう側に人の気配はない。安心して、扉のセンサーに魔力を流す。音もなく、すんなり開いて、滑り込むように中へ入る。

今回の目的はただひとつ。階段だ。

5分ほど歩いたところで最奥の階段が見えてきた。オジサントリオとクーパーさんは慣れた足取りで進んでいく。

階段下に集合となったところで、まりあは、それぞれに浮遊魔法をかける。音を立てなくても階段を登れるように工夫しているつもり。

これには、オジサントリオも驚きを隠せず、目を見開いている。

クーパーさんを先頭に階段を上がっていき、目の前の扉を開けて見ると、中は豪奢なお屋敷と言ったところ、透明人間になった5人は、部屋を見て回る。

その屋敷の使用人たちが忙しく動き回っているが、誰もまりあ達の存在に気づかない。

それぞれの部屋を物色するが、特段怪しいところは見当たらず、玄関から外へ出て、外の写真を撮る。

帰りに門扉の写真をもう一度撮影して、転移魔法で帰路に着く。

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