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まりあは悩みに悩んでいる。
一度に大勢の人間を運べる魔方陣が組み立てられないのである。
自分一人だけなら、いくらでもできる。
転移魔法だけなら、まだしも時空魔法と組み合わせて、となると途端に絶望的なほど複雑になってくる。
一人や二人を順番に送ることはできるかもしれないけど、一度に大量の人数を送れるような魔方陣は、まりあのキャパを超えている。
司祭様に相談しようかとも思うが、転移魔法ぐらいはできると思われているかもしれないけど、時空魔法を確立しているとまでは思っておられないでしょうから驚かれるとともに呆れられると思うと、その反応が少々怖い。
谷本の掌紋とともに、一緒に採取した血液や毛髪も、提出したけど、まだ結果は聞いていない。
まりあに要求されているのは、一刻も早く魔方陣を完成させることということだけ。
そんなこと言われてもね。魔方陣で行き来したことがないもの。最初は事故みたいなものだったし、聖女魔法を勉強したのも魔方陣を作るためではない。
「そんなぁ、無茶ぶりもいいとこよ」
京都ヒルトンで不貞腐れているときに、同期の智子が差し入れを持ってきてくれた。嬉しい。
「ねえ。異世界ってどんなところ?」
「うーん。一言で言えば、中世のヨーロッパみたいなところで、それプラス剣と魔法がある世界なのよ」
「へえ。凄いじゃん!もしかして、イケメン揃い?」
「もちろん!顔だけはイイ男が揃ってるわね。確かに」
「それって、この前の合コンレベル?」
「とんでもない。あんなの下の下よ。火器がない分、みんなカラダを鍛えているからガタイはいいわね」
「行ってみたいわ。連れて行ってよ」
「え?でも、まだ魔方陣が完成しないのよね」
「それは、大勢で行くときは、必要なのでしょう?一人や二人なら、まりあにくっついていけば行けるんじゃなくて?」
「うーん。そうかもしれないけど、行けるからと言って、還って来れる保証はどこにもないよ」
「でも、まりあは行って帰ってきたのでしょ?だったら大丈夫よ」
まりあ一人だけなら、一瞬行って、すぐに戻ってきたら誰にも分らないと思うけど、この世界の人間を王弟殿下の許可なしに勝手に連れて来てもいいのだろうか?それって、異世界からみれば、密入国の他ならないのでは?と考え込んでしまう。
それにまりあは、異世界召喚されたときから腹を括っている。いつ死んでも構わないという覚悟をしているからこそ、谷本の身元特定のために、あえて危険を冒してまで、時空転移魔法を使ったのだ。
それをかっこいい男の子がいるという理由だけで、連れて行ってくれとは、何か違う気がしてならない。
まりあは、思い悩んだ結果、連れて行けるのは異世界人を刺激しないようにICPOを中心とした白人メンバーを構成するように、府警本部長に申し入れをする。
ちょうどそこに警視総監と警察庁長官、それにICPOから派遣されたエリート刑事が同行していた。
府警本部長や警視総監は、明らかに不満を顔に表していたが、警察庁長官とICPOは訳知り顔で頷いてくれた。
まりあは黄色人種の中でも美形に属するから、その言葉には説得力があり迫力も加わって、ICPOで人選をするということで話はついた。
ついでに同期の智子の件も打診してみたら、それはあっさり却下されてしまった。まあ、当然の結果だけど。
でも、京都府警本部長並びに警視総監は、どうしても鑑識班だけはニッポン人にしてほしいと、その人選にこだわりを持っていたので、そこはまりあとして了承する。
要するに証拠は、ニッポンで押さえておきたいということらしい。
それで急遽少人数の捜査団が組まれ、死んでもいいという署名をさせて、個別に異世界へ送ることにしたのだ。
科捜研からは部長がどうしても同行したいと懇願され、ブサイクだったけど、まりあは断りづらく、同行を許可した。
それを本部長が恨めしそうに見ていたけど、見なかったことにする。
一度に大勢の人間を運べる魔方陣が組み立てられないのである。
自分一人だけなら、いくらでもできる。
転移魔法だけなら、まだしも時空魔法と組み合わせて、となると途端に絶望的なほど複雑になってくる。
一人や二人を順番に送ることはできるかもしれないけど、一度に大量の人数を送れるような魔方陣は、まりあのキャパを超えている。
司祭様に相談しようかとも思うが、転移魔法ぐらいはできると思われているかもしれないけど、時空魔法を確立しているとまでは思っておられないでしょうから驚かれるとともに呆れられると思うと、その反応が少々怖い。
谷本の掌紋とともに、一緒に採取した血液や毛髪も、提出したけど、まだ結果は聞いていない。
まりあに要求されているのは、一刻も早く魔方陣を完成させることということだけ。
そんなこと言われてもね。魔方陣で行き来したことがないもの。最初は事故みたいなものだったし、聖女魔法を勉強したのも魔方陣を作るためではない。
「そんなぁ、無茶ぶりもいいとこよ」
京都ヒルトンで不貞腐れているときに、同期の智子が差し入れを持ってきてくれた。嬉しい。
「ねえ。異世界ってどんなところ?」
「うーん。一言で言えば、中世のヨーロッパみたいなところで、それプラス剣と魔法がある世界なのよ」
「へえ。凄いじゃん!もしかして、イケメン揃い?」
「もちろん!顔だけはイイ男が揃ってるわね。確かに」
「それって、この前の合コンレベル?」
「とんでもない。あんなの下の下よ。火器がない分、みんなカラダを鍛えているからガタイはいいわね」
「行ってみたいわ。連れて行ってよ」
「え?でも、まだ魔方陣が完成しないのよね」
「それは、大勢で行くときは、必要なのでしょう?一人や二人なら、まりあにくっついていけば行けるんじゃなくて?」
「うーん。そうかもしれないけど、行けるからと言って、還って来れる保証はどこにもないよ」
「でも、まりあは行って帰ってきたのでしょ?だったら大丈夫よ」
まりあ一人だけなら、一瞬行って、すぐに戻ってきたら誰にも分らないと思うけど、この世界の人間を王弟殿下の許可なしに勝手に連れて来てもいいのだろうか?それって、異世界からみれば、密入国の他ならないのでは?と考え込んでしまう。
それにまりあは、異世界召喚されたときから腹を括っている。いつ死んでも構わないという覚悟をしているからこそ、谷本の身元特定のために、あえて危険を冒してまで、時空転移魔法を使ったのだ。
それをかっこいい男の子がいるという理由だけで、連れて行ってくれとは、何か違う気がしてならない。
まりあは、思い悩んだ結果、連れて行けるのは異世界人を刺激しないようにICPOを中心とした白人メンバーを構成するように、府警本部長に申し入れをする。
ちょうどそこに警視総監と警察庁長官、それにICPOから派遣されたエリート刑事が同行していた。
府警本部長や警視総監は、明らかに不満を顔に表していたが、警察庁長官とICPOは訳知り顔で頷いてくれた。
まりあは黄色人種の中でも美形に属するから、その言葉には説得力があり迫力も加わって、ICPOで人選をするということで話はついた。
ついでに同期の智子の件も打診してみたら、それはあっさり却下されてしまった。まあ、当然の結果だけど。
でも、京都府警本部長並びに警視総監は、どうしても鑑識班だけはニッポン人にしてほしいと、その人選にこだわりを持っていたので、そこはまりあとして了承する。
要するに証拠は、ニッポンで押さえておきたいということらしい。
それで急遽少人数の捜査団が組まれ、死んでもいいという署名をさせて、個別に異世界へ送ることにしたのだ。
科捜研からは部長がどうしても同行したいと懇願され、ブサイクだったけど、まりあは断りづらく、同行を許可した。
それを本部長が恨めしそうに見ていたけど、見なかったことにする。
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