事の始まりは前世~浮気夫に鉄槌をくらわす宿命

青の雀

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1回目の人生

結婚式1

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 あれから3年の月日が流れた。

 相変わらず権藤美和子は権藤不動産の社長をしている。婚約者の服部正幸とは、1年前に結婚したが、まだ子供はいない。ここのところ、美和子の大学の同窓は、結婚ラッシュで、毎月のようにご祝儀を包んでいる。

 社内では、夫婦別性の方が何かと都合がいいから、旧姓のままの権藤姓を名乗っている。

 正幸も、正幸の両親も権藤家への婿養子を希望したが、父が許さなかった。父は昭和生まれの昔気質で、男が米5合をもっていたら、婿養子などに行くべきではないという考え方があるらしく、ましてや、正幸は帝国大学卒業で、ケンブリッジでMBAを取得しているほど優秀なのだから、自分から婿養子など、どうして言い出すのか謎としか思えないというのが、父の持論であったため。

 それで美和子は服部家へ嫁に行き、戸籍上服部美和子となったのである。

 赤薔薇女子学園は、幼稚園から大学までの一貫校で、それぞれに試験がありふるいにかけられるものの、よほど成績が悪いか素行が悪くなければ、エスカレーター式で、大学まで行けるお嬢様養成学校として有名なのだ。

 赤薔薇出身者は、たいてい卒業後は、低大卒の男性と結婚するルートが一般的で、赤薔薇は、帝大生のお嫁さんとしての地位を確立している。そういう意味でも、美和子と正幸との婚約も自然な流れと言えよう。

 帝大措置の男性も奥さんを赤薔薇以外のところからもらうと、負け組に入り、将来の出世に影響が出ると言われている。

 赤薔薇OGの会というものが、健在で、言ってみれば交友会のようなものだが、上皇后様が卒業生の中にいらっしゃることから、赤薔薇卒業でなければ、玉の輿には乗れないとさえ言われているが無縁なのだ。

 そのOG会に理事として、美和子も名前を連ねている。

 OG会の中では、ランク付けが明確にあり、赤薔薇学園に途中から転入してきた者の扱いは、というと小学校から転入してきた者は、1ランク下に4つ星扱いとなり、中学からの転入生は3つ星、高校からの転入生は、2つ星、大学は1つ星と言われている。

 また江藤和美のような中学までの娘は3つ星で、高校までは4つ星と言われているが、大学へ進学しなくても、帝国大学のような国立大学を卒業した者には、5つ星の称号が与えられる。

 もちろん美和子は、赤薔薇女子大に進学し、その後、ハーバード大学院修士課程を修了した者にとっては、5つ星と評価されていることは当然の結果である。

 そんな時、美和子の秘書兼運転手をしている北村元也から、近々結婚するので、美和子を貴賓として招待し、披露宴で祝辞をしてもらえないかと打診があった。

 「北村君、おめでとう。もちろん、祝辞ぐらいいくらでもするわね。ご祝儀も社内規定のほかにはずんであげるから楽しみにしていて。」

 「ありがとうございます。ご祝辞を頂けるなんて、本当ですか?社長御夫妻にご臨席賜ること、その上、ご祝辞まで頂戴できるなんて、身に余る光栄です。彼女、赤薔薇出身なんですよ。それで是非、社長から祝辞をもらえれば、彼女も喜ぶのではないかと思って。」

 「あら、そうなの?私は赤薔薇OG会の理事として、名前を連ねているから、見知りおきの人かもしれませんね。」

 「あ、でも、社長のことはサプライズで登場していただくつもりでいますから、どうか、当日まではご内聞にお願いします。」

 「わかったわ。招待状が届くまで、楽しみにしているわね。」

 北村元也は、早稲田義塾大学を卒業したエリートだが、前権藤社長は、エリートだからと言って、いきなり役職者にはしないという方針で、ヒラ社員から、経験を積ませて、徐々に昇格させていくつもりでいる。

 そして、結婚を機会に運転手の任を解き、秘書課係長に昇進させることは決まっている。

 わが社にとっては、期待の星なのである。

 同じことが美和子の夫、服部正幸にも言える。正幸も美和子と結婚を機会に、営業課係長に1年前に就任したのだ。
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