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モデル
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翌朝、家族そろって婚姻届けを出しに行く。
地下鉄に乗り、1駅で区役所に着く。歩いてでも行ける距離なのだが、寒いからという理由から地下鉄で行く。
それにしても、しずく母は綺麗だ。聞けば、20歳の時に旦那さんに見初められて、強引に結婚が決まったらしい。
とても41歳とは、思えないほど、若くて美しい。
しずくも、病気でさえなければ、美しいまま年齢を重ねるだろう。
ボコッ!
いきなり、しずくから尻を蹴られた。
「何、見とれてんのよ!ダーリンがお母ちゃんに見とれてたんやで。ウチというものがありながら、もう、お嫁に行けへんようなことをさんざん、なぶり倒しておいて。恥ずかしいわっ!」
「いやん、使い物にならなくなっちゃう♡」
「ほな、前も蹴ったろか?」
ふくれっ面をしているしずくが可愛すぎて、舅姑の前だということを忘れて、思わずしずくにディープキスをしてしまう。
それを見ていて、しずく母もカラダをよじりながら、舅におねだりしている。
「私にも、して♡」
「あほ。ちゃっちゃと行くで。」
しずくは、ディープキスだけで、膝がガクガクになり、まともに歩けないほど感度がいい。
婚姻届けを受理されて、晴れて夫婦となるが、その際婚姻証明書を発行してもらう。これを明日会社に届け出れば、もうサイゴンの旧姓は失われる。
もう、実の親父の会社、親父と完全に縁が切れる。
養子話が出るとは、思っていなかったが、サイゴンにとっては、幸いなことだった。
その後、二条城へ行き、二の丸御殿の庭園をぼんやりと眺める。回遊式の庭園は、創建当時から何度も作り直されている。
本当に京都は、時間がゆったりと流れている感じがする。
これが1000年の都たる所以か。
二条城前のホテルで、昼食を取り、東京へと戻ろうとしていると、またしずくが離してくれない。
「しずくは、お正月まで実家にいたらいい。」
「だってぇ、寂しい。サイゴンちゃんと一緒に居たい。」
「3日間の辛抱だよ。仕事が終われば、すぐに戻ってくるよ。」
お留守番しているご褒美に、何か買ってあげるという話になり、デパートへ向かう。
デパートの婦人服売り場には、勤務先で扱っているブランドもあるから、普通よりは安く手に入る。
買ってから、領収書と服についているタグを会社に提出すると、給料にマイナス控除という形で返金されるのだ。
だから大して懐は痛まない。それに今月、従業員身分でのボーナスと給料が出たばかりなのだ。
しずくはすっかり機嫌を取り直して、母親と二人で買い物を楽しんでいる。
「あ、これ可愛い。これも。」
サイゴンは、何を着てもよく似合うしずくに釘付けだったのだが、
「お義母さんも、どうぞ選んでください。」
その一言で、今度はしずく母に釘付けになってしまった。しずくよりも年齢を重ねた分だけ、着こなしに余裕がある。服がもっと美しくなるように、アレンジができるのだ。これはプロのモデルにも匹敵する能力に見える。
それに若くて、美しい。もっと、脱がせたい。抱きたい。
何、考えているんだ。新婚だぞ。
若い肉だけでも、食傷気味だというのに。
試着室のカーテンが一斉に開いたとき、サイゴンは眼を見張った。双子の姉妹でも十分通用する。とても母娘に見えない。
気が付けば、スマホで写真を撮りまくっている。
これは使える!
結局、試着した洋服のすべてを買い取り、その場でタグを外してもらう。
そして、大急ぎで東京へ戻ったのだ。
これから企画書を書くため、うまくいけば、来年のSS(spring/summer)に間に合うかもしれない。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
その頃しずく一家は、サイゴンに置いてきぼりを食わされたのだが、しずく父はご機嫌。しずく母も思わぬ洋服を買ってもらい、こちらも上機嫌、しずくだけが腑に落ちない顔をしているが、両親が上機嫌でいるため言い出せない。
「なかなかいい婿殿だな。」
「ほんとうに。私にまで、こんなにたくさん買ってもらって得したわ。」
「何より丸菱物産の重役だというところがいい。あんな大手の会社にコネができたのは、願ってもない話だ。いい男を捕まえたな。おめでとう。」
しずく父は、わしゃわしゃとしずくの頭を撫でる。
あとは、あの男に種馬の役目を果たさせたら、もう用はないと言いたげな様子。いや、でもせっかく掴んだ丸菱物産とのつながりは、まだまだ利用価値がありそうだとほくそ笑んでいる。
サイゴンが自分の嫁に関心があるとは思っていない。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
翌日、昨日までのクリスマスソングに代わって、第9が流れている。
日本人の変わり身の早さには、ほとほと呆れる。
それで1週間たてば、何事もなかったような顔をして、皆、初もうでに行く。
会社に婚姻証明書を出し、ついでに配偶者控除の手続きをする。
そして、ついでに企画書を提出したのだ。
社内では、サイゴンが出した企画書の美人姉妹のことで、あっという間に噂になっていたのだ。
ちょうどSSのオーディションをそろそろ準備しているところに、飛び切り上玉のモデルを役員が持ち込んだのだから噂にならない方がおかしい。
それも、どこの海外ブランドも手を出していない無垢のモデルを。
「役員、一体この美人姉妹をどこで見つけてこられたのですか?」
「カミさんと、義母です。」
「えっえー!」
地下鉄に乗り、1駅で区役所に着く。歩いてでも行ける距離なのだが、寒いからという理由から地下鉄で行く。
それにしても、しずく母は綺麗だ。聞けば、20歳の時に旦那さんに見初められて、強引に結婚が決まったらしい。
とても41歳とは、思えないほど、若くて美しい。
しずくも、病気でさえなければ、美しいまま年齢を重ねるだろう。
ボコッ!
いきなり、しずくから尻を蹴られた。
「何、見とれてんのよ!ダーリンがお母ちゃんに見とれてたんやで。ウチというものがありながら、もう、お嫁に行けへんようなことをさんざん、なぶり倒しておいて。恥ずかしいわっ!」
「いやん、使い物にならなくなっちゃう♡」
「ほな、前も蹴ったろか?」
ふくれっ面をしているしずくが可愛すぎて、舅姑の前だということを忘れて、思わずしずくにディープキスをしてしまう。
それを見ていて、しずく母もカラダをよじりながら、舅におねだりしている。
「私にも、して♡」
「あほ。ちゃっちゃと行くで。」
しずくは、ディープキスだけで、膝がガクガクになり、まともに歩けないほど感度がいい。
婚姻届けを受理されて、晴れて夫婦となるが、その際婚姻証明書を発行してもらう。これを明日会社に届け出れば、もうサイゴンの旧姓は失われる。
もう、実の親父の会社、親父と完全に縁が切れる。
養子話が出るとは、思っていなかったが、サイゴンにとっては、幸いなことだった。
その後、二条城へ行き、二の丸御殿の庭園をぼんやりと眺める。回遊式の庭園は、創建当時から何度も作り直されている。
本当に京都は、時間がゆったりと流れている感じがする。
これが1000年の都たる所以か。
二条城前のホテルで、昼食を取り、東京へと戻ろうとしていると、またしずくが離してくれない。
「しずくは、お正月まで実家にいたらいい。」
「だってぇ、寂しい。サイゴンちゃんと一緒に居たい。」
「3日間の辛抱だよ。仕事が終われば、すぐに戻ってくるよ。」
お留守番しているご褒美に、何か買ってあげるという話になり、デパートへ向かう。
デパートの婦人服売り場には、勤務先で扱っているブランドもあるから、普通よりは安く手に入る。
買ってから、領収書と服についているタグを会社に提出すると、給料にマイナス控除という形で返金されるのだ。
だから大して懐は痛まない。それに今月、従業員身分でのボーナスと給料が出たばかりなのだ。
しずくはすっかり機嫌を取り直して、母親と二人で買い物を楽しんでいる。
「あ、これ可愛い。これも。」
サイゴンは、何を着てもよく似合うしずくに釘付けだったのだが、
「お義母さんも、どうぞ選んでください。」
その一言で、今度はしずく母に釘付けになってしまった。しずくよりも年齢を重ねた分だけ、着こなしに余裕がある。服がもっと美しくなるように、アレンジができるのだ。これはプロのモデルにも匹敵する能力に見える。
それに若くて、美しい。もっと、脱がせたい。抱きたい。
何、考えているんだ。新婚だぞ。
若い肉だけでも、食傷気味だというのに。
試着室のカーテンが一斉に開いたとき、サイゴンは眼を見張った。双子の姉妹でも十分通用する。とても母娘に見えない。
気が付けば、スマホで写真を撮りまくっている。
これは使える!
結局、試着した洋服のすべてを買い取り、その場でタグを外してもらう。
そして、大急ぎで東京へ戻ったのだ。
これから企画書を書くため、うまくいけば、来年のSS(spring/summer)に間に合うかもしれない。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
その頃しずく一家は、サイゴンに置いてきぼりを食わされたのだが、しずく父はご機嫌。しずく母も思わぬ洋服を買ってもらい、こちらも上機嫌、しずくだけが腑に落ちない顔をしているが、両親が上機嫌でいるため言い出せない。
「なかなかいい婿殿だな。」
「ほんとうに。私にまで、こんなにたくさん買ってもらって得したわ。」
「何より丸菱物産の重役だというところがいい。あんな大手の会社にコネができたのは、願ってもない話だ。いい男を捕まえたな。おめでとう。」
しずく父は、わしゃわしゃとしずくの頭を撫でる。
あとは、あの男に種馬の役目を果たさせたら、もう用はないと言いたげな様子。いや、でもせっかく掴んだ丸菱物産とのつながりは、まだまだ利用価値がありそうだとほくそ笑んでいる。
サイゴンが自分の嫁に関心があるとは思っていない。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
翌日、昨日までのクリスマスソングに代わって、第9が流れている。
日本人の変わり身の早さには、ほとほと呆れる。
それで1週間たてば、何事もなかったような顔をして、皆、初もうでに行く。
会社に婚姻証明書を出し、ついでに配偶者控除の手続きをする。
そして、ついでに企画書を提出したのだ。
社内では、サイゴンが出した企画書の美人姉妹のことで、あっという間に噂になっていたのだ。
ちょうどSSのオーディションをそろそろ準備しているところに、飛び切り上玉のモデルを役員が持ち込んだのだから噂にならない方がおかしい。
それも、どこの海外ブランドも手を出していない無垢のモデルを。
「役員、一体この美人姉妹をどこで見つけてこられたのですか?」
「カミさんと、義母です。」
「えっえー!」
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