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3度目の正直
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「公爵令嬢スカーレット・ルビンマイン嬢、貴様との婚約はなかったものとさせてもらおう。」
今日は、学園の卒業記念祝賀パーティでのこと。
今、高らかに宣言されたのは、この国の王太子殿下ジャガー・エドワルド様、わたくしと婚約されたきっかけは、ジャガー様が5歳のお誕生日になられたとき、お妃選定会が行われ、その際、殿下から一目惚れされ、わたくしはわけがわからないまま婚約者に仕立てられていたのです。
「はい、確かに承りました。」
理由なんて、どうでもいい。これでやっと自由に恋愛ができるし、なんでも好きなものをお腹いっぱい食べられるようになるのですもの。
いままでは殿下以外の殿方とも喋ることは禁止されているし、喋れる相手と言えば家族、公爵邸の使用人としかまともに話したことがない。
やっと自由になれる。その嬉しさで胸がいっぱいだったのだ。
そして肝心なところを聞き忘れてしまっていたことが、すべての始まり。
なんと!ジャガー様の想い人の女性をわたくしがいじめていたという冤罪をかけられてしまって、明日、処刑されるという大事なことを。
その方は男爵令嬢のリリアーヌ様と言われる方で、わたくしとは一度も面識がない方だというのに。
それを聞かされたのは、投獄されてからのことです。
何がなにかわからないまま、気づけば王城の貴族牢に放り込まれていたのです。貴族牢と言うのは、立派なお部屋で、そこが貴族牢だということさえわかりませんでした。なぜわかったかと言うと、なかなか自分の家に帰れなかったことで、入り口に鉄格子が嵌っていたからです。
父のルビンマイン公爵が何度も面会を申し込んでくれたらしいのですが、一度も叶うことはございませんでした。
そして、わたくしは処刑されるのではなく、食事に毒を盛られ毒殺されてしまったのです。
すべては男爵令嬢リリアーヌの仕業だったことを知ったのは、肉体ブティックへ行ってからのことでした。
でもリリアーヌもまた嘘を吐いて、その嘘がいつバレるかもわからないからスカーレットに毒を盛ったと白状させられ、ジャガー殿下と共にむち打ち刑100回の末、国外追放になったとか?と聞かされる。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
「いらっしゃいませ。ようこそ肉体ブティックへ。」
「ここは?」
「ここは三途の川の手前にあるといってもわかりにくいかもしれないけど、黄泉の国にある肉体ブティックと言う神直営の店です。本来なら、幸せな一生を送る人だったはずの人が第三者の手により、ゆがめられ非業の死を遂げた人のために第二の人生をやり直してもらうためにできたお店です。もう一度人生をやり直して、今度こそ幸せな人生を手に入れましょう。」
「はぁ。わたくし死んでしまったのですか?」
「そうですよ。リリアーヌ男爵令嬢の罠にはまり殺されてしまったのですよ。でもリリアーヌとアナタの婚約者だったジャガーは、二人ともすぐ死ぬ運命にあるのよ。あなたを嵌めたことがバレ、むち打ち刑と国外追放処分になるのよ。ルビンマイン公爵に元老院が頑張ってくれるから心配せず、新しいカラダを手に入れましょう。」
「リリアーヌとジャガーもここへ来るのかしら?」
「いいえ。来ません。二人は地獄へ真っ逆さまでExpressの切符ですから。」
「そうですか?できればもう二度とジャガーに逢いたくないです。婚約破棄されて、やっと自由が手に入ると思った瞬間殺されてしまうのは嫌です。それと好きでもない相手と政略で無理やり結婚させられることは、死ぬより辛いです。」
「そうね。だったらいっそのこと異世界へ行ってみない?この世界から異世界へ行く人は多いよ。しばらくカトレーヌ聖女様のところで修行をしてからになると思うけど?」
「異世界とは?全く違った価値観のある所でございますか?」
「そうよ。今までは聖女様が選んで異世界へ行かれることが多かったけど、異世界は一般人が当たり前の世界だから大丈夫。きっとうまくやれるはずよ。政略結婚もないし、婚約破棄なんてめったにないわ。今の世界にいるよりも自由だけど、文明がかなり発達しているからしばらくはカトレーヌ聖女様のところで修行してきて頂戴。」
「わかりました。ぜひ、お願いしますわ。」
スカーレットは女神様に連れられ、カトレーヌ聖女様のところへ行くが、ずいぶん変わったところで困惑を隠せない。
「ここは?」
「これが異世界の住居なのよ。ここで異世界の常識を学んでから行ったほうがスムーズにいくと思うのよ。この世界では、全員が平等なのよ。もちろんお金持ちの家には、使用人がいるけど、それは身分と関係なくお金を稼ぐためにいるのよ。」
そうこうしているうちに聖女様が戻ってこられたようだ。
「あのね、女神様ウチは、何度も言っているけど女神様のところの研修施設じゃないのよ!こう度々異世界人を連れてこられても困るのよ。」
「だってニッポンを教えるのに、ここほど好都合な場所ほかにある?」
「だからといって、ウチばかりは不公平ってもんよ。ニッポンへ行った聖女様のところへホームスティさせるとか、いくらでもやり方があるでしょ?」
「そんなにきつく言わなくったっていいでしょう。次からは考えるから、とにかくこの子お願いね。冤罪をかけられ婚約破棄されたうえに毒殺までされたのよ。だからもうあの世界にはイヤだって。」
「まぁ!お気の毒に。わたくしはカトレーヌ・ベンジャミン、聖女で商会主の妻です。わたくしは元ニッポンのキャリアウーマンで、ブティックを通じてこの世界に転生しました。いわばあなたと逆バージョンです。」
カトレーヌの言っていることの半分も理解できないスカーレットだったけど、のっけから女神様とやり合うぐらいだから相当な実力者であることはわかる。
そこで1週間ニッポンの研修を受けたスカーレットは、いよいよニッポンデビューを果たす。
転生先は、ニッポンの銀行OLのぞみとして、今日も為替送金を行っている。
最初は扱う金額の多さにビックリするも、人間とは慣れるもので1日120億円ぐらい、どうってことないようになったのである。
丸の内支店で花形テラーとして活躍していたのだが、交通事故で記憶を失くしてからは、後方支援にまわって、為替を担当している。
窓口に来るお客さんは、のぞみ目当てのお客さんが多かったから最初はガッカリされ、すぐにのぞみちゃんを呼んでと声がかかる。
そういうときは、笑顔で応じる。銀行はサービス業だから、できるだけ顧客の希望をかなえる。
銀行は15時にシャッターが閉まるが、それから後は結構忙しい。収支を合わせなければならないから、伝票と実際の取引額を合わせる。合えば17時にでも上がれるが、合わなければ深夜まで残業をする。
ゴトビと言われる5日、10日に集金が集中していて、やはり忙しく、20日~月末はいつも残業をしています。
今日は、学園の卒業記念祝賀パーティでのこと。
今、高らかに宣言されたのは、この国の王太子殿下ジャガー・エドワルド様、わたくしと婚約されたきっかけは、ジャガー様が5歳のお誕生日になられたとき、お妃選定会が行われ、その際、殿下から一目惚れされ、わたくしはわけがわからないまま婚約者に仕立てられていたのです。
「はい、確かに承りました。」
理由なんて、どうでもいい。これでやっと自由に恋愛ができるし、なんでも好きなものをお腹いっぱい食べられるようになるのですもの。
いままでは殿下以外の殿方とも喋ることは禁止されているし、喋れる相手と言えば家族、公爵邸の使用人としかまともに話したことがない。
やっと自由になれる。その嬉しさで胸がいっぱいだったのだ。
そして肝心なところを聞き忘れてしまっていたことが、すべての始まり。
なんと!ジャガー様の想い人の女性をわたくしがいじめていたという冤罪をかけられてしまって、明日、処刑されるという大事なことを。
その方は男爵令嬢のリリアーヌ様と言われる方で、わたくしとは一度も面識がない方だというのに。
それを聞かされたのは、投獄されてからのことです。
何がなにかわからないまま、気づけば王城の貴族牢に放り込まれていたのです。貴族牢と言うのは、立派なお部屋で、そこが貴族牢だということさえわかりませんでした。なぜわかったかと言うと、なかなか自分の家に帰れなかったことで、入り口に鉄格子が嵌っていたからです。
父のルビンマイン公爵が何度も面会を申し込んでくれたらしいのですが、一度も叶うことはございませんでした。
そして、わたくしは処刑されるのではなく、食事に毒を盛られ毒殺されてしまったのです。
すべては男爵令嬢リリアーヌの仕業だったことを知ったのは、肉体ブティックへ行ってからのことでした。
でもリリアーヌもまた嘘を吐いて、その嘘がいつバレるかもわからないからスカーレットに毒を盛ったと白状させられ、ジャガー殿下と共にむち打ち刑100回の末、国外追放になったとか?と聞かされる。
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「いらっしゃいませ。ようこそ肉体ブティックへ。」
「ここは?」
「ここは三途の川の手前にあるといってもわかりにくいかもしれないけど、黄泉の国にある肉体ブティックと言う神直営の店です。本来なら、幸せな一生を送る人だったはずの人が第三者の手により、ゆがめられ非業の死を遂げた人のために第二の人生をやり直してもらうためにできたお店です。もう一度人生をやり直して、今度こそ幸せな人生を手に入れましょう。」
「はぁ。わたくし死んでしまったのですか?」
「そうですよ。リリアーヌ男爵令嬢の罠にはまり殺されてしまったのですよ。でもリリアーヌとアナタの婚約者だったジャガーは、二人ともすぐ死ぬ運命にあるのよ。あなたを嵌めたことがバレ、むち打ち刑と国外追放処分になるのよ。ルビンマイン公爵に元老院が頑張ってくれるから心配せず、新しいカラダを手に入れましょう。」
「リリアーヌとジャガーもここへ来るのかしら?」
「いいえ。来ません。二人は地獄へ真っ逆さまでExpressの切符ですから。」
「そうですか?できればもう二度とジャガーに逢いたくないです。婚約破棄されて、やっと自由が手に入ると思った瞬間殺されてしまうのは嫌です。それと好きでもない相手と政略で無理やり結婚させられることは、死ぬより辛いです。」
「そうね。だったらいっそのこと異世界へ行ってみない?この世界から異世界へ行く人は多いよ。しばらくカトレーヌ聖女様のところで修行をしてからになると思うけど?」
「異世界とは?全く違った価値観のある所でございますか?」
「そうよ。今までは聖女様が選んで異世界へ行かれることが多かったけど、異世界は一般人が当たり前の世界だから大丈夫。きっとうまくやれるはずよ。政略結婚もないし、婚約破棄なんてめったにないわ。今の世界にいるよりも自由だけど、文明がかなり発達しているからしばらくはカトレーヌ聖女様のところで修行してきて頂戴。」
「わかりました。ぜひ、お願いしますわ。」
スカーレットは女神様に連れられ、カトレーヌ聖女様のところへ行くが、ずいぶん変わったところで困惑を隠せない。
「ここは?」
「これが異世界の住居なのよ。ここで異世界の常識を学んでから行ったほうがスムーズにいくと思うのよ。この世界では、全員が平等なのよ。もちろんお金持ちの家には、使用人がいるけど、それは身分と関係なくお金を稼ぐためにいるのよ。」
そうこうしているうちに聖女様が戻ってこられたようだ。
「あのね、女神様ウチは、何度も言っているけど女神様のところの研修施設じゃないのよ!こう度々異世界人を連れてこられても困るのよ。」
「だってニッポンを教えるのに、ここほど好都合な場所ほかにある?」
「だからといって、ウチばかりは不公平ってもんよ。ニッポンへ行った聖女様のところへホームスティさせるとか、いくらでもやり方があるでしょ?」
「そんなにきつく言わなくったっていいでしょう。次からは考えるから、とにかくこの子お願いね。冤罪をかけられ婚約破棄されたうえに毒殺までされたのよ。だからもうあの世界にはイヤだって。」
「まぁ!お気の毒に。わたくしはカトレーヌ・ベンジャミン、聖女で商会主の妻です。わたくしは元ニッポンのキャリアウーマンで、ブティックを通じてこの世界に転生しました。いわばあなたと逆バージョンです。」
カトレーヌの言っていることの半分も理解できないスカーレットだったけど、のっけから女神様とやり合うぐらいだから相当な実力者であることはわかる。
そこで1週間ニッポンの研修を受けたスカーレットは、いよいよニッポンデビューを果たす。
転生先は、ニッポンの銀行OLのぞみとして、今日も為替送金を行っている。
最初は扱う金額の多さにビックリするも、人間とは慣れるもので1日120億円ぐらい、どうってことないようになったのである。
丸の内支店で花形テラーとして活躍していたのだが、交通事故で記憶を失くしてからは、後方支援にまわって、為替を担当している。
窓口に来るお客さんは、のぞみ目当てのお客さんが多かったから最初はガッカリされ、すぐにのぞみちゃんを呼んでと声がかかる。
そういうときは、笑顔で応じる。銀行はサービス業だから、できるだけ顧客の希望をかなえる。
銀行は15時にシャッターが閉まるが、それから後は結構忙しい。収支を合わせなければならないから、伝票と実際の取引額を合わせる。合えば17時にでも上がれるが、合わなければ深夜まで残業をする。
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