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偽聖女様を虐めたと成敗される

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 まりあと大輔は二人協力し合って、政治家の汚職事件、芸能人の巨額脱税事件、大企業の総会対策と称した反社会的集団との癒着などを次々と暴いていく。命の危険にさらされるが、たいてい隠蔽をかけているので、どこの誰の仕業かわからないようだ。

 将来のNリーガーを襲っている悪党のボスは、西都大学に息子を通わせている西崎洋一だということがわかった。西崎は西都大学に多額の寄付をしている理事の一人。最近、成り上がった不動産屋で、世の中金さえあれば、なんでもうまくいくものだと信じている。

 大輔が所属する東都大学のサッカー部と西都大学のサッカー部が対抗試合をすることになった。なんでもその試合でNリーグのスカウトがやってくると言うから、みんな張り切っているようだ。

 当然、その前日までにはまた大輔を狙った新たな悪党がやってくるに違いない。

 そこを狙って、二人は作戦を練る。同級生も餌食になっていることから、同い年の可能性は否定できない。西都大学のスタメンには、西崎の名前はない。

 いつもは大学から自宅まで、転移を使って移動するのだが、試合に出ることが決まってからは、徒歩で通学するようにしている。もちろん、隠蔽魔法で常に聖女様が同行している。自分が囮になれば必ず何か仕掛けてくると信じているから。

 そして、二人には内緒?のことだけど、女神様と桃太郎神様もご一緒に見張っている。若い男の子の夢を奪うなんて、鬼畜に等しい。

 悪党どもは、どんな卑怯な手を使ってくるかわからないので、不測の事態に備えるためである。

 神様の予感は的中する。大輔の両親を狙ったのだ。両親が乗っている車のブレーキオイルを細工して、ブレーキが利かないようにしていたのだ。

 両親の交通事故を囮にすれば、必ずや大輔が一人で来ると踏んでいる。

 それで神様たちは、大輔の両親のブレーキオイルはそのままにして、両親の車に細工をしたつもりが悪党の車に細工するように変更する。

 うまくいったとほくそ笑み、悪党が車に乗り込んだ。あとは、大輔が血相変えてやってくるところを捕まえ、足腰が立たないようにボコボコにする計画。

 ところが大輔の両親が車に乗り込み発車させてもブレーキに異常がないどころか、悪党が乗り込んだ車の調子が何やらおかしい。ブレーキが利かなくなり、ついには暴走の上、壁に激突して止まった。

 上空には自らの車のブレーキを細工している様子が浮かび上がっている。

 まるで映画のワンシーンかのような映像に道行く人々は足を止め見上げる。

 瀕死の重傷を負った悪党の一味は、その映像を見て、そのままこと切れる。

 「そんな……バカな……。」

 西崎洋一は地団太を踏む。





 いよいよ対抗試合が始まる。西都大学の応援はいかにも金持ち大学と言うにふさわしく金ぴかぞろい。

 対して、東都大学はというと、赤薔薇女子大学の学生が地味に応援している。赤薔薇女子大の校訓は「気高く華やかに美しく」だから、そこにいるだけで成金ではないゴージャス感が漂っている。

 奇跡の女子大生が応援に来るということもあり、マスコミが多数押しかけている。

 ますます士気が上がる両チームメンバーたち。

 いよいよキックオフである。

 安林大輔は世界のレジェンドにしかできない技を次々繰り出し、先制点を得る。芸能班でなくスポーツ班も注目する中、西都はメンバー交代で西崎洋平を指名する。

 金ぴか親父の洋一は、「あっぱれ」と書かれた扇子を取り出し、エールを送っている。

 洋平は走ってボールを追いかけ、スカウトマン、マスコミや親父にいいところを見せたいと張り切っている。

 洋平のところにパスが送られてくるも、なぜか右足が動かない?ボールは素通りしていく。

 アンフェアーだけど、まりあ聖女が魔法を使っている。自分と同い年の有望な選手を金の力で次々つぶしているのだから、どっちがアンフェアーかわからない。

 また、ボールを追いかけ走るが、そういうことが2~3度続くと、もう洋平のところへパスは送られなくなり、メンバーを交代させられてしまう。

 洋平は監督から叱られるが、なぜか蹴ろうとすると足が動かなくなったと言い訳をしている。

 試合は東都の圧勝で、大輔のところには、マスコミとスカウトのほかに西都のチームメンバーからユニフォームを交換したいとの申し出が殺到する。

 ユニフォームは一枚しかないから、じゃんけんで交換相手を選ぶことにする。

 ふと、大輔がじゃんけんしているメンバーを見ると、なんと!洋平も混じってじゃんけんしているではないか!

 もし、洋平が勝って、ユニフォームを手に入れたら、呪いをかけられるのでは?と心配する。

 結局、洋平はじゃんけんにも負け、杞憂に終わる。

 「奇跡のレジェンドの技をどうやって習得されましたか?」

 マスコミは、大輔が適当にあしらってもしつこく食い下がる。

 「昔からファンで、足さばきを研究していました。」

 大輔が心底嫌そうな顔をしているにもかかわらず、なおも食い下がる。

 「奇跡のレジェンドは、先の大戦で戦死されましたが、どう思われますか?」

 「心よりお悔やみ申し上げます。」

 奇跡のレジェンドは俺自身だ。その技を封じていても、目の前にボールが着た途端、勝手に足が動いてしまうから仕方がない。

 普段の練習では一度も使っていない。と思う。なぜか本番試合になると、潜在意識が活発になる。いじめられっ子に転生したとき、不良から絡まれたときもそうだった。

 兵役の時を思い出し、相手をねじ伏せるまで叩きのめす。そうしなければ、殺られてしまうからだ。少しも気を抜けない。

 いつも緊張状態を和らげてくれる唯一の存在が、聖女まりあ様なのである。

 いつの間にか、奇跡の女子大生花園まりあが自分の横に来てくれていた。それでマスコミはまりあのほうへ殺到し、やっと取材攻勢から逃れられる。

 まりあのボディガードのくせに、なんて情けないと思う。ただ、今日は心身ともに疲弊したので、早く帰って寝よう。ロッカールームに行き、そのまま転移で帰宅する。

 帰宅したら、もうまりあは帰っていた。

 「疲れたでしょう。栄養ドリンクを買っておいたので、飲んで。」

 手渡してくれるので、つい甘えて

 「口移しで飲ませて。」

 まりあは、俺の横へ座り、キャップを外し、一口含み、それから俺の口へ栄養ドリンクを流す。同時に俺に回復魔法をかけてくれるものだから、たちまちアソコは、ムクムクと元気が出てくる。

 そして朝まで愛し合うことになるのだが、翌日のスポーツ新聞一面に「奇跡のレジェンド、復活!」の文字が躍ることを大輔はまだ知らない。
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