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横恋慕され、ひき逃げ
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花丸でフランスのコンクールがあるから、それにエントリーしてみないかとの話が来たのは、入社すぐのことであった。普通は、新入社員に絶対に教えてもらえないような話がきたことは。まぎれもなく社長の娘だから。
でも、あずさはそのチャンスを遠慮なく活用させてもらうことにする。
最初はデザイン画だけで、エントリーする。その後生地、素材を決めて、実際に洋服を作ってからの勝負となる。
ビギナーズラックということも手伝い、なんとか1次審査は通過した。あのmiss.azusa hanamaru 効果かもしれない。Lucky girl の顔を拝みたいのだろう。
そして2次審査御通過し、最終審査は、パリで行われる。パリへの航空チケットを買おうとしていると、父がやたらにうるさい。
「船で行け。船はめったに沈まない。飛行機は危ない。」
「ええー!パリまで、船で行ったら、何日かかると思っているの?2回も墜ちないって、ったく心配性なんだからね。」
「何言っている!一度あることは二度あるというだろう。」
「それを言うなら、二度あることは三度あるって言うのよ。とにかく飛行機で行きます。この前の宝くじでも当たらなかったでしょ?大丈夫よ。」
「ううううう……、ダメだ!それなら行かせない!社長命令で行くことを禁ずる。」
「何よ!娘が巣立つ芽を摘むの?」
父娘が大げんかしていると、母が来て
「それでは、わたくしがあずさの代理として、花の都パリへ行きますわ。せっかく新人デザイナーの登竜門と言われるコンクールの最終審査まで残ったのですもの。わたくしが代理で行ったっていいでしょう?」
「「は?」」
お母様はスーツケースを出しながら、さっさと荷造りしている。
お母様が代理で行けるはずもないことは重々承知のうえ、援護射撃してくださっているのだろうと勝手にいいように解釈していると、実は本気でパリに行きたかったらしいわ。
それでお父様も折れて、自分も一緒に最終審査に付いていくと言い出す。
あずさは、子供か?子供に違いはないけど、もう成人しているし……。なんで、家族そろって行かなきゃなんないのよ!
優勝できたら、パリコレに出場できるのだ。ぜひ、優勝したいけど、無理だろうな。世界中から、プロアマ含めて、多数、エントリーしてくる。
その中で勝ちに行くなど到底、叶わない夢のまた夢の話。だから、落ち込むあずさを見越して、家族で旅行したいのかもしれない。
まぁ、気楽に行きましょう。どうせダメだとわかっていても、パリを楽しめばいい。
こうして、家族3人で、ほとんど旅行気分で行くことになったのである。空の旅は快適で、もう二度と墜ちたりしないと思うわ。だって、肉体ブティックの神様が付いているのだもの。天国が満杯になるから、天寿を全うできるまで、行けない。
あずさが作るデザインは、いわゆる奇を衒うものではない。あくまでもオーソドックスな基本形なのであるが、それがかえってエレガントさを引き立たせている。
これも神様からのギフトかもしれない。
コンクールの結果は、見事優勝を勝ち取る。予期しなかった出来事に、家族一同、茫然となるが、これからが大変である。パリコレは実績重視で、いくらコンクールに優勝しても、隅っこに追いやられるのが常識。モデルさんの確保も重要。トップモデルのギャラは高く無名の新人のところへなど来てくれない。
花丸の父のコネでモデルさんは、日本人を中心になんとかそろえられたのだが、ただ綺麗な衣装を着て、歩くだけがモデルではない。そのスタイルを表現しなければならない。だから、女優さんのほうがいいのだが、身長が足りない。
まぁ、最初なので、オーディションをして、とりあえず10人のモデルさんを選ぶ。身長180センチなんて背が高いよね。
どんな形でもいいから、パリコレに出たいという熱意ある人が選ばれることになったのだ。まぁ、ほとんど花丸のコネなんだけど。花丸の名前でなければ、誰も信用してくれないところ。
パリコレは大盛況のうちに閉幕する。その後、なぜかあずさブランドに注文が殺到したのである。
なんで、こんな平凡な服が魅力的なのか不思議。平凡すぎるところがいいのかもしれない。だって、他のデザイナーの衣装を見ていると、とてもではないけどそれを着て外出する気にならないもの。恥ずかしいから。
なぜか、あずさデザインの服に袖を通すと運気が上がると言われている。うーん、やっぱり飛行機事故でただひとり助かったから?よくわからないけど、モデル仲間さんの口コミで、次のコレクションからは、モデル探しに躍起にならなくても、タダでもいいから着させてくれって、依頼が殺到したのである。
花丸の中にあずさブランドを立ち上げて、市販することにした。日本人は、パリコレという冠に弱い。飛ぶように売れたのだ。
そして、お母様もミセススタイルとして、あずさブランドを、大手を振って着るようになり、花丸の制服もあずさがデザインしたのに代わる。
花丸に入社すれば、あずさの制服が着られ、運気が上がるからと、就職希望者が増えたのだ。
でも、あずさはそのチャンスを遠慮なく活用させてもらうことにする。
最初はデザイン画だけで、エントリーする。その後生地、素材を決めて、実際に洋服を作ってからの勝負となる。
ビギナーズラックということも手伝い、なんとか1次審査は通過した。あのmiss.azusa hanamaru 効果かもしれない。Lucky girl の顔を拝みたいのだろう。
そして2次審査御通過し、最終審査は、パリで行われる。パリへの航空チケットを買おうとしていると、父がやたらにうるさい。
「船で行け。船はめったに沈まない。飛行機は危ない。」
「ええー!パリまで、船で行ったら、何日かかると思っているの?2回も墜ちないって、ったく心配性なんだからね。」
「何言っている!一度あることは二度あるというだろう。」
「それを言うなら、二度あることは三度あるって言うのよ。とにかく飛行機で行きます。この前の宝くじでも当たらなかったでしょ?大丈夫よ。」
「ううううう……、ダメだ!それなら行かせない!社長命令で行くことを禁ずる。」
「何よ!娘が巣立つ芽を摘むの?」
父娘が大げんかしていると、母が来て
「それでは、わたくしがあずさの代理として、花の都パリへ行きますわ。せっかく新人デザイナーの登竜門と言われるコンクールの最終審査まで残ったのですもの。わたくしが代理で行ったっていいでしょう?」
「「は?」」
お母様はスーツケースを出しながら、さっさと荷造りしている。
お母様が代理で行けるはずもないことは重々承知のうえ、援護射撃してくださっているのだろうと勝手にいいように解釈していると、実は本気でパリに行きたかったらしいわ。
それでお父様も折れて、自分も一緒に最終審査に付いていくと言い出す。
あずさは、子供か?子供に違いはないけど、もう成人しているし……。なんで、家族そろって行かなきゃなんないのよ!
優勝できたら、パリコレに出場できるのだ。ぜひ、優勝したいけど、無理だろうな。世界中から、プロアマ含めて、多数、エントリーしてくる。
その中で勝ちに行くなど到底、叶わない夢のまた夢の話。だから、落ち込むあずさを見越して、家族で旅行したいのかもしれない。
まぁ、気楽に行きましょう。どうせダメだとわかっていても、パリを楽しめばいい。
こうして、家族3人で、ほとんど旅行気分で行くことになったのである。空の旅は快適で、もう二度と墜ちたりしないと思うわ。だって、肉体ブティックの神様が付いているのだもの。天国が満杯になるから、天寿を全うできるまで、行けない。
あずさが作るデザインは、いわゆる奇を衒うものではない。あくまでもオーソドックスな基本形なのであるが、それがかえってエレガントさを引き立たせている。
これも神様からのギフトかもしれない。
コンクールの結果は、見事優勝を勝ち取る。予期しなかった出来事に、家族一同、茫然となるが、これからが大変である。パリコレは実績重視で、いくらコンクールに優勝しても、隅っこに追いやられるのが常識。モデルさんの確保も重要。トップモデルのギャラは高く無名の新人のところへなど来てくれない。
花丸の父のコネでモデルさんは、日本人を中心になんとかそろえられたのだが、ただ綺麗な衣装を着て、歩くだけがモデルではない。そのスタイルを表現しなければならない。だから、女優さんのほうがいいのだが、身長が足りない。
まぁ、最初なので、オーディションをして、とりあえず10人のモデルさんを選ぶ。身長180センチなんて背が高いよね。
どんな形でもいいから、パリコレに出たいという熱意ある人が選ばれることになったのだ。まぁ、ほとんど花丸のコネなんだけど。花丸の名前でなければ、誰も信用してくれないところ。
パリコレは大盛況のうちに閉幕する。その後、なぜかあずさブランドに注文が殺到したのである。
なんで、こんな平凡な服が魅力的なのか不思議。平凡すぎるところがいいのかもしれない。だって、他のデザイナーの衣装を見ていると、とてもではないけどそれを着て外出する気にならないもの。恥ずかしいから。
なぜか、あずさデザインの服に袖を通すと運気が上がると言われている。うーん、やっぱり飛行機事故でただひとり助かったから?よくわからないけど、モデル仲間さんの口コミで、次のコレクションからは、モデル探しに躍起にならなくても、タダでもいいから着させてくれって、依頼が殺到したのである。
花丸の中にあずさブランドを立ち上げて、市販することにした。日本人は、パリコレという冠に弱い。飛ぶように売れたのだ。
そして、お母様もミセススタイルとして、あずさブランドを、大手を振って着るようになり、花丸の制服もあずさがデザインしたのに代わる。
花丸に入社すれば、あずさの制服が着られ、運気が上がるからと、就職希望者が増えたのだ。
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