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死に戻り2
32.懺悔
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エリオットは、その後、屋敷に引きこもったまま誰も姿を見ていない。
エリオットのいない近衛騎士団は、解隊されたがクリストファー殿下付きの騎士団として、再編されたのだ。
団長は、エリオットの時に副団長をしていたポール・マックイーンがそのまま繰り上がった。
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
クリストファーは、あれから何度となく夢分析をしているが、どうやら夢の中の女性の正体がアンジェリーヌであることに薄々気づき始めた。
弟たちをあやす時の横顔が夢の中の女性とそっくりだったということと、王妃陛下の聖女様と言う肩書に、心がざわつきを覚える。
アンジェリーヌ・マキャベリはもともとクリストファーのお妃候補の一人だったが、父とイイ仲になり、継母として、父の再婚相手になったわけであるが、クリストファーと腹違いの弟が3人もいることから、単なる愛妾ではなく王妃の役割を十分にこなしている。
それに近衛の制服を夢の中で目撃している。あの夢は実際にあったことの再現ではないのかと疑うようになっていく。一度、疑うと、すべてつじつまが合うような気がしてならない。
であれば、どの時点での再現かと考える。今の時間線より少しばかり時間が経過したような夢に思える。
夢の中では、父王はすでに亡くなっていて、クリストファーが王冠を被っている。このことから鑑みても、前世当たりの学園を卒業したあたりだと推測している。
アンジェリーヌが聖女様であるからこそ、何らかの理由があって迫害されたのではないかと思われる。
それにクリストファーの存在がどのようにかかわっていくかはわからないままだが、少なくとも、前世、大変嫌われるような失礼なことをしたのだろう。そのことが結果的に神の怒りを買ってしまい、悪夢と性的不能者になってしまったのではなかろうか。
それで叙任式の挨拶の一文に次のようなことを加えることにしたのだ。
「諸君らは、悪夢を見たことがあるだろうか?俺は、毎晩うなされておる。そして、その原因を俺なりに推察してみた。たぶん、前世で俺のとった行動により聖女様を苦しませ、傷つけてしまったのだと反省している。そのことで神の怒りに触れ、罰として、男として威厳を失くしてしまった。俺は、この悪夢を皆が持ちより解決に導いてくれることを心から願っている。今の世に聖女様は確かにおられる。俺の義母がそうだ。だから今世こそ聖女様たる義母を支えられるような国の礎を築くことができるよう祈っている」
クリストファーが挨拶すると、ざわざわと騎士団の中に波紋が広がっていく。全員、悪夢を見ているからだ。
最初に発言したのは、ポール・マックイーンで
「実は、私は聖女様に辱めを与えてしまった夢を毎晩……見ていて、心底苦しいのです。王妃様が聖女様だとわかってからは、出仕するのもおっくうになるほど……で。清らかなる聖女様を手籠めにするなど、己の心が許せなくて、いっそ死んでしまいたいと何度思ったことか」
別の騎士からも
「私も同じ夢を見ています。私は手籠めどころか、聖女様に拷問をしている夢です。逆さ吊りにしたり、女性にはキツイと言われている木馬に跨らせたりと、もちろん、その……衣服をはぎ取って。男として騎士として、あるまじき恥ずかしい行動をしている夢です。その夢に欲情している自分がいることも確かですが、夢とは、真逆でアッチのほうはサッパリで」
他の騎士は
「私は聖女様の美しい髪の毛を剣で切っている夢をよく見ます」
その他の騎士も
「私は、聖女様の美しい手足を押さえつけ、そこに焼き鏝を当て、自慰をしている夢です。人間として最低です」
「私も聖女様のカラダに蝋燭の蝋を垂らしました。聖女様が苦し気に泣き叫ばれるのを愉しんでみている夢です。実におぞましい」
その日は、結局、入団の祝賀会は取りやめになり「懺悔」の日になった。
エリオットのいない近衛騎士団は、解隊されたがクリストファー殿下付きの騎士団として、再編されたのだ。
団長は、エリオットの時に副団長をしていたポール・マックイーンがそのまま繰り上がった。
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クリストファーは、あれから何度となく夢分析をしているが、どうやら夢の中の女性の正体がアンジェリーヌであることに薄々気づき始めた。
弟たちをあやす時の横顔が夢の中の女性とそっくりだったということと、王妃陛下の聖女様と言う肩書に、心がざわつきを覚える。
アンジェリーヌ・マキャベリはもともとクリストファーのお妃候補の一人だったが、父とイイ仲になり、継母として、父の再婚相手になったわけであるが、クリストファーと腹違いの弟が3人もいることから、単なる愛妾ではなく王妃の役割を十分にこなしている。
それに近衛の制服を夢の中で目撃している。あの夢は実際にあったことの再現ではないのかと疑うようになっていく。一度、疑うと、すべてつじつまが合うような気がしてならない。
であれば、どの時点での再現かと考える。今の時間線より少しばかり時間が経過したような夢に思える。
夢の中では、父王はすでに亡くなっていて、クリストファーが王冠を被っている。このことから鑑みても、前世当たりの学園を卒業したあたりだと推測している。
アンジェリーヌが聖女様であるからこそ、何らかの理由があって迫害されたのではないかと思われる。
それにクリストファーの存在がどのようにかかわっていくかはわからないままだが、少なくとも、前世、大変嫌われるような失礼なことをしたのだろう。そのことが結果的に神の怒りを買ってしまい、悪夢と性的不能者になってしまったのではなかろうか。
それで叙任式の挨拶の一文に次のようなことを加えることにしたのだ。
「諸君らは、悪夢を見たことがあるだろうか?俺は、毎晩うなされておる。そして、その原因を俺なりに推察してみた。たぶん、前世で俺のとった行動により聖女様を苦しませ、傷つけてしまったのだと反省している。そのことで神の怒りに触れ、罰として、男として威厳を失くしてしまった。俺は、この悪夢を皆が持ちより解決に導いてくれることを心から願っている。今の世に聖女様は確かにおられる。俺の義母がそうだ。だから今世こそ聖女様たる義母を支えられるような国の礎を築くことができるよう祈っている」
クリストファーが挨拶すると、ざわざわと騎士団の中に波紋が広がっていく。全員、悪夢を見ているからだ。
最初に発言したのは、ポール・マックイーンで
「実は、私は聖女様に辱めを与えてしまった夢を毎晩……見ていて、心底苦しいのです。王妃様が聖女様だとわかってからは、出仕するのもおっくうになるほど……で。清らかなる聖女様を手籠めにするなど、己の心が許せなくて、いっそ死んでしまいたいと何度思ったことか」
別の騎士からも
「私も同じ夢を見ています。私は手籠めどころか、聖女様に拷問をしている夢です。逆さ吊りにしたり、女性にはキツイと言われている木馬に跨らせたりと、もちろん、その……衣服をはぎ取って。男として騎士として、あるまじき恥ずかしい行動をしている夢です。その夢に欲情している自分がいることも確かですが、夢とは、真逆でアッチのほうはサッパリで」
他の騎士は
「私は聖女様の美しい髪の毛を剣で切っている夢をよく見ます」
その他の騎士も
「私は、聖女様の美しい手足を押さえつけ、そこに焼き鏝を当て、自慰をしている夢です。人間として最低です」
「私も聖女様のカラダに蝋燭の蝋を垂らしました。聖女様が苦し気に泣き叫ばれるのを愉しんでみている夢です。実におぞましい」
その日は、結局、入団の祝賀会は取りやめになり「懺悔」の日になった。
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