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断罪後

21.ざまあ2

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神様がリリアーヌを断罪している最中のこと、それぞれの頭上に今まで聖女アンジェリーヌに対して行ってきたすべての悪行がモニターのごとく?走馬灯のごとく?映し出されている。

「聖女様に対して、なんてことをしてしまったのだ!」騎士の一人が叫び出し首筋に剣を当て、自害を図るも死ねない。
血は流れるし、痛みはあるのだが、どうしても死にきれない。それは、神があてた死ねない罰があるから。

「聖女様はどんなに辛くても、死ぬことさえ自由にならなかったのだ。それをさせたのは、貴様らすべてに罪がある。死んで楽になろうなどは、お門違いも甚だしい」

リリアーヌの正体が魔物に食い殺された魔女だということが分かった途端、リリアーヌがかけていた魔法が解けたのだ。

泣きながらその場にしゃがみ込み、嘔吐をする者。

神官の前に跪き、懺悔に勤しむ者もいるが、それは真に反省しているからではない。そのポーズをとっているに過ぎない。だが神の眼は欺けない。容赦ない鉄槌が振り下ろされ、さらなる窮地へと立たされてしまう。
反省の言葉を文にして100枚書いて提出を強要されたり、具体的にどのようにすれば今後、こういった事態を防げるか、などを徹底的に追及される。

決して、己の罪から逃れられない現実を突き付け、心が折れることも、発狂することも、許されない。

そもそも発狂することは、自分の心を護るための防衛手段なわけで、ひとまず現実から目を背けることに他ならない行為。

聖女様を寄って集って、なぶり殺しにした事実は変わらない。

「愛していた。アンジェリーヌただ一人を愛していたのに、魔女の呪いに引っかかってしまい、永遠に大切な女性を失ってしまった。この責任をとるため、俺は国王の座を退位するものとする」

「もっともらしいことを言うでない。お前が退位しようが、どうしようが、それはお前自身を守るための方便に過ぎない。そんなもので、アンジェリーヌの心は救われない」

「なら、どうすればよいのだ?教えてくれ」

「生前のアンジェリーヌは、お前のそういうところを嫌っていた。愛していると言えば、何でも許されるものではない。自分で考えろ」

「ならばヒントをやろう。お前の親父はどうだったか?最後の最後、今際の際までアンジェリーヌの身を案じ、他国へ逃がそうとしていたではないか?息子の嫁となる義娘のために。王である前に、人としてのあるべき姿だ」

「そういえば、人間として最低の家族がいたな。実の娘を見紛えるなど、あってはならない所業、それどころか暴言を吐き、鞭で打ち、痰を吐き掛け、さらには、実の妹を犯す。鬼畜にも劣る所業よ」

マキャベリ公爵が、ハッとしたように顔を上げ、シャーロックの方を睨みつけている。

「お前など我が娘ではない!と言われたアンジェリーヌが気の毒で、分相応の夢を見ろと、母親を振った男とその息子から、純潔を奪われ何度も犯され、さぞ口惜しかっただろう。その父子は、他人でも、実の兄が同じことをするとは、……世も末になっても仕方があるまい。罰として、アンジェリーヌに狼藉を働いた男は、一生女を抱けないカラダにしてやろう。聖女様を抱いたことを一生悔いて生きるがよい」

「そんな……」

ガックリと膝から崩れ落ちた男が大半にのぼる。この先、死ぬことも、発狂することもできないカラダとなった男たちは、もう死んだ目をしている。

マキャベリ家では、この後夫婦喧嘩、親子喧嘩が絶えなくなる。

「では、王として命ずる。アンジェリーヌに狼藉を働いた貴族は、貴族籍を抜き、領地返還を求めるものとする」

うーん。そうなるか?それなら、この国は王国でなくなるぞ?と神様は思案顔になっていることに気づかないクリストファーがいる。
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