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8.お稲荷さん
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大地と結衣は、それから御上の仕事をするたび、たびたび江戸時代を訪れるようになった。
やっぱり、異世界は男の独壇場だな、と感じた。でも、大地は建築工学の夢を捨てたわけではない。羅生門の復元を目指して、宮大工たちとあれやこれやとやっている。結衣は、もうひとつ判っていない。へへ。
江戸時代の木造建築は、大地にとってこれほどの教材はないらしい。結衣の出番は、異空間収納と魔法だけ。それでも毎回、呼ばれる。私、必要?と思うけど、結衣の蔵を通らなければ、行って帰って来られないから、どうしてもセットで扱われる。
結衣は、退屈なので、清兵衛さんについて、商売の勉強をすることになった。清兵衛さん、結衣にそろばんを教えるもの、一応、そろばんは小学生の頃、習ったし初段は持っているけど、今のそろばんは、4つ玉だけど、当時は5つ玉でやり方が違う。現代から、自分のそろばんを持ち込んで、パチパチしたほうが早い。それより、電卓のほうが早いけど。
初昔、宇治昔などのお茶の種類も勉強した。これでいつ跡取りになっても、大丈夫。あとは、ええ婿さんが来てくれるのを待つだけ。卒業したら、お見合いが待っている。
そんな時、伏見で奇妙なキツネが出るという噂があった。毎日、油揚げを買いに来て、銭に狐の毛が付いているという、豆腐屋店の店主は、伏見稲荷の信者だったことから、おキツネ様の化身だと信じ込んだ。そのキツネ様が言われるには、
「今度、伏見稲荷で官位がもらえるから、伏見稲荷大社で寄進を言われているのだが。50両ばかり貸してはくれぬか?」という話だった。
50両と言えば、大金で、現代価値から言えば500万円、それ以上はあるかもしれない。
その話を知人にしたところ、騙されているのかもしれないから、京にいらっしゃる陰陽師様に一度、お伺いを立ててからにしたほうが良い。という話になって、宇治屋結衣のところへ来た。
結衣と大地は、顔を見合わせ、同じことを考えていた。
「これは、詐欺やな。きっと、詐欺やろうけど、どうやって暴く?」
「狐の姿に変えようか?」
結衣と大地は、豆腐店の軒先に陣取り、おキツネ様が来るのを待った。結衣は、伏見稲荷の巫女に扮し、大地は、神官の装いをして待った。
ついに、その男が現れた。結衣は、男にまず、キツネの尻尾と耳を生やし、ついで、鼻先をとがらせ、ひげを生やした。
自分の姿の変化に気づかない詐欺師は、豆腐店ののれんをくぐった。
「これは、これは、おキツネ様、今日は、伏見稲荷から、神主様がお見えになっておられますぞ。」と言い、結衣と大地を紹介した。
少し、慌てる詐欺師。おかまいなく、結衣と大地は、御幣を振りかざした。
詐欺師のカラダは、みるみるうちにキツネに変わった。
「まこと、我が大社のいたずらキツネでございました。帰ったら、駆除しますので、おりをこれへ。」
詐欺師を檻に入れて、鍵を閉めると
「開けてくれ!俺は、人間だ。」と騒ぎ出しました。
「大社のいたずらキツネも、人の言葉をしゃべり、よく人を化かしていたずらします。もう、しばらく人間に化けられないものと心得よ。」
そう言って、大地と結衣は、キツネを役人に引き渡した。
「そんなに化けキツネがよかったら、一生そのままでいらっしゃいませ。」
詐欺師は、キツネの姿のまま、一生を過ごしました。とさ。
やっぱり、異世界は男の独壇場だな、と感じた。でも、大地は建築工学の夢を捨てたわけではない。羅生門の復元を目指して、宮大工たちとあれやこれやとやっている。結衣は、もうひとつ判っていない。へへ。
江戸時代の木造建築は、大地にとってこれほどの教材はないらしい。結衣の出番は、異空間収納と魔法だけ。それでも毎回、呼ばれる。私、必要?と思うけど、結衣の蔵を通らなければ、行って帰って来られないから、どうしてもセットで扱われる。
結衣は、退屈なので、清兵衛さんについて、商売の勉強をすることになった。清兵衛さん、結衣にそろばんを教えるもの、一応、そろばんは小学生の頃、習ったし初段は持っているけど、今のそろばんは、4つ玉だけど、当時は5つ玉でやり方が違う。現代から、自分のそろばんを持ち込んで、パチパチしたほうが早い。それより、電卓のほうが早いけど。
初昔、宇治昔などのお茶の種類も勉強した。これでいつ跡取りになっても、大丈夫。あとは、ええ婿さんが来てくれるのを待つだけ。卒業したら、お見合いが待っている。
そんな時、伏見で奇妙なキツネが出るという噂があった。毎日、油揚げを買いに来て、銭に狐の毛が付いているという、豆腐屋店の店主は、伏見稲荷の信者だったことから、おキツネ様の化身だと信じ込んだ。そのキツネ様が言われるには、
「今度、伏見稲荷で官位がもらえるから、伏見稲荷大社で寄進を言われているのだが。50両ばかり貸してはくれぬか?」という話だった。
50両と言えば、大金で、現代価値から言えば500万円、それ以上はあるかもしれない。
その話を知人にしたところ、騙されているのかもしれないから、京にいらっしゃる陰陽師様に一度、お伺いを立ててからにしたほうが良い。という話になって、宇治屋結衣のところへ来た。
結衣と大地は、顔を見合わせ、同じことを考えていた。
「これは、詐欺やな。きっと、詐欺やろうけど、どうやって暴く?」
「狐の姿に変えようか?」
結衣と大地は、豆腐店の軒先に陣取り、おキツネ様が来るのを待った。結衣は、伏見稲荷の巫女に扮し、大地は、神官の装いをして待った。
ついに、その男が現れた。結衣は、男にまず、キツネの尻尾と耳を生やし、ついで、鼻先をとがらせ、ひげを生やした。
自分の姿の変化に気づかない詐欺師は、豆腐店ののれんをくぐった。
「これは、これは、おキツネ様、今日は、伏見稲荷から、神主様がお見えになっておられますぞ。」と言い、結衣と大地を紹介した。
少し、慌てる詐欺師。おかまいなく、結衣と大地は、御幣を振りかざした。
詐欺師のカラダは、みるみるうちにキツネに変わった。
「まこと、我が大社のいたずらキツネでございました。帰ったら、駆除しますので、おりをこれへ。」
詐欺師を檻に入れて、鍵を閉めると
「開けてくれ!俺は、人間だ。」と騒ぎ出しました。
「大社のいたずらキツネも、人の言葉をしゃべり、よく人を化かしていたずらします。もう、しばらく人間に化けられないものと心得よ。」
そう言って、大地と結衣は、キツネを役人に引き渡した。
「そんなに化けキツネがよかったら、一生そのままでいらっしゃいませ。」
詐欺師は、キツネの姿のまま、一生を過ごしました。とさ。
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裏口診療所https://www.alphapolis.co.jp/novel/431903331/306437551
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