美人の偽聖女に真実の愛を見た王太子は、超デブス聖女と婚約破棄、今さら戻ってこいと言えずに国は滅ぶ

青の雀

文字の大きさ
上 下
4 / 5

4 ダイエット決意

しおりを挟む
 たこ焼き、イカ焼き、お好み焼き、焼きそば、から揚げ、カレーシチュー、ハンバーグ、ナポリタンスパゲッティ、B級グルメが所せましと並べられ、さながらバイキング会場のよう。

 グレースだけでなく、領民も使用人も一緒になって、がっついているが、少々、こういうものに飽きてきているのも事実であったのだ。

 「何かこう、さっぱりしたものが食べたいわ。」

 グレースは、どんどん追加注文する。料理長はメモを取りながら、御領主様に伝えていく。

 「サラダ、デザート、フルーツの盛り合わせなんかも欲しいわ。」

 まだ、この国の国王陛下はお見えにならない。明日でちょうど10日目だというのに、馬車でちんたら、向かっているらしい。知らないよ。間に合わなくても、なぜ早馬を乗り継いで、来ないのであろう?父は首をかしげるが、領主様は冷や汗ものである。

 別にグレースや他の領民は、メープル国から追い出された罪人でもなんでもなく、ただ単なる旅行者なのであるが、それを何か悪いことを仕出かして、国外追放者のような扱い?に少々疑問が残るところである。

 「もう、お料理に飽きちゃったわ。明日までの約束だけど、もうお暇したいのですけど?」

 「そ、そんなぁ!今しばらくお待ちくださいませ。まだまだ美味しいスイーツがたくさんありますよ。」

 「もう飽きてしまったのだから、仕方がありませんわ。それにお腹がはちきれそいで、ちょっとそのあたり飛んできますね。」

 言うなり、グレースは出て行き、背中から羽根を生やした姿で飛び立っていく。

 やっぱり体が重くなって、うまく飛べない。

 ヤバイ!羽根だけだは、身体を支えきれないから、浮遊魔法も同時に発動したら、どうにか安定したのである。

 これはアラミスが言う通り、本気でダイエットしなければいけないかも?と思い始める。

 思い立ったが吉日で、その火から、腹筋と背筋を鍛えることにし、一日一万歩のウォーキングも開始したのである。

 グレースの移動手段は、もっぱら飛んでいくことだから、小さい時に聖女覚醒してから馬車での移動が苦手となったのである。なぜなら、馬車酔いをするからで。少しぐらいなら、馬にも乗れる。

 だから、この国の王がやっていることは許せないのである。

 領主さまの領地の一番、王都に近いところに、公爵邸を移すことにしたのである。もちろん歩きで、領民も使用人も全員、徒歩でその場所に向かう。

 明日、王様が来なかったら、即刻出発するという条件を付ける。徒歩での移動は、ダイエット目的を兼ねているものだ。

 公爵邸の土地ごと、異空間に仕舞い、ぞろぞろと歩いて移動し始めた。するとこの街の住民から、いろいろな貢物をもらえる。なぜか食べ物ばかりだけど、ありがたく受け取り、執事に渡す。そして、貢物を捧げてくれた人に祝福を与える。

 時間がかかるが、聖女らしい仕事という実感が持てて、気持ちがいい。公爵邸の中で世界のグルメ相手に食っちゃ寝をしているよりいい。

 グレースはこれを機会に心を入れ替えることにする。

 婚約破棄されたことは、ショックだったけど、それは自分自身がまねいた慢心からであったと、もしもメープル国へ戻ることがあれば、アラミス様にきちんと謝罪しようと心に誓ったのである。そして美味しいお土産を抱えて……、ダメダメまた太るから、しばらくはダイエットに打ち込むのだ。

 おそらくたぶん、王都より来る場合は、ここが最初であるという街に着く。早速、街道沿いに公爵邸を土地ごとだし、スタンバイ完了である。

 料理長や侍女は、お疲れでございましょうと、お茶にお菓子の準備をしてくれるが、手を出さずに我慢していると、

 「お嬢様、どこかお加減でも?」

 「グレース、体調がすぐれないのか?少し、歩いたから疲れたのだろう。」

 気遣ってくれるが、痩せるためにやせ我慢をしているだけだと言うと、

 「お嬢様、お痩せになりたいのでしたら、ウォーキングが一番よろしゅうございますわよ。これからは、空を飛ばずに地上を歩いて移動いたしましょう。」

 「グレース、君はポチャポチャしているところが、可愛いのにもったいない。痩せる必要なんて、どこにもないよ。」

 「お父様、あなたの一言がわたくしのカラダをこんなふうにしてしまったのです。アラミス様からも婚約破棄されてしまいましたし、もうダイエットするしかないのです。」

 はらりと涙をこぼしながら、訴えると父も納得してくれたようで、ダイエットに協力してくれることを約束してくれたのだ。

 歩いて、出国を決めても、領民の中には、妊婦さんや、病人もいるから、やっぱり公爵邸を浮かせて、移動することにしたのだ。それでは、ダイエットができない?と思ったが、グレースは、公爵邸の広い敷地内を行ったり来たりすることによって、ウォーキングの歩数を稼ぐことにしたのである。

 公爵邸の敷地内は安全である。グレースの結界で守られているから、以前怪我をした鳥をかくまったときも、公爵邸の庭に巣箱を作り、鳥たちは夜、そこで寝泊まりするようになったからである。

 小鳥たちを美食の街に置いてけぼりにすることなく、みんなで一緒に行けるからいい。

 結局、王様は王都から出たという話も怪しいものになったので、さっさと出立したのである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】お前とは結婚しない!そう言ったあなた。私はいいのですよ。むしろ感謝いたしますわ。

まりぃべる
恋愛
「お前とは結婚しない!オレにはお前みたいな奴は相応しくないからな!」 そう私の婚約者であった、この国の第一王子が言った。

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

幼馴染に裏切られた私は辺境伯に愛された

マルローネ
恋愛
伯爵令嬢のアイシャは、同じく伯爵令息であり幼馴染のグランと婚約した。 しかし、彼はもう一人の幼馴染であるローザが本当に好きだとして婚約破棄をしてしまう。 傷物令嬢となってしまい、パーティなどでも煙たがられる存在になってしまったアイシャ。 しかし、そこに手を差し伸べたのは、辺境伯のチェスター・ドリスだった……。

もうあなた様の事は選びませんので

新野乃花(大舟)
恋愛
ロベルト男爵はエリクシアに対して思いを告げ、二人は婚約関係となった。しかし、ロベルトはその後幼馴染であるルアラの事ばかりを気にかけるようになり、エリクシアの事を放っておいてしまう。その後ルアラにたぶらかされる形でロベルトはエリクシアに婚約破棄を告げ、そのまま追放してしまう。…しかしそれから間もなくして、ロベルトはエリクシアに対して一通の手紙を送る。そこには、頼むから自分と復縁してほしい旨の言葉が記載されており…。

【完結】もしかして悪役令嬢とはわたくしのことでしょうか?

桃田みかん
恋愛
ナルトリア公爵の長女イザベルには五歳のフローラという可愛い妹がいる。 天使のように可愛らしいフローラはちょっぴりわがままな小悪魔でもあった。 そんなフローラが階段から落ちて怪我をしてから、少し性格が変わった。 「お姉様を悪役令嬢になんてさせません!」 イザベルにこう高らかに宣言したフローラに、戸惑うばかり。 フローラは天使なのか小悪魔なのか…

王子が親友を好きになり婚約破棄「僕は本当の恋に出会えた。君とは結婚できない」王子に付きまとわれて迷惑してる?衝撃の真実がわかった。

window
恋愛
セシリア公爵令嬢とヘンリー王子の婚約披露パーティーが開かれて以来、彼の様子が変わった。ある日ヘンリーから大事な話があると呼び出された。 「僕は本当の恋に出会ってしまった。もう君とは結婚できない」 もうすっかり驚いてしまったセシリアは、どうしていいか分からなかった。とりあえず詳しく話を聞いてみようと思い尋ねる。 先日の婚約披露パーティーの時にいた令嬢に、一目惚れしてしまったと答えたのです。その令嬢はセシリアの無二の親友で伯爵令嬢のシャロンだったというのも困惑を隠せない様子だった。 結局はヘンリーの強い意志で一方的に婚約破棄したいと宣言した。誠実な人柄の親友が裏切るような真似はするはずがないと思いシャロンの家に会いに行った。 するとヘンリーがシャロンにしつこく言い寄っている現場を目撃する。事の真実がわかるとセシリアは言葉を失う。 ヘンリーは勝手な思い込みでシャロンを好きになって、つきまとい行為を繰り返していたのだ。

【完結・全10話】偽物の愛だったようですね。そうですか、婚約者様?婚約破棄ですね、勝手になさい。

BBやっこ
恋愛
アンネ、君と別れたい。そういっぱしに別れ話を持ち出した私の婚約者、7歳。 ひとつ年上の私が我慢することも多かった。それも、両親同士が仲良かったためで。 けして、この子が好きとかでは断じて無い。だって、この子バカな男になる気がする。その片鱗がもう出ている。なんでコレが婚約者なのか両親に問いただしたいことが何回あったか。 まあ、両親の友達の子だからで続いた関係が、やっと終わるらしい。

巻き戻される運命 ~私は王太子妃になり誰かに突き落とされ死んだ、そうしたら何故か三歳の子どもに戻っていた~

アキナヌカ
恋愛
私(わたくし)レティ・アマンド・アルメニアはこの国の第一王子と結婚した、でも彼は私のことを愛さずに仕事だけを押しつけた。そうして私は形だけの王太子妃になり、やがて側室の誰かにバルコニーから突き落とされて死んだ。でも、気がついたら私は三歳の子どもに戻っていた。

処理中です...