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二年目 恋よ、愛てにとって不足はない
44 エリーレイドとアラインの秘密
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思考停止するほどのショックで数日間はぼんやりとしながらもアラインの動向を盗み見るしかなかったが、何とか気を取り直し、来年の動きについて考える事にしたエリーレイドだった。
攻略対象者との恋慕に失敗したが残り五人残っている。
「商会連合国家の王子、聖教公国の聖剣士、帝国王子とうちの国の王太子を入れて四人いるわ。もう一人は除外しておかないとね。このチャンスに対して、事前準備を怠らなければ勝てるわ」
自分に言い聞かすようにつぶやく彼女は必死だった。失敗続きでこのままではヤバイと感じていた。攻略本に記載してあった大まかな流れは変わらないものの、細かな部分で核攻略対象者がおかしい。
手筈はすでに整えているので、あとは現場レベルのアドリブが求められるのもあるが、介入したい時は大体告白シーンでありその時はさすがに割り込む事はできない。場の空気があり、空気を読まずに突入するほど心臓に毛が生えていなかった。
「我が主、この攻略本によれば波乱に満ちていますが本当に生き残れるのでしょうか?」
「大丈夫よ、いざとなったらユウヴィーが犠牲になってくれるわ」
根拠なく、言い切るのには光の魔法という存在はそういった時の為に存在するとどの文献にも残されており、この世界において絶対の「安心」の象徴として語り継がれているからだ。ヒロインである光の魔法を使える者は愛の犠牲魔法を知ることになる。どのルートだろうが、伝説の愛の光の魔法によって広範囲に瘴気が浄化されて平和がもたらされるというのを知り、決行するのだった。その魔法はどのルートでもここぞというタイミングで伝承だったり、歴史書から知ることになり、切羽詰まった状況と限られていた。
「多くの人たちが彼女に救いを求めるから、彼女はその救いに対して動かざる得ないわ。人間というのは単純なものよ」
前世の事を思い出し、周りから多くの事を求められ機体され、それが正しいと思い働いていた。そう動いてしまっていたのだ。あの時に抗っていたら、過労死しなかったのではないかと思ったのだった。
(そうならないように彼女は瘴気に対して知見を広め、深めているけれど、一人の人間が出来る事はとうの昔に誰かやっているわ、私たちが後押しできるように根回しは一応するけれど、限界があるしね)
彼女とて瘴気を放置したいわけではなかった。誰も死ななければそれに越したことはないが、乙女ゲームの強制力が働き、見えない力が動いていると思っていた。
公爵令嬢である彼女は、あらゆる可能性から瘴気問題に対処してきたが、偏っていた知識や瘴気そのものを浄化した経験がないため決定打にかけていた。それでも領民や国からしてみれば多大な貢献をしてきており、支持はされていた。
当の本人は歯がゆい思いと自身の無力さに打ちひし柄れていたのもあり、自身を過小評価していた。
過去の事を思い出したエリーレイドは、嫌な気持ちになり使い魔のマーベラスをいつものように吸い、心に落ち着きを持たせようとしていた。
――コンコン
突如何の前触れもなくドアをノックされる音がし、来訪者の予定があるのかとマーベラスの方に目を向けるが、首を横に振るのだった。
「エリーレイド、突然の訪問をすまない。入ってもいいかな?」
その声はアライン殿下であり、エリーレイドはすぐさま身だしなみをチェックし、どうぞと返事をし招き入れるのだった。
数日間、何の音沙汰もなかったのもあり、いよいよユウヴィーに対しておこなった嫌がらせ行為について詰問されるのだと彼女は内心ドキドキしていた。
使い魔のマーベラスに飲み物と茶菓子を用意させ、応接間に案内し、互いに席についた。アラインは施錠可能な鞄をテーブルに置き、中を開けて、何かを取り出そうとした。
(どうやら証拠書類などから、私を詰問する。という流れなのね)
アラインが鞄から出したのはネコミミカチューシャとネコシッポだった。
「突然の事で驚くと思うが、婚約者として包み隠さず話をしておきたい事があるんだ。まずは黙って聞いてほしい、また、私は洗脳や魅了といった魔法により混乱状態に陥ってるわけではないことを先んじて言っておく――」
エリーレイドは彼から語られる趣味趣向について、聞かされそれが現実なのか、それとも白昼夢なのか判断ができなくなっていた。ただ彼から語られる言葉に頷きながら必死に整理しようとし、なんとか現実に起きている事だとわかるのだった。
「こんな私でも受け入れてくれるか?」
エリーレイドは咄嗟とはいえ、否定することが出来ず頷いてしまった。親同士が決めた婚約とはいえ、幼少からの付き合いであり、多少の事では引かないのもあった。また、前世で没頭連動型VR拡張パックで知っている各攻略対象者の性癖を熟知していることもあり、問題無かった。
「ありがとう、エリーレイド」
「いいえ、殿下の思いを打ち解けて下さり嬉しいですわ」
公爵令嬢として染み出る対応力を発揮し、王太子殿下を安心させるのだった。
(あれ、私のこの対応はもしかしてヤバイんじゃ)
この後、エリーレイドはアラインより「お願い」されネコミミカチューシャとネコシッポをつけ、語尾に「にゃ」と「にゃん」を言わされるのだった。
攻略対象者との恋慕に失敗したが残り五人残っている。
「商会連合国家の王子、聖教公国の聖剣士、帝国王子とうちの国の王太子を入れて四人いるわ。もう一人は除外しておかないとね。このチャンスに対して、事前準備を怠らなければ勝てるわ」
自分に言い聞かすようにつぶやく彼女は必死だった。失敗続きでこのままではヤバイと感じていた。攻略本に記載してあった大まかな流れは変わらないものの、細かな部分で核攻略対象者がおかしい。
手筈はすでに整えているので、あとは現場レベルのアドリブが求められるのもあるが、介入したい時は大体告白シーンでありその時はさすがに割り込む事はできない。場の空気があり、空気を読まずに突入するほど心臓に毛が生えていなかった。
「我が主、この攻略本によれば波乱に満ちていますが本当に生き残れるのでしょうか?」
「大丈夫よ、いざとなったらユウヴィーが犠牲になってくれるわ」
根拠なく、言い切るのには光の魔法という存在はそういった時の為に存在するとどの文献にも残されており、この世界において絶対の「安心」の象徴として語り継がれているからだ。ヒロインである光の魔法を使える者は愛の犠牲魔法を知ることになる。どのルートだろうが、伝説の愛の光の魔法によって広範囲に瘴気が浄化されて平和がもたらされるというのを知り、決行するのだった。その魔法はどのルートでもここぞというタイミングで伝承だったり、歴史書から知ることになり、切羽詰まった状況と限られていた。
「多くの人たちが彼女に救いを求めるから、彼女はその救いに対して動かざる得ないわ。人間というのは単純なものよ」
前世の事を思い出し、周りから多くの事を求められ機体され、それが正しいと思い働いていた。そう動いてしまっていたのだ。あの時に抗っていたら、過労死しなかったのではないかと思ったのだった。
(そうならないように彼女は瘴気に対して知見を広め、深めているけれど、一人の人間が出来る事はとうの昔に誰かやっているわ、私たちが後押しできるように根回しは一応するけれど、限界があるしね)
彼女とて瘴気を放置したいわけではなかった。誰も死ななければそれに越したことはないが、乙女ゲームの強制力が働き、見えない力が動いていると思っていた。
公爵令嬢である彼女は、あらゆる可能性から瘴気問題に対処してきたが、偏っていた知識や瘴気そのものを浄化した経験がないため決定打にかけていた。それでも領民や国からしてみれば多大な貢献をしてきており、支持はされていた。
当の本人は歯がゆい思いと自身の無力さに打ちひし柄れていたのもあり、自身を過小評価していた。
過去の事を思い出したエリーレイドは、嫌な気持ちになり使い魔のマーベラスをいつものように吸い、心に落ち着きを持たせようとしていた。
――コンコン
突如何の前触れもなくドアをノックされる音がし、来訪者の予定があるのかとマーベラスの方に目を向けるが、首を横に振るのだった。
「エリーレイド、突然の訪問をすまない。入ってもいいかな?」
その声はアライン殿下であり、エリーレイドはすぐさま身だしなみをチェックし、どうぞと返事をし招き入れるのだった。
数日間、何の音沙汰もなかったのもあり、いよいよユウヴィーに対しておこなった嫌がらせ行為について詰問されるのだと彼女は内心ドキドキしていた。
使い魔のマーベラスに飲み物と茶菓子を用意させ、応接間に案内し、互いに席についた。アラインは施錠可能な鞄をテーブルに置き、中を開けて、何かを取り出そうとした。
(どうやら証拠書類などから、私を詰問する。という流れなのね)
アラインが鞄から出したのはネコミミカチューシャとネコシッポだった。
「突然の事で驚くと思うが、婚約者として包み隠さず話をしておきたい事があるんだ。まずは黙って聞いてほしい、また、私は洗脳や魅了といった魔法により混乱状態に陥ってるわけではないことを先んじて言っておく――」
エリーレイドは彼から語られる趣味趣向について、聞かされそれが現実なのか、それとも白昼夢なのか判断ができなくなっていた。ただ彼から語られる言葉に頷きながら必死に整理しようとし、なんとか現実に起きている事だとわかるのだった。
「こんな私でも受け入れてくれるか?」
エリーレイドは咄嗟とはいえ、否定することが出来ず頷いてしまった。親同士が決めた婚約とはいえ、幼少からの付き合いであり、多少の事では引かないのもあった。また、前世で没頭連動型VR拡張パックで知っている各攻略対象者の性癖を熟知していることもあり、問題無かった。
「ありがとう、エリーレイド」
「いいえ、殿下の思いを打ち解けて下さり嬉しいですわ」
公爵令嬢として染み出る対応力を発揮し、王太子殿下を安心させるのだった。
(あれ、私のこの対応はもしかしてヤバイんじゃ)
この後、エリーレイドはアラインより「お願い」されネコミミカチューシャとネコシッポをつけ、語尾に「にゃ」と「にゃん」を言わされるのだった。
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