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二年目 恋よ、愛てにとって不足はない
29 悪役令嬢のエリーレイドは見えていない。
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「ふぅ……」
エリーレイドはため息をつき、疲れを全身で表現しているかのようにだらしない恰好でソファに座っていた。
「我が主、この攻略本によると――ハマト国のリンク皇子と親交を深めたヒロインはリンク皇子の演技に気づき、本心に触れる事によってと書かれていますが今回の瘴気汚染の騒動は記載されていないのですが……」
「そうね、これもあれよ。あのスナギモという使い魔の犬だったのが原因よ。マーベちゃん、ハマト国の瘴気問題について書いてあるページを読んで」
「ンッ、我が主、この攻略本によるとハマト国では原因不明の瘴気問題で悩まされており、森や草原など隣接した地域、動物との接触が多い人などに発症するスニノイ・ココニアと瘴気汚染があり悩まされていた。だが、ヒロインが嫁ぐ事で瘴気汚染も消え、幸運の聖女として民衆は支持する」
「そう、そうなのよねぇ」
「では、このままでは……」
使い魔のマーベラスは今回失敗すると期待してしまっていた。
「とはいえ、先に解決しようが後に解決しようがあまり大きな問題ではないと思うのよ。この一件でより親密になるのは間違いないだろうしね。保険としての我が国ののアラインと太子ルートはちょっとあやしいけれど、フラグは立てたし、学園内の彼女の知名度も好感度高いのもあって原作通りだわ」
「我が主――」
「わかってるわ、私の知名度や好感度が悪いけれど、必要なのよ」
本人は気づいていない。ユウヴィーを支えているような立場、名引き役として手柄を作ってる陰の功労者としてわかる人にはわかられていた。特に婚約者であるアライン王太子には、エリーレイドが大きく動いている後に物事が一気に解決するという認識だった。
さらに悪い噂などなく、ユウヴィーが国を背負うために甲斐甲斐しく教育し、突き放す事なく、行動しているのを多くの人に「あれこそ公爵家の令嬢の鏡だ」と言われていた。
本人は気づいてない、マーベラスは知っている。
「さて、マーベちゃん。私のルートはどうなるかしら」
「我が主、この攻略本によれば、ヒロインがハマト国に嫁ぐ事になった後に、今まで悩まされていた瘴気問題が解決するものの、渡航者により瘴気拡大し、混乱渦巻き蝗害が発生し、愛し合う二人は人柱になって混乱を治めるのであったとされています。一方、悪役令嬢のエリーレイドは女狐と呼ばれハマト国に嫁がれることになり、腹の内が黒い事を見込まれるが、徹底した男尊女卑の中で生きる事に。今までいた貴族社会よりも厳しいしきたりに自我がないような人形になってしまう。一歩引いた大和撫子エンドと呼ばれていると書かれています」
マーベラスは器用に右前足で両目を抑え、目頭を押さえていた。
「我が主――」
「わかってるわ、根回しはしてあるから生きていけるわ。問題ないわ」
エリーレイドは自信満々にそのルートにいっても問題ないことをマーベラスに伝えるのだが、マーベラスにありえないと思っていたのだった。
「それにしたって、あの舞踏会は驚いたわ……何あの光の魔法! 私の影魔法で足をくじかせようにも発動しないさせないとかちくしょう!」
「我が主、それは令嬢として言葉が過ぎるかと」
「うるっさい!」
――すーはーすーはー!!
むんず、と捕まれるマーベラスは思いっきり吸われた。あの舞踏会のことを最近頻繁に思い出してしまうエリーレイドはそのたびに、吸う。吸いまくっていたのだった。
なぜなら、普段使わない言葉遣い、荒い言葉遣いになり、そのたびにマーベラスが止めに入るのだ。
最初は止めなかったのだが、その後に一時間以上も拘束され吸われるため、短い時間で吸われる方が、マーベラスの精神的に楽だったのだ。
「それにしたって今回の瘴気問題はさすがに解決は難しいと思うわ」
国が違えば文化も違う、文化が違えば衣食住の様式ががらりと変わる。
「あの国は和式、そのため居住空間がここと違って密閉された空間ではないのよね」
ハマト国はゲームの設定上、日本文化に近い様式の生活をしている。
「虫とか普通に家の中に入ってくるだろうし、小さな虫とか避けようもないでしょ」
「我が主、この攻略本によればハマト国で蝗害が将来に起き、その際に皇子とヒロインによって救われると書かれていますが、もしも、このルートにならなかった場合は――」
「悲しいけれど、ハマト国は他国からの援助を頼らないと存続が不可能な状態になるわ。けど、それは原作であってこの世界ではないわ。私が前世の記憶を取り戻してから何年経ってると思うの? 対策してあるから、そこまで壊滅的な状況には陥らせないわ。米! 味噌! 醤油! 酒! どれも失わせてたまるもんですか!!」
マーベラスは自分の主がなぜそこまで食にこだわるのか、身をもって知っていた。
「マーベちゃんが大好きなご飯だって、あの国から材料仕入れてるのよ。絶対に、滅ぼさせたりはしないわ」
顔をマーベラスに埋めながら自信満々に言うエリーレイドだった。
エリーレイドはため息をつき、疲れを全身で表現しているかのようにだらしない恰好でソファに座っていた。
「我が主、この攻略本によると――ハマト国のリンク皇子と親交を深めたヒロインはリンク皇子の演技に気づき、本心に触れる事によってと書かれていますが今回の瘴気汚染の騒動は記載されていないのですが……」
「そうね、これもあれよ。あのスナギモという使い魔の犬だったのが原因よ。マーベちゃん、ハマト国の瘴気問題について書いてあるページを読んで」
「ンッ、我が主、この攻略本によるとハマト国では原因不明の瘴気問題で悩まされており、森や草原など隣接した地域、動物との接触が多い人などに発症するスニノイ・ココニアと瘴気汚染があり悩まされていた。だが、ヒロインが嫁ぐ事で瘴気汚染も消え、幸運の聖女として民衆は支持する」
「そう、そうなのよねぇ」
「では、このままでは……」
使い魔のマーベラスは今回失敗すると期待してしまっていた。
「とはいえ、先に解決しようが後に解決しようがあまり大きな問題ではないと思うのよ。この一件でより親密になるのは間違いないだろうしね。保険としての我が国ののアラインと太子ルートはちょっとあやしいけれど、フラグは立てたし、学園内の彼女の知名度も好感度高いのもあって原作通りだわ」
「我が主――」
「わかってるわ、私の知名度や好感度が悪いけれど、必要なのよ」
本人は気づいていない。ユウヴィーを支えているような立場、名引き役として手柄を作ってる陰の功労者としてわかる人にはわかられていた。特に婚約者であるアライン王太子には、エリーレイドが大きく動いている後に物事が一気に解決するという認識だった。
さらに悪い噂などなく、ユウヴィーが国を背負うために甲斐甲斐しく教育し、突き放す事なく、行動しているのを多くの人に「あれこそ公爵家の令嬢の鏡だ」と言われていた。
本人は気づいてない、マーベラスは知っている。
「さて、マーベちゃん。私のルートはどうなるかしら」
「我が主、この攻略本によれば、ヒロインがハマト国に嫁ぐ事になった後に、今まで悩まされていた瘴気問題が解決するものの、渡航者により瘴気拡大し、混乱渦巻き蝗害が発生し、愛し合う二人は人柱になって混乱を治めるのであったとされています。一方、悪役令嬢のエリーレイドは女狐と呼ばれハマト国に嫁がれることになり、腹の内が黒い事を見込まれるが、徹底した男尊女卑の中で生きる事に。今までいた貴族社会よりも厳しいしきたりに自我がないような人形になってしまう。一歩引いた大和撫子エンドと呼ばれていると書かれています」
マーベラスは器用に右前足で両目を抑え、目頭を押さえていた。
「我が主――」
「わかってるわ、根回しはしてあるから生きていけるわ。問題ないわ」
エリーレイドは自信満々にそのルートにいっても問題ないことをマーベラスに伝えるのだが、マーベラスにありえないと思っていたのだった。
「それにしたって、あの舞踏会は驚いたわ……何あの光の魔法! 私の影魔法で足をくじかせようにも発動しないさせないとかちくしょう!」
「我が主、それは令嬢として言葉が過ぎるかと」
「うるっさい!」
――すーはーすーはー!!
むんず、と捕まれるマーベラスは思いっきり吸われた。あの舞踏会のことを最近頻繁に思い出してしまうエリーレイドはそのたびに、吸う。吸いまくっていたのだった。
なぜなら、普段使わない言葉遣い、荒い言葉遣いになり、そのたびにマーベラスが止めに入るのだ。
最初は止めなかったのだが、その後に一時間以上も拘束され吸われるため、短い時間で吸われる方が、マーベラスの精神的に楽だったのだ。
「それにしたって今回の瘴気問題はさすがに解決は難しいと思うわ」
国が違えば文化も違う、文化が違えば衣食住の様式ががらりと変わる。
「あの国は和式、そのため居住空間がここと違って密閉された空間ではないのよね」
ハマト国はゲームの設定上、日本文化に近い様式の生活をしている。
「虫とか普通に家の中に入ってくるだろうし、小さな虫とか避けようもないでしょ」
「我が主、この攻略本によればハマト国で蝗害が将来に起き、その際に皇子とヒロインによって救われると書かれていますが、もしも、このルートにならなかった場合は――」
「悲しいけれど、ハマト国は他国からの援助を頼らないと存続が不可能な状態になるわ。けど、それは原作であってこの世界ではないわ。私が前世の記憶を取り戻してから何年経ってると思うの? 対策してあるから、そこまで壊滅的な状況には陥らせないわ。米! 味噌! 醤油! 酒! どれも失わせてたまるもんですか!!」
マーベラスは自分の主がなぜそこまで食にこだわるのか、身をもって知っていた。
「マーベちゃんが大好きなご飯だって、あの国から材料仕入れてるのよ。絶対に、滅ぼさせたりはしないわ」
顔をマーベラスに埋めながら自信満々に言うエリーレイドだった。
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