転生令嬢は恋愛しま戦 かかって恋、愛てになるわ!

犬宰要

文字の大きさ
上 下
26 / 46
二年目 恋よ、愛てにとって不足はない

25 笑い男、相手が望む表情をする人形皇子

しおりを挟む
 授業に真面目に出て、図書館に通う日々を過ごし、気が付いたら一年があっという間に過ぎていたのだった。その間に、エリーレイドからの執拗な説教や攻略対象者であり、ユウヴィーの推しであるアラインと接触および、親密度を上げようとさせてきたりと色々あったがあっという間だった。
 
 ユウヴィーは二年目を迎えるにあたり、前世の記憶から何か思い出さないかなぁと日々ぼんやりと思いつつ、始業式でぼーっと考えていた。
 
「今期から、急遽二年生枠に転入してきたハマト国の皇子であるリンク・トキミヤだ。よろしく頼むぜ」
 
 壇上に上がって挨拶をしたのは深い青みがかった髪をし、さわやかな笑顔でキラッと光る歯をみせていた好青年だった。どうみても攻略対象者だとユウヴィーは察した。
 
(う、う~ん。絶対あの人って攻略対象者だと思うのだけど、まったく思い出せない)
 
+
 
 始業式が終わり、学園長に呼ばれて部屋に入るとリンク・トキミヤとその婚約者と思われるギャルっぽい人も居た。ユウヴィーはやっぱり攻略対象者だったと思い、これも強制力が働いているのだと察した。
 
「こんにちは、君が噂のユウヴィー・ディフォルトエマノン嬢……浄化の姫だね?」
(浄化の……姫と?)
 ユウヴィーは目の前の男の陽気さに、前世の陰キャだった自分のことを思い出し、少しだけ警戒してしまうのだった。
 
「ちょっとぉ、なんか感じ悪くない?」
 ギャルっぽい婚約者がユウヴィーに対して、不機嫌そうな表情を浮かべていた。
 
「大変失礼いたしました。ユウヴィー・ディフォルトエマノンと申します。サンウォーカー国の子爵家であり、光の魔法を扱えるため、特待生として通わせて頂いてます」
 
「さて、ユウヴィー。君にはこのリンク王子の案内役を頼む。転入してきたばかりでこの学園に慣れていないのでよろしく頼む」
 学園長のスターロード卿が渋くかっこいい声がユウヴィーの耳に浸透していった。ユウヴィーはやんわりと断るような思考が一瞬にしてイケボにやられ、脊髄反射の如く受け入れた。
「はい、かしこまりました」
「それじゃ、よろしくね」
「よろ~」
 おおよそ、王族とその婚約者とは思えない言動にユウヴィーは戸惑いを感じるものの、表には出さなかったのだった。これも貴族教育で学んだ鉄面皮である。そして、少しだけ案内をうけてしまって後悔していた。
 
 ユウヴィーたちは学園長室を出て、廊下を歩きながら敷地内のルートを考えるのだった。
 
「案内よろ」
 ギャルっぽい婚約者はすりすりっとユウヴィーに寄り、その軽い感じから本当に令嬢なのかと疑問に感じるのだった。
「こう見えて、公爵令嬢なのよね。オニヤバッ」
(本当にエリーレイドと同じ公爵令嬢なの?)
 
「ここはいいねぇ、空気も澄んでいて美味しい。それに君が連れている使い魔もかわいいね!」
「あ、それっ、あーしも思ったし! ほんとかわわ!」
(ダメだ、苦手だ)
 
 ユウヴィーの精神がゴリゴリ削られていったのだった。
 
「あの、よろしかったら触ってみますか?」
「マジ? やったぜ!」
「あーしも! あーしも!」
 
 二人はモフモフを楽しみ、癒されていた。
 
「あーしも使い魔欲しくなちゃった」
「自国から候補の動物を取り寄せようぜ」
「いいね!」
 
 その日は学園の案内をしながら二人から使い魔との生活について聞かれたのだった。
 
 すっかり夕方となり、学園の敷地の案内を終え、ユウヴィーは図書館に向かい今日も今日とて瘴気の勉強を行うのだった。
 

 
 図書館に着いたユウヴィーは、まだ読んでいない瘴気についての本を何冊か選び、いつも座っている場所に向かった。食堂と同じように図書館でも誰がどの場所で勉強しているのか、暗黙の了解のように席が固定化していた。
 いつもの場所に行くとそこには、先ほど学園を案内したリンク・トキミヤが勉強をしていたのだった。
 
(あ、思い出した。この攻略対象者はは元はそんなに明るくなくて皇子という立場や他国との関係も含めて、期待されそれに応えるように必死に演じてるんだった。だから、人一倍努力もする。だから、ここにいるんだ……)
 
 ユウヴィーは攻略対象者との接触は殉愛フラグが立つので、あまり関わりたくないと思っていた。だが、いつも勉強している所でじゃないと何か違和感があり、また場から足が動かなかった。
 
(気合を込めて動かせば、足は動くけれども―)
 
 すると勉強しているリンクがユウヴィーの気配に気が付いたのか、顔を上げてユウヴィーの方を見るのだった。
 
「君は……」
 
 一瞬だけ素の表情をしていたリンクだった。普段の明るい感じではなく、本来の彼であった。
 
「そうか、もしかしてここは君がいつも勉強している場所だったか、すまない。すぐにどくよ……」
 
 そして、席を立つとリンクがユウヴィーの前に来ると驚いていた。
 
(ああ、そうだ。私だとわかってなくて、外向けの自分ではなく本来の自分を出してしまう流れで、これが攻略対象者とのルートフラグだ。スチル絵だぁぁぁ!)
 
「あ、いやこれは……」
 
 リンクはどう繕っていいのかわからなく、動揺していた。
 
「いえ、大丈夫です。なんとなく、そんな気がしていたので」
「えっ」
 
 ユウヴィーは乙女ゲームの強制力が働いている事とエリーレイドが何かしてくるのも、瘴気そのものを解決していけば殉愛が起きないと考え、笑ったのだった。
 
(ハマト国のリンクルートは思い出せないけれど、瘴気の問題を解決に導けばいける。私ならやれる!)
 
 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。 これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。 それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

変な転入生が現れましたので色々ご指摘さしあげたら、悪役令嬢呼ばわりされましたわ

奏音 美都
恋愛
上流階級の貴族子息や令嬢が通うロイヤル学院に、庶民階級からの特待生が転入してきましたの。  スチュワートやロナルド、アリアにジョセフィーンといった名前が並ぶ中……ハルコだなんて、おかしな

処理中です...