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二年目 恋よ、愛てにとって不足はない
26 君も同じだろう?
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いつもの図書館で、ユウヴィーは戸惑っているリンクに笑いかけていた。一方、リンクは口元を抑えながら困ったような表情をし、沈黙を保っていた。
「君はどうやら気づいていた、ようだね」
「ええ、まあ……」
前世の記憶からピーンと思い出したとは言えないユウヴィーだった。
「その……いや、何でもない」
リンクは急ぎ足でその場を去っていった。ユウヴィーは特段引き留めようとは思わなかった。彼女にはそれよりも気になる事があったからだ。
(さて、動物が瘴気に汚染されて魔物になることと、魔物が浄化されて動物に戻る事について思い返してみる。ベヒーモスを浄化したことで動物に戻ったことが研究区画で盛り上がっていたけれど、ちゃんと調べなおさないと……)
彼女が勤勉であるのは、生死がかかっているからだった。瘴気という意味不明なものが光の魔法によって浄化される。
(他の魔法でも浄化できたりするけれど、光の魔法ほど便利じゃない……)
ユウヴィーは浄化についての本を開き、そこに書かれれている光の魔法以外でも可能な浄化について読み直していた。
そこに書かれている事は、瘴気に汚染された水を浄化する方法だった。水の魔法では汚染された水そのものを魔法で分離させるというもので、水の量に対して力の負荷が高くなり向かないと書かれていた。火は単純に水そのものを沸騰させ、瘴気そのものを火力で浄化すると書かれていた。風、地、影などは汚染された水には実例が存在しないと記載されていた。
(水や火の魔法の使い方を読むと、やっぱり瘴気は視覚化されたウイルスなんじゃないかなとつくづく思う。人間に対して悪意があるウイルスはこの世界では視覚化され、黒い靄のような感じになっている、と思って概ね間違って無さそうだ)
ユウヴィーは瘴気に対して自身の仮説が正しかったと感じていた。
ハマト国のリンクの事はすっかり頭から抜け、彼女はその日勉強に勤しむのだった。
+
翌日、ユウヴィーは昼休みの食堂にて日替わりランチを食べていた。
(乙女ゲームの世界だけあって、食は瘴気という驚異がある中で前世とほとんど変わらないような水準の食べ物であってよかったと思う)
パンとスープと肉野菜炒めを食べながら、彼女は思っていた。
「やぁ、昨日はありがとう。助かったぜ」
「感謝だしー」
ハマト国のリンクとギャル風な婚約者が食事中のユウヴィーの所に現れたのだった。口の中のものを咀嚼し、ナプキンで口元を軽くふいて、彼女は頭を下げた。すると二人は目の前の空いている椅子に座り、話はじめたのだった。
「一週間ほどで使い魔候補の動物が本国から届く事になったよ」
「そぉそ~! めちゃんこかわいいよ。管狐っていうニョロっとしてモフモフしてるの、ユウヴィーの使い魔のしっぽみたいな動物なのよ」
「ユウヴィー・ディフォルトエマノン嬢、ごきげんよう」
ユウヴィーにとって知っている人の声が耳障りに聞こえた。
(絶対、そろそろ来ると思った)
「ごきげんよう、エリーレイド様」
ぴりっとした空気が一瞬だけ形成されるものの、エリーレイドは人懐っこい笑みをリンクとギャル風な婚約者に向けた。
「お久しぶりです、リンク様とその婚約者様」
「お久しぶりです」
「お久~」
ユウヴィーは互いに会釈し合っていた所を見て、すでに関係を持っていたのかと警戒するのだった。
「聞けば、使い魔をご要望と噂を聞きまして、一助になればと航空便を手配させて頂こうかと思いました」
「はっはっはっ、耳が早いね。昨日の事だぜ? 確かにサンシェード家の航空便なら数日もかからないだろうけれど、気長に待つよ。なんたってこれはわがままだしね」
「そぉそ、さすがにそこまでしてもらうのは、なんていうか……気が引けちゃうよぉ」
「あら、余計な気を使わせてしまうとは公爵令嬢として品がありませんでしたね。それは大変失礼いたしましたわ。もし何かあればお気軽にお声掛けしてくださいませ」
ユウヴィーは、彼女が何を企んでいるのか見抜けずにいた。ただの社交辞令の為に来ただけなのか、それとも何か意図があるのか、測れないでいたのだった。
「では、ご歓談中の所失礼いたしますわ、ごきげんよう」
優雅な一礼をし、エリーレイドは去っていった。いつもならクドクドと嫌味ったらしい説教をしていくのだが、今日は去れなかった事にユウヴィーは何か肩透かしをくらうのだった。
「あ、待って待って~あーしも一緒に行く、ちょっと聞きたい事あるんだ」
ギャル風な婚約者は席を立ち、エリーレイドの方に着いていったのだった。
皇子と二人っきりになり、他愛のない話をすることになり、ユウヴィーはやはり何か違和感を感じていた。彼がなぜ演じているのか、思い出そうとするが思い出せない事にモヤモヤを募らせていた。
リンクはそれに気づき、困った顔をしたが、表情だけはいつもの明るい顔で内面を吐露するのだった。
「私は、愛想がないって言われてね。継承権がないのだから、外交役として国を支えるのが責務なのだから、愛想よくしろと言われたんだ。そこからみんなが望むような人を演じてるんだ」
この時ユウヴィーは前世でプレイした時に、リンクが悲しそうな顔をし、演じている理由を吐露したスチル絵を思い出すのだった。
だが、今の表情は周りに見られてもバレないように明るい表情をして内面を吐露していた。
(そうだったこいつ、不器用真面目だ!! 真面目な性格だが不器用をこじらせて無理やり明るいキャラを作って、心を疲弊して、瞑想してる攻略対象者だ!!)
だが、肝心なイベントが思い出せずにいた。
「それは今まで並々ならぬ努力をされ、皆の期待を背負い、戦ってきたのですね」
「君も光の魔法を使える、という事でそうじゃないのか?」
ユウヴィーは自分自身が光の魔法を使えると言う事で徹底した貴族教育を受けてこの学園に王命で通わされている。国からかなり期待されている事もあり、入学前まではプレッシャーと不安がいっぱいだった事を思い出した。だが、前世の記憶を思い出した事によって、過労死して死んで今度は特定の人と恋愛して成就したら愛が故に死ぬ事でそれどころじゃなかったのだった。
「あ、そういえばそうでした。あはは」
「へっ」
「あっ、失礼しました」
ユウヴィーは思わず、素で答えてしまい。反省するのだった。その表情がリンクとの恋愛フラグであったが、本人は知る由もなかった。
「君はどうやら気づいていた、ようだね」
「ええ、まあ……」
前世の記憶からピーンと思い出したとは言えないユウヴィーだった。
「その……いや、何でもない」
リンクは急ぎ足でその場を去っていった。ユウヴィーは特段引き留めようとは思わなかった。彼女にはそれよりも気になる事があったからだ。
(さて、動物が瘴気に汚染されて魔物になることと、魔物が浄化されて動物に戻る事について思い返してみる。ベヒーモスを浄化したことで動物に戻ったことが研究区画で盛り上がっていたけれど、ちゃんと調べなおさないと……)
彼女が勤勉であるのは、生死がかかっているからだった。瘴気という意味不明なものが光の魔法によって浄化される。
(他の魔法でも浄化できたりするけれど、光の魔法ほど便利じゃない……)
ユウヴィーは浄化についての本を開き、そこに書かれれている光の魔法以外でも可能な浄化について読み直していた。
そこに書かれている事は、瘴気に汚染された水を浄化する方法だった。水の魔法では汚染された水そのものを魔法で分離させるというもので、水の量に対して力の負荷が高くなり向かないと書かれていた。火は単純に水そのものを沸騰させ、瘴気そのものを火力で浄化すると書かれていた。風、地、影などは汚染された水には実例が存在しないと記載されていた。
(水や火の魔法の使い方を読むと、やっぱり瘴気は視覚化されたウイルスなんじゃないかなとつくづく思う。人間に対して悪意があるウイルスはこの世界では視覚化され、黒い靄のような感じになっている、と思って概ね間違って無さそうだ)
ユウヴィーは瘴気に対して自身の仮説が正しかったと感じていた。
ハマト国のリンクの事はすっかり頭から抜け、彼女はその日勉強に勤しむのだった。
+
翌日、ユウヴィーは昼休みの食堂にて日替わりランチを食べていた。
(乙女ゲームの世界だけあって、食は瘴気という驚異がある中で前世とほとんど変わらないような水準の食べ物であってよかったと思う)
パンとスープと肉野菜炒めを食べながら、彼女は思っていた。
「やぁ、昨日はありがとう。助かったぜ」
「感謝だしー」
ハマト国のリンクとギャル風な婚約者が食事中のユウヴィーの所に現れたのだった。口の中のものを咀嚼し、ナプキンで口元を軽くふいて、彼女は頭を下げた。すると二人は目の前の空いている椅子に座り、話はじめたのだった。
「一週間ほどで使い魔候補の動物が本国から届く事になったよ」
「そぉそ~! めちゃんこかわいいよ。管狐っていうニョロっとしてモフモフしてるの、ユウヴィーの使い魔のしっぽみたいな動物なのよ」
「ユウヴィー・ディフォルトエマノン嬢、ごきげんよう」
ユウヴィーにとって知っている人の声が耳障りに聞こえた。
(絶対、そろそろ来ると思った)
「ごきげんよう、エリーレイド様」
ぴりっとした空気が一瞬だけ形成されるものの、エリーレイドは人懐っこい笑みをリンクとギャル風な婚約者に向けた。
「お久しぶりです、リンク様とその婚約者様」
「お久しぶりです」
「お久~」
ユウヴィーは互いに会釈し合っていた所を見て、すでに関係を持っていたのかと警戒するのだった。
「聞けば、使い魔をご要望と噂を聞きまして、一助になればと航空便を手配させて頂こうかと思いました」
「はっはっはっ、耳が早いね。昨日の事だぜ? 確かにサンシェード家の航空便なら数日もかからないだろうけれど、気長に待つよ。なんたってこれはわがままだしね」
「そぉそ、さすがにそこまでしてもらうのは、なんていうか……気が引けちゃうよぉ」
「あら、余計な気を使わせてしまうとは公爵令嬢として品がありませんでしたね。それは大変失礼いたしましたわ。もし何かあればお気軽にお声掛けしてくださいませ」
ユウヴィーは、彼女が何を企んでいるのか見抜けずにいた。ただの社交辞令の為に来ただけなのか、それとも何か意図があるのか、測れないでいたのだった。
「では、ご歓談中の所失礼いたしますわ、ごきげんよう」
優雅な一礼をし、エリーレイドは去っていった。いつもならクドクドと嫌味ったらしい説教をしていくのだが、今日は去れなかった事にユウヴィーは何か肩透かしをくらうのだった。
「あ、待って待って~あーしも一緒に行く、ちょっと聞きたい事あるんだ」
ギャル風な婚約者は席を立ち、エリーレイドの方に着いていったのだった。
皇子と二人っきりになり、他愛のない話をすることになり、ユウヴィーはやはり何か違和感を感じていた。彼がなぜ演じているのか、思い出そうとするが思い出せない事にモヤモヤを募らせていた。
リンクはそれに気づき、困った顔をしたが、表情だけはいつもの明るい顔で内面を吐露するのだった。
「私は、愛想がないって言われてね。継承権がないのだから、外交役として国を支えるのが責務なのだから、愛想よくしろと言われたんだ。そこからみんなが望むような人を演じてるんだ」
この時ユウヴィーは前世でプレイした時に、リンクが悲しそうな顔をし、演じている理由を吐露したスチル絵を思い出すのだった。
だが、今の表情は周りに見られてもバレないように明るい表情をして内面を吐露していた。
(そうだったこいつ、不器用真面目だ!! 真面目な性格だが不器用をこじらせて無理やり明るいキャラを作って、心を疲弊して、瞑想してる攻略対象者だ!!)
だが、肝心なイベントが思い出せずにいた。
「それは今まで並々ならぬ努力をされ、皆の期待を背負い、戦ってきたのですね」
「君も光の魔法を使える、という事でそうじゃないのか?」
ユウヴィーは自分自身が光の魔法を使えると言う事で徹底した貴族教育を受けてこの学園に王命で通わされている。国からかなり期待されている事もあり、入学前まではプレッシャーと不安がいっぱいだった事を思い出した。だが、前世の記憶を思い出した事によって、過労死して死んで今度は特定の人と恋愛して成就したら愛が故に死ぬ事でそれどころじゃなかったのだった。
「あ、そういえばそうでした。あはは」
「へっ」
「あっ、失礼しました」
ユウヴィーは思わず、素で答えてしまい。反省するのだった。その表情がリンクとの恋愛フラグであったが、本人は知る由もなかった。
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