転生令嬢は恋愛しま戦 かかって恋、愛てになるわ!

犬宰要

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入学~一年目 さぁ恋、なぐり愛

19_輝き、それは閃き!

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 無策であることが露呈したユウヴィーは引き続き図書館に通った。前世の記憶は都合よく全部思い出すわけでもなく、何か策を講じても何も思い浮かばなかった。
 
(今やれる事は、瘴気に対して知る事、学生の本分は学業!)
 
 学園に来る前の狩猟生活の脳筋思考だった。狩る動物や魔物の生態をより詳しく知れば、狩りがうまく行った為、瘴気に対して詳しくなれば、瘴気対策もうまく行くという発想だった。
 
(瘴気対策をしっかりやれば殉愛フラグも砕け散るはず)
 
 そんな図書館での勉強生活の中で、エリーレイドが現れたのだった。
「ユウヴィー・ディフォルトエマノン嬢、お聞きしたい事があるのですが……年間スケジュールのことについてなのですが、まさか準備してないのかしら」
 まさか嫌味言いにくるとは思いもせず、ぽかんとした表情でエリーレイドを見上げるのだった。
「余裕ね」
 ユウヴィーは追い打ちを食らい、学園生活の行事のことをすっかり忘れていた事をつつかれるのだった。
「わかっていると思うけれど、各行事に出席しないという国にとって不名誉な行為にあたるのでやめてくださいね」
 釘を刺され、ユウヴィーは頷くしかなかった。そういった行事には、攻略対象者とのフラグイベントが必ず存在し、親密度が上がったり、特殊イベントが発生するフラグだったりしたことを思い出すのだった。
 
(くっ、言われないと思い出せない私の記憶が腹立たしいィィィ)
 
「ちょっと、聞いてますの?」
「はい、聞いてます。申し訳ございません」
 ネチネチとその後もサンウォーカー国の貴族として、光の魔法を使える者としての心構えを説教されたのだった。
 
「いいですこと? 諸外国の学園へ支援されてる方々が出席される舞踏会には必ず出席してくださいね」
 
 ユウヴィーはそこでうろ覚えだった前世の記憶の一端を思い出すのであった。
 
(確か、舞踏会に出席して、会場の……貴賓館だったっけ、その階段から落ちて推しの王太子に介抱されるんだっけ? それでその後、悪役令嬢が苦渋の顔をしながら、舞踏会を取り持って、あとで嫌味を言われる流れだったな……確かそういう流れだったっけ)
 
 推しの王太子であり、エリーレイドの婚約者との恋愛的な距離感が近くなるのはヤバイ、と考えるユウヴィーだった。
 
「わかってますわよね? 舞踏会にはちゃんと参加してくださいね。ドレスなどは国より支給されるので採寸や準備をおこなう方が行きますのでくれぐれもよろしくお願いしますね? わかりましたわね?」
「は、はいっ!」
「よろしい、ではごきげんよう」
 
 カッカッカッと靴のかかとを鳴らしながら去っていったエリーレイドだった。
 
(ちゃんと舞踏会に出席ね、なら私がちゃんと舞踏会に出れば、王太子が私を介抱しないからスチル回収とフラグ回収にならないんじゃない? 対策してやらぁ!)
 と考えるユウヴィーだった。
 
(こうしてはいられない!)
 
 彼女は積み上げた本や勉強道具一式を片付け、自室にいったん戻った。
 
+
 
「ハープ、年間スケジュールの事教えてください! お願いします!」
 
 都合よく自室で勉強していたハープにユウヴィーは学園の行事について教えてもらうのだった。
 
「へっ? ああ、今度の舞踏会の事とか、そういう行事?」
「そ、そう! そういうの!」
「それなら任せて――」
 
 三十分くらいみっちりと舞踏会の流れを説明され、どんな踊りが必要なのか、どんな服装をするのか、始まりから閉会までの過ごし方と会場での立ち位置、挨拶の注意点などを教えてもらうのだった。
 
 貴族教育で習った事も教えてくれた為、よい復習になり、準備万端とユウヴィーは喜んだのだった。
 
「ありがとうハープ! これで恥をかかないで済むわ」
「当日は特待生でもあるし、光の魔法を扱えるのもあって注目されてるだろうし、がんばってね。応援してるわ」
「うん、がんばる!」
 
 ユウヴィーの意気込みは前向きだった。しかし、一つ懸念点が彼女の中にあった。
 
(階段で落ちてしまうのはなんでだっけ……悪役令嬢とぶつかって階段から落ちるんだっけ? それとも足をくじいてしまうんだっけ?)
 
 転んでしまうのはなぜか、を思い出せずにいた。
 
 乙女ゲームの強制力が働いているため、転ぶというイベントは避けては通れないとユウヴィーは思うようになっていた。
 
(このままだと転げ落ちて、推しの王太子であるアライン殿下に介抱されてしまう。それは避けたくないスチル絵回収イベントだ。生ボイスをリアル解像度で堪能できるスペシャルでウルトラかつレアリティが高い尊いタイムだ。くそ……しかし、命には変えられない。なら、転んでも受け身をとれるように訓練し、回避するしかない。とても不本意だけど、死にたくはない)
 
 彼女の脳内では、前世のキュンとした思い出が色鮮やかに再生され、それを諦めないといけないという事に嘆きながらも、落ち着くまでエンドレス動画再生をしていた。
 
「ユウヴィー、大丈夫?」
「大丈夫、問題ないわ」
 

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