転生令嬢は恋愛しま戦 かかって恋、愛てになるわ!

犬宰要

文字の大きさ
上 下
2 / 46
入学~一年目 さぁ恋、なぐり愛

01_ルマンティオーク学園、私は転生してる!

しおりを挟む
 入学式の時間ギリギリになってしまった事に、このルマンティオーク学園に通いたくなかったという思いが脳裏によぎる。本来なら子爵系の私はこんな所に通えるわけもなく、特待生で王から勅命がなければ正門をくぐることすら許されない。
 息を切らしながら、使い魔の犬が私よりも早く駆けていった。純白の毛色は、太陽の光を淡く反射し、ダイヤモンドダストのような光の粒子をまき散らしていた。
 
「ちょ、ちょっと待って」
 
 彼女は、ユウヴィー・ディフォルトエマノンは貧乏子爵家の令嬢である。もう一度言おう、貧乏子爵家の令嬢である。
 
 それがなぜこのルマンティオーク学園に通う事になったのか、それは彼女が光の魔法を使うからだった。大なり、小なり光の魔法を扱えるものは、必ずどの国に居てもこの学園に通わないといけないとなっていた。このルマンティオーク学園は、様々な国が関わっており、今なお瘴気に対する研究と国と国の協力が行われている学園だ。というのを入学前に知った。
 
 大正門から使い魔の犬が走っていくのを追いかけていると、金髪の男性に使い魔がぶつかった。
 
 ユウヴィーは冷や汗をかいた。この学園内には、各国の王族や爵位がある貴族が来ているのだ。下手なことをすれば、外交問題に発展するからと入学前に言われたのを思い出す。
 
「――ッ!」
 
 走る速度を上げ、即座に謝罪をしようとした所、金髪の男性が振り向き、足元の私の使い魔を見つけ微笑んだ。
 
「子犬ちゃん、君は誰の使い魔かな?」
 
 そっと跪き、私の使い魔の犬を撫でた。気持ちよさそうにしている使い魔の犬に何してるんだとドキドキした。そこでふと、何かデジャビュを感じていた。どこかで見た事あるような、でもそうじゃないような、という不思議な感覚だった。
 
 本来は「小鳥ちゃん、君は誰の使い魔かな?」が正解であり金髪の彼の肩に止まり、聖桜並木道と絵になる一枚のスチルとなる。そして、そのまま奥の校舎がアップになり、タイトルがドーンとなってユウヴィーはそこで一目ぼれしてしまう――のだけど、なんだこの記憶? と困惑した。
 しかし、実際は子犬のため、金髪の彼はしゃがみ込み「本来のスチル絵」とはかけ離れた一枚だ。そう誰も写っていない。
 
 ユウヴィーは知らない言葉が脳裏に駆け巡り、何かとてつもないデジャビュを感じていた。
 
 その金髪の彼が王太子であることを彼女は知らない。名乗ってすらいない、でも何となく自国の王太子じゃないかという感覚を持っていた。しかし、知っている景色とは違うような気がし、来たくもない学園に来た事でユウヴィーは気疲れし、混乱してるのだろうと思った。
 
「あ、すみません。私の使い魔のスナギモです!」
 
――ブフォッ!
 
 どこからか、くしゃみのような、笑いをこらえて噴き出したような音が聞こえた。しかし、ユウヴィーが音の方を見ても静寂。そよ風が木々に咲いている花びらが舞い、空耳だったようだと思ったのだった。
 
「かわいい使い魔だね。人懐っこい……君もこのルマティオーク学園の新入生かい?」
「は、はい。あ、私は――ユウヴィー・ディフォルトエマノンです」
 
「あ、もしかして――」
 ユウヴィーは、王太子でしょうか? と言いそうになり、それが不敬罪に該当すると感じ、口を閉ざした。
「私は――いや、自己紹介はやめておくよ。それじゃ、また入学式で」
 そういって彼は学園のある方へと向かっていった。彼女は助かった、と思った。なぜだかわからないけれど、何か不安が付きまとっていた。
 
 金髪の彼が向かっていった方向に校舎がそびえ立つのをユウヴィーは見て、どこかで見た事あると感じた。ずきりと頭痛がし、さっきの意味不明なタイトルがドーンやら、スチル絵のことを思い出し、いろいろと思い出すのだった。
 
(私は、死んだんだ。死んで転生してこの世界に生を得たんだ。あれ、どうやって死んだんだっけ、確か……)
 と思い出そうとすると足元ではっはっはっと息を切らしている使い魔の犬であるスナギモが見上げてきた。
 
 知っている乙女ゲーの使い魔は小鳥であって、犬ではない……と感じていた。
 
(どこかで聞いたことある学園名なのよね……もしかして、前世で遊んだ何かの乙女ゲーの世界? いやまさかね……普通に異世界転生よね……?)
 
 とりあえず、彼女は入学式に遅れないように急いだ。前世の事は長ったらしい学園長の話があるはずだから、その間に思い出すことにした。遅刻していいことはないし、何かこの世界の事をなんか知ってるような気がするけれど、数々の乙女ゲーと異世界悪役令嬢ものの小説を履修していたからそう思うだけだ。
 
 そう彼女は思い込んでも嫌な予感は付きまとっていた。
 
 入学式会場に間に合い、講師の案内のもと特待生の席に案内され、着席し、程なくすると入学式が始まった。学園長の長いスピーチが始まり、その間に自分の前世の事を可能な限り思い出そうとした。
 
 過酷な職場と顔を覆いたくなるようなプロジェクトのことを思い出し、神妙な顔つきと苦しみに耐えるような表情になった。あまり思い出したくない記憶だった、エナジードリンクを水替わりに飲み、終電と始発か泊まり込みか、その末に過労死だったのだ。
 
 前世の嫌な記憶から権田園子(ごんだそのこ)は、ユウヴィー・ディフォルトエマノンとして恋愛し、結婚し、寿命を全うしようと心に強く誓った瞬間だった。だが、その誓いもすぐさま変わる事になるのだった。
 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

【完結】徒花の王妃

つくも茄子
ファンタジー
その日、王妃は王都を去った。 何故か勝手についてきた宰相と共に。今は亡き、王国の最後の王女。そして今また滅びゆく国の最後の王妃となった彼女の胸の内は誰にも分からない。亡命した先で名前と身分を変えたテレジア王女。テレサとなった彼女を知る数少ない宰相。国のために生きた王妃の物語が今始まる。 「婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?」の王妃の物語。単体で読めます。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

前世を思い出しました。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

棚から現ナマ
恋愛
前世を思い出したフィオナは、今までの自分の所業に、恥ずかしすぎて身もだえてしまう。自分は痛い女だったのだ。いままでの黒歴史から目を背けたい。黒歴史を思い出したくない。黒歴史関係の人々と接触したくない。 これからは、まっとうに地味に生きていきたいの。 それなのに、王子様や公爵令嬢、王子の側近と今まで迷惑をかけてきた人たちが向こうからやって来る。何でぇ?ほっといて下さい。お願いします。恥ずかしすぎて、死んでしまいそうです。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

最後に言い残した事は

白羽鳥(扇つくも)
ファンタジー
 どうして、こんな事になったんだろう……  断頭台の上で、元王妃リテラシーは呆然と己を罵倒する民衆を見下ろしていた。世界中から尊敬を集めていた宰相である父の暗殺。全てが狂い出したのはそこから……いや、もっと前だったかもしれない。  本日、リテラシーは公開処刑される。家族ぐるみで悪魔崇拝を行っていたという謂れなき罪のために王妃の位を剥奪され、邪悪な魔女として。 「最後に、言い残した事はあるか?」  かつての夫だった若き国王の言葉に、リテラシーは父から教えられていた『呪文』を発する。 ※ファンタジーです。ややグロ表現注意。 ※「小説家になろう」にも掲載。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

悪役令嬢はどうしてこうなったと唸る

黒木メイ
恋愛
私の婚約者は乙女ゲームの攻略対象でした。 ヒロインはどうやら、逆ハー狙いのよう。 でも、キースの初めての初恋と友情を邪魔する気もない。 キースが幸せになるならと思ってさっさと婚約破棄して退場したのに……どうしてこうなったのかしら。 ※同様の内容をカクヨムやなろうでも掲載しています。

処理中です...