9ライブズナイフ

犬宰要

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 生存確率が上がり、50%から80%へと変わった。僕たちは恐る恐る物影から出るとEXP部隊の人たちは全員倒れ、うめき声を上げていた。撃たれた箇所は両腕、両脚だった、ドローンは強いなと思った。
 
 僕は銃を構えながらシュシャを探した。
 
 多分、ここで決着をつけないとダメだと思ったからだ。探しているとシュシャはすぐに見つけられた。彼の表情をみるとどこか余裕が見えた。壁に寄りかかるように倒れている姿からは想像がつかないが、何かしてくるんじゃないかと思えた。
 
「チッ、ついてねぇぜ。なんだ? 助けてくれんのか? ご丁寧に誰も死んじゃいねぇし、やさしいな」
 
 僕は銃口を彼の頭に向けた。近すぎず、遠すぎない距離で――。
 
「お、なんだ最後の言葉を待ってるのか? ハァハァ……いいぜ」
 
――ギャァ!
 
 僕は悲鳴がした方を見ると、どうやらまだ元気だった隊員が銃口を僕に向けようとし、ドローンがそれを察知してその隊員の手を撃ち、吹き飛ばしたのだった。僕はそれを確かめ、再びシュシャの方を見ると、彼の手に何か握られていたのを見た。
 
 冷静、僕はすぐさま彼の腕を撃った。肘の関節そのものが綺麗に吹き飛び、手に持ってる何かがシュシャの真横に落ちる。近すぎず、遠すぎずの距離の僕はそのまま真後ろに飛んだ。
 
――ドバァァン!!
 
 爆発が起き、僕は範囲外だった為、特にダメージを受けなかった。耳がちょっとだけキーンとし、立ち上がるとシュシャがいた場所は爆発の後と肉片が飛び散らかっていた。えぐくてグロいのに何の感情もわかなかった。吐き気すらも起きず、ただため息が出ただけだった。
 
――ドォン!!!!
 
 今まで聞いた事がないほど大きな音が奥の扉から聞こえ、僕たちはたじろいだ。奥の扉はひしゃげ、その隙間から煙が出てきていた。そのあと、ひしゃげた扉の奥から何かが放り込まれた。
 
「みんな伏せろ!」
 
 それが爆発物であると思ったからだった。その声を聞いたみんなは物影に隠れたり伏せてくれた事を祈った。白い閃光のあとに赤黒い炎が咲いた。僕は吹き飛ばされ、地面に転がった。
 
――ドォン! ドォン! ドォン!
 
「ゴホッゴホッ! やめろ! 敵じゃないから、やめろ!」
 
 叫び、伝えるが返ってきたのは新たな爆弾だった。
「ク、クッソ!」
 また爆弾が投げ込まれ、投げ込まれた近くの行動不能になった人は爆発に飲まれて死んでいった。
「みんな、反対側の方の扉に行って、逃げるぞ!」
 僕は爆発が続く中、身を低くしながらみんなに呼びかけ、大きな倉庫から脱出した。後ろでは爆発音がまだ鳴り響いており、爆発の大きさは小さいものの、止まる事のない爆発に恐怖を感じた。
 
「て、偵察が終わりました。道がわかりました、こっちです!」
 ジュリが朗報を届けてくれた事で僕たちはジュリを先頭にし、施設の外へ向かった。ジュリの左右にはムッツーとタッツーの銃を装備したドローンがついており、何かあっても大丈夫だろうと思ってしまった。
 
 通路を進み、扉を開けると螺旋階段を見つけ、地上へ向かう道だとわかった。ドローンたちは器用に登り、僕たちも地上へと続く階段を登っていった。人工筋肉と人体強化をしているため、駆け足で何階にも登っても息切れや疲れが出ず、登る事が出来た。
 下からは爆発音が鳴り続け、きっとあの二人組はこの施設をすべて破壊するまで止まらないのかもしれないと思った。
 
 階段を登りきり、扉を開けるとまた通路だった。
 
「ジュリ、こっちで合ってるんだよな?」
「このまままっすぐ行き、また階段があるので登った先が外になってます。施設内部ではなく、近くの建物の中に出ます」
「わかった、ありがとう」
 僕たちはその話を聞いて、ちゃんと外に繋がっていることから、小走りで移動した。
 
 ジュリが言った通り、別の建物の地下から出てくるような形となり、建物の閉まっていたシャッターを開き、外に出た。マンホールや用水路からは炎が噴き出している大通りに出た。反対側の建物は倒壊し、病院だと思っていた施設も以前よりも壊れ、崩れていた。
 
 爆発音がまた聞こえ、地面が揺れた。
 
 施設はその振動でまた崩れた。僕たちは、自然とその施設の方に歩いていき、眺めていた。
「周りの警戒をお願いします、攻撃してこようとしてくる相手は行動不能にしてください」
 ジュリがドローン二体に告げると、ドローンは僕たちを守るように移動していった。
 
 施設が崩れ落ちる中で、僕は瓦礫に挟まったアーネルトと鉄筋にささったアンネイを見つけた。
 
 どちらももう助からないような状態だと遠目からでもわかった。アンネイが僕たちに気づき、僕と目が合うと口がパクパクと動き、それが「助けて」と言っているように聞こえた。僕はふざけるなと思い、二人がいる場所へ身体を動かしてしまった。一歩、また一歩と足が彼らの所へと進んだ。
 
 マナチ、ハルミン、ツバサ、ジュリも僕と一緒に彼らがいる場についてきた。
 
「た、助けて」
「や、やぁ……すまないがこの瓦礫をどかしてくれないか?」
 
 この期に及んで何を言っているのだろうか?
 
「知ってるよ、お前、お前らがしたことを」
 落ち着いて言おうと思ったが怒りを含む声で彼らに返事をしてしまった。
「動画を見たよ、おま、お前らがよぉ……ムッツーとタッツーにしてきたことをッ」
 全然冷静になれなかった。
 銃を握る手が不必要に力が籠っていた、彼らに銃口を向けていない。落ち着け、と僕は言い聞かせようとするが胸からこみ上げてくる感情が、頭が冷静になれと言ってもきかなかった。
 
「だ、騙されないで……ゴホッ、ゴホッ」
「あれは罠だよ、それよりも君たちは大丈夫だったかい」
 よくわからない事を言い出した。
「し、信じられると思ってるのか?」
 すると、二人は痛々しそうにしていた表情が消え、能面のような無表情になった。
 「じゃあ、どうするつもりなんだ?」
「命乞いでもしてほしいのかしら?」
 痛々しそうな仕草が無くなり、余裕の表情になった。いやそれ以上にこちらをバカにしているような感じがした。
「あれか? 謝罪とかそういう言葉が聞きたいのか?」
「君たちの自己満足を満たすような行為を求めているの? うふふ」
 ハルミンは円筒の致死性の毒ガスが入ったものを召喚し、二人の前に進んだ。
「待て、ハルミン」
「止めないで、こ、こ、ここ、こいつらはムッツーとタッツーをぉぉぉ」
 僕はハルミンを後ろから抱きかかえるようにし、止めた。
「や、やめろ。いったん落ち着け、な?」
 ハルミンはその場で泣き出し始め、召喚していたものを消した。僕は二人を睨みつけるとうすら笑いを浮かべていた。クソがッ!
 
 僕自身、冷静になれなくなっていた。僕は思わず二人から目を背けた。深呼吸を――
 
――バァン、バァン!
 
 いったい誰が銃を撃ったのか、誰に向けて撃ったのか、僕はすぐに周りを確かめるとマナチは口を抑えてて何かを見ていた。ツバサとジュリも後ずさるような感じでマナチと同じ先を見ていた。ハルミンを見ると、マナチたちと同じ方向を見ていた。
 
 僕は彼女たちが見ていた方向、アーネルトとアンネイの方を見ると、二人の頭部に穴が空いていた。二人が撃たれたのだった、でも誰が?
 
「そいつらがどういうやつらかわかったな?」
 
 声がした方向を見ると瓦礫の山でシュシャと戦っていた二人がいた。

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