9ライブズナイフ

犬宰要

文字の大きさ
上 下
68 / 82

68

しおりを挟む
 その日の目覚ましは爆発音だった。
 
 僕たちはすぐに目覚め、寝ぼる暇もなく、服をすぐに召喚し着替えた。お互い頷き、すぐに建物の外へ出る事にした。シャッターが上がるのをもどかしく感じる中で、それぞれが食べ物や飲み物を召喚し、急いで口にしていた。
 シャッターが開き、道路に出るとマンホールの至る所から炎が噴き出ていた。燃え盛る炎の熱を感じ、顔をしかめる。また爆発音がし、燃え盛った炎が火柱となった。
 
「大通りを探そう、そして、病院へ向かおう」
 現在地はわからなかったが、大通りを探していけば病院があった場所や見たことがある風景からたどり着けると思ったからだ。僕たちはマンホールがあった場所や排水路などで火が出ているのを避けながら、大通りを目指していった。
 
 大通りに向かう途中、大きな穴が開いているところを見つけ、下を覗いてみると真っ暗でそこが見えない状態だった。そこに建物があったはずなのに、そこが見えないくらい深い穴だとわかり、よく自分たちが助かったものだと感じた。
「この街の下ってどうなってんだろう」
「――もしかしたら……」
 ツバサが何か言おうとした時に、また爆発が起き、地面が揺れた。
「げっ!」
 僕は思わず、口に出してしまったのは見えなかった底からうねうねと触手が見えたからだ。
「もしかしたら、これか?」
「いえ、巨大なジオフロントと呼ばれるのがアニメとか映画であったのでそれかなぁと思ってましたがまさか触手だとは全く思いませんでした。すみませんでした」
 やけに早口でツバサが後ずさりしながら言った。その横でハルミンの身体が小刻みに震えて、怖い目をしていた。何か汚物を見るような、そんな目だった。
「ハ、ハルミン?」
 僕がハルミンに声をかけると彼女は手のひらを穴の底に向け、そこから致死性の毒ガスが入った円筒を大量に召喚していった。
「うおぉ!? えぇぇ!?」
 数秒、数分はハルミンの行動を誰も止められずにいた。
 
 大穴に落ちないように迂回し、大通りを目指そうとすると地面から触手が生えてくる事もあったがハルミンが毎回舌打ちし、致死性の毒ガスで対処していった。彼女は銃ではなく致死性の毒ガスが入った円筒を両手で持っている状態だった。
 歩き続けていくと再度、大きな爆発が起き、近くの建物が沈下していった。するとそこから火が湧き上がっていった。触手ではなく、火の手が上がっていき、この街は瓦礫の山や廃墟の街のようになってしまうのだろうかと僕は思った。
 僕たちは、火や触手に気を付けながら、病院を目指していった。向かっている方向は不安だったが、大通りに出る事ができた。病院があるであろうと思う方向に向かっている中でゾンビは見当たらないものの、街全体が異様な雰囲気で包まれているように感じた。
 
「ねぇ、あの交差点のバリケードがたくさん置いてある場所に誰かいない?」
 マナチが指を指した方向には確かに誰かいる。よく見るとEXP部隊の服を着た人たちだった。物々しい装備をし、何かを警戒しているように見えた。
 声をかけようとすると相手もこちらに気づいたのか、周りに声をかけていた。どうやらあの人たちは無事だったようだ。
 
――すると突然、銃口を向けてきて撃ってきた。
 
 生存確率がいっきに下がったのを先に見ていた為、すぐさま身を隠せる場所に逃げ込んだ。僕は自分たちを撃ったのではなく、後ろに触手とかゾンビがいたのかもしれないと思った。身を隠した後に、後ろを見てもそこには誰も何もおらず、僕たちが隠れている場所を執拗に撃ってきていた。
 
 もしかして、僕たちをゾンビか何かと勘違いしているのかもしれない。
 
「おい! やめろ! 僕たちはゾンビじゃない! 撃つのを辞めろ!」
 大声で話しかけるものの、反応はなく一向に攻撃は止まず、本気で自分たちを殺しにきていることが疑いようのない現実だと突き付けられた。
 
「ヨ、ヨーちゃんどうして? 何が起きてるの!?」
 マナチは混乱していた。
 ツバサとジュリは頭を抱えて震えていた。銃を持った人たちに狙われたことなんて今までない。今までは化物で飛び道具なんて使ってこなかった。そりゃ怖い。僕もめっちゃ怖い。
「どうする? ヨーちゃん、反撃するしかないよ」
 ハルミンはいつの間にか両手に銃を持っていた。壁に背を預けながら、片目で僕に何かを訴えかけていた。僕はこうなる可能性を考えていないわけではなかった。考えてなかったわけじゃない、ムッツーとタッツーの事でそういう可能性があるという事を受け入れたくなかった。
 
 もしかしたら、彼らが――。
 
 僕は銃を持ち、ハルミンと共に反撃をしようと決めた時に悲鳴が聞こえた。
 
「うあああああああああ!!!!!!」
 
 銃撃が止んだので、頭を出して覗いてみると何かに向かって彼らは銃を撃っていた。マンホールから這い出た触手に襲われ、銃で対処しようにも倒せないのか、一人、また一人と触手の餌食になっていっていた。気が付くと銃撃音は止みEXP部隊の人は一人残らず引きずり込まれていったようだった。
 
「いったい、何が起きてるんだ……?」
「わからないけど、助かったね。あの人たちには悪いけれど、自業自得だと思う」
 ハルミンが吐き捨てるようにいった。EXP部隊の人たちがいた場所を迂回し、僕たちは病院へと急いだ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

能力1のテイマー、加護を三つも授かっていました。

暇野無学
ファンタジー
 馬鹿の巻き添えで異世界へ、召喚した神様は予定外だと魔法も授けずにテイマー神に丸投げ。テイマー神もやる気無しで、最低限のことを伝えて地上に降ろされた。  テイマーとしての能力は最低の1だが、頼りは二柱の神の加護だけと思ったら、テイマーの能力にも加護が付いていた。  無責任に放り出された俺は、何時か帰れることを願って生き延びることに専念することに。

ある日、近所の少年と異世界に飛ばされて保護者になりました。

トロ猫
ファンタジー
仕事をやめ、なんとなく稼ぎながら暮らしていた白川エマ(39)は、買い物帰りに偶然道端で出会った虐待された少年と共に異世界に飛ばされてしまう。 謎の光に囲まれ、目を開けたら周りは銀世界。 「え?ここどこ?」 コスプレ外国人に急に向けられた剣に戸惑うも一緒に飛ばされた少年を守ろうと走り出すと、ズボンが踝まで落ちてしまう。 ――え? どうして カクヨムにて先行しております。

絶対防御とイメージ転送で異世界を乗り切ります

真理亜
ファンタジー
有栖佑樹はアラフォーの会社員、結城亜理須は女子高生、ある日豪雨に見舞われた二人は偶然にも大きな木の下で雨宿りする。 その木に落雷があり、ショックで気を失う。気がついた時、二人は見知らぬ山の中にいた。ここはどこだろう? と考えていたら、突如猪が襲ってきた。危ない! 咄嗟に亜理須を庇う佑樹。だがいつまで待っても衝撃は襲ってこない。 なんと猪は佑樹達の手前で壁に当たったように気絶していた。実は佑樹の絶対防御が発動していたのだ。 そんな事とは気付かず、当て所もなく山の中を歩く二人は、やがて空腹で動けなくなる。そんな時、亜理須がバイトしていたマッグのハンバーガーを食べたいとイメージする。 すると、なんと亜理須のイメージしたものが現れた。これは亜理須のイメージ転送が発動したのだ。それに気付いた佑樹は、亜理須の住んでいた家をイメージしてもらい、まずは衣食住の確保に成功する。 ホッとしたのもつかの間、今度は佑樹の体に変化が起きて... 異世界に飛ばされたオッサンと女子高生のお話。 ☆誤って消してしまった作品を再掲しています。ブックマークをして下さっていた皆さん、大変申し訳ございません。

婚約破棄されて異世界トリップしたけど猫に囲まれてスローライフ満喫しています

葉柚
ファンタジー
婚約者の二股により婚約破棄をされた33才の真由は、突如異世界に飛ばされた。 そこはど田舎だった。 住む家と土地と可愛い3匹の猫をもらった真由は、猫たちに囲まれてストレスフリーなスローライフ生活を送る日常を送ることになった。 レコンティーニ王国は猫に優しい国です。 小説家になろう様にも掲載してます。

最難関ダンジョンで裏切られ切り捨てられたが、スキル【神眼】によってすべてを視ることが出来るようになった冒険者はざまぁする

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【第15回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作】 僕のスキル【神眼】は隠しアイテムや隠し通路、隠しトラップを見破る力がある。 そんな元奴隷の僕をレオナルドたちは冒険者仲間に迎え入れてくれた。 でもダンジョン内でピンチになった時、彼らは僕を追放した。 死に追いやられた僕は世界樹の精に出会い、【神眼】のスキルを極限まで高めてもらう。 そして三年の修行を経て、僕は世界最強へと至るのだった。

空間魔法って実は凄いんです

真理亜
ファンタジー
伯爵令嬢のカリナは10歳の誕生日に実の父親から勘当される。後継者には浮気相手の継母の娘ダリヤが指名された。そして家に置いて欲しければ使用人として働けと言われ、屋根裏部屋に押し込まれた。普通のご令嬢ならここで絶望に打ちひしがれるところだが、カリナは違った。「その言葉を待ってました!」実の母マリナから託された伯爵家の財産。その金庫の鍵はカリナの身に不幸が訪れた時。まさに今がその瞬間。虐待される前にスタコラサッサと逃げ出します。あとは野となれ山となれ。空間魔法を駆使して冒険者として生きていくので何も問題ありません。婚約者のイアンのことだけが気掛かりだけど、私の事は死んだ者と思って忘れて下さい。しばらくは恋愛してる暇なんかないと思ってたら、成り行きで隣国の王子様を助けちゃったら、なぜか懐かれました。しかも元婚約者のイアンがまだ私の事を探してるって? いやこれどーなっちゃうの!?

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

mio
ファンタジー
 特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。  神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。 そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。 日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。    神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?  他サイトでも投稿しております。

処理中です...