9ライブズナイフ

犬宰要

文字の大きさ
上 下
51 / 82

51

しおりを挟む
 僕はツバサとジュリの前に椅子を召喚し、そこに腰掛けて二人にショッピングモールで見た疑問について話した。
「見た事もないブランドばかりでここは僕たちがいた世界とは異なる別の世界なのか、それともすごい未来なのか、意見が聞きたくてさ」
「ヨーちゃんはどう思ったの?」
 ジュリがワクワクしてるのを隠そうとせず聞いてきた。思えば、最初の時と比べてだいぶ打ち解けあえて来た感じがある。
「ここは異なる世界だと思う。未来という感じはしないかな、あとこのショッピングモールはこんなビジネス街みたいなところにあるのがなんか未来っぽいのもあって混乱したかな」
「あ、やっぱりそう感じました。私はここは研究都市とか、何かしらのコンセプトが先にあってできた都市だと思いました。自分たちがいた世界ではこういう都市構想はなかなか難しいのでライトノベルとかならありえそうですけれどね」
「ツバサはそっち方面に考えたのかぁー、私はここは企業が作成した都市かな。あのEXP部隊のシュシャという人を見る限り、国主導で作られたというよりも企業とかそっちが作った都市な気がしますね」
 ツバサとジュリの話を聞くとなかなか自分では考えつかない視点が出てくるのですごいと感じた。
 
「二人ともすごいな」
 
 ふと思ったことを口にしてしまった。
 すると二人とも同時に赤面し、僕から顔をそらした。そこは照れるところなのか、なかなかかわいい。
「あ、企業が作った都市と思ったのは、恥ずかしい話なのですが私に合うサイズの服が置いてなかったのです。あと子ども服とかほとんど成人用のものしか置いてなかったのが企業が作成した都市なのかな、と」
「えぇ、それでも子ども生まれたら育児とかそれに必要な施設とかあってもいいのにね」
 この後、この街が生活する上で不自由ではないけれど、子どもの居場所がない点やトラックやバス停が見当たらないといった事を話した。
 
「あ、そういえばこの街にきて防護マスクつけていたけれど、ゾンビって臭うのか?」
 
 僕は瓦礫の山でベェスチティを倒した時とかも特に臭いはしなく、この街でも防護マスクをみんな着用していたがマスク越しだったからか臭いはしなかった。
 
「やはりこの世界は何かゲームを元に作られた世界?」
 ジュリはハッとしながら言った。
「ゾンビは基本臭いはずなんですよね、でもあのゾンビたちは蛆虫やハエがたかっていたり……そういえば、虫って見ました?」
 ツバサが言う虫というのはなんだろうか?
「虫ってどういう虫だ?」
「死体とかでもそうなんですが、放っておくと虫が湧くんです。なぜ虫が湧いてくるのかわかりませんが、ハエが卵を植え付けるのかどうかわかりません。ゾンビだって動く死体なので虫が湧いてもおかしくないんです。あと気がついたのですが生活臭があまりにもしない……」
「僕たちは普通に臭ったりするよな……」
 僕はまだシャワーを浴びてないので汗臭さがあった。
 
「「たしかに」」
 
「仮に自分たち以外がゲームのキャラクターだとして、この世界がゲームを元にした異世界だとしても自分たちだけ臭うとかってあるのか?」
「うーん、ないと思います。何もメリットもないですし、意味がない気がします」
「私もそう思う」
「わからないことだらけだ、あ、そういえば、シュシャと出会って生存確率ってどう変化した? 僕は5%落ちて70%から65%になったんだけど、二人は?」
 二人は生存確率を確かめると首をひねっていた。
「私のはあの時と変わらない状態ですね」
「私も変わらないです」
 二人は変動しなかったので、僕だけ何かあるのだろうかと疑問に思ったが答えが見つかるわけでもなかった。
 
「とりあえず、子ども、虫、臭いの三つは新たな謎ですね。アビリティ・スキルは知らない間に何か増えていたり、まだ何か隠された機能とかありそう、という事ですね」
 僕は頷き、ツバサとジュリと話せた事で何か整理できた気がしたので感謝の言葉を口にし、その日は休む事にした。もちろん、休む前にシャワーを浴びる。
 
 +
 
 この街に着いて二日目。ショッピングモールを拠点とし、周囲を探索する事にした。シュシャがいっていた建物も気になるが、何か情報を得られそうなら得てから光りがある方に向かう事にした。自分たちが持っている銃は充分ゾンビと戦える事から出会ったゾンビを倒すことである程度安全になるのではないかと話し合った。
 
 準備をし、拠点とはいってもテントなどは出る際には全て消し、ショッピングモールをあとにした。
 
「このショッピングモールを中心にぐるっと時計回りで探索してみよう」
「その後はどうする?」
 僕はさすがに探索し続けるのは飽きてしまうと思った。
「拠点に戻って服を見たり、今日はちょっと休憩しよう」
「「やったー」」
 ムッツーが今日のスケジュールを言うとタッツーとマナチは喜んでいた。
 
 僕たちはいつもの陣形を組み、生存確率を確かめ、周辺を探索する事にした。ショッピングモールを中心に探索していると、周りの建物がいくつかのパターンしかない事に気づいた。
「昨日歩いている時は、気づけなかったけれど、ここの建物ってそんなに種類がないよね」
 ハルミンは銃を持ち歩けないので周りを警戒する役目だった。片目を失っている分、死角はあるがその分、身体ごと動かして、あたりに注意を払っていた。
「バリケードがしてある建物とそうじゃない建物の違いは住居かビジネスかの違いなのかな」
 ところどころにバリケードがある建物があり、ハルミンが言う通りその違いなんだろうと僕は思った。
 
 ショッピングモールを中心に段々範囲を広げて探索していく中で、バリケードを駆使してゾンビから逃げようとしている人を見かけた。
「ムッツー」
 ハルミンはムッツーに声をかける。
「わかってる、この距離だと弾が当たってしまう可能性があるから近づき、ゾンビを倒そう」
「私は襲われている人との距離が遠いゾンビから倒していくわ」
 タッツーがアサルトライフルを構え、ゾンビに向けて撃つとマナチも一緒に構え、撃った。二人の連携によって、ゾンビは瞬く間に行動不能となった。そのまま、次のゾンビへと照射していった。
 
「あ、ありがとうー!」
「こっちへ走ってこれるか!?」
 ムッツーが叫ぶとヘロヘロになりながらこちらに走ってきた。
 
「ツバサとヨーちゃんは彼女の後ろから追ってくるゾンビを頼む」
「わかった」
「了解」
 僕たちは正面の位置ではなく、走ってくる彼女の斜めの位置に移動し、追ってくるゾンビに向けて銃を撃ち、行動不能にしていった。
「ジュリとハルミンは左右と後ろを警戒をお願い」
 二人は頷き、あたりを警戒していた。
 
「はぁはぁはぁ……ひぃひぃひぃ……はぁはぁはぁ」
 
 全身で息をするように無事にゾンビから逃げ切り、ムッツーの元にたどり着いたのだった。ムッツーは彼女を抱きかかえると追ってくるゾンビに対し、銃を撃って倒した。一通り見える範囲にいるゾンビを倒しおえて、息がまだ整っていなかった。
 
「あひ、ありが、と……はぁはぁはぁ」
 
 どんだけ体力がないんだ、この人。それが彼女に対しての第一印象だった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

余りモノ異世界人の自由生活~勇者じゃないので勝手にやらせてもらいます~

藤森フクロウ
ファンタジー
 相良真一(サガラシンイチ)は社畜ブラックの企業戦士だった。  悪夢のような連勤を乗り越え、漸く帰れるとバスに乗り込んだらまさかの異世界転移。  そこには土下座する幼女女神がいた。 『ごめんなさあああい!!!』  最初っからギャン泣きクライマックス。  社畜が呼び出した国からサクッと逃げ出し、自由を求めて旅立ちます。  真一からシンに名前を改め、別の国に移り住みスローライフ……と思ったら馬鹿王子の世話をする羽目になったり、狩りや採取に精を出したり、馬鹿王子に暴言を吐いたり、冒険者ランクを上げたり、女神の愚痴を聞いたり、馬鹿王子を躾けたり、社会貢献したり……  そんなまったり異世界生活がはじまる――かも?    ブックマーク30000件突破ありがとうございます!!   第13回ファンタジー小説大賞にて、特別賞を頂き書籍化しております。  ♦お知らせ♦  余りモノ異世界人の自由生活、コミックス1~4巻が発売中!  漫画は村松麻由先生が担当してくださっています。  よかったらお手に取っていただければ幸いです。    書籍1~7巻発売中。イラストは万冬しま先生が担当してくださっています。  第8巻は12月16日に発売予定です! 今回は天狼祭編です!  コミカライズの連載は毎月第二水曜に更新となります。  漫画は村松麻由先生が担当してくださいます。  ※基本予約投稿が多いです。  たまに失敗してトチ狂ったことになっています。  原稿作業中は、不規則になったり更新が遅れる可能性があります。  現在原稿作業と、私生活のいろいろで感想にはお返事しておりません。  

転生したので好きに生きよう!

ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。 不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。 奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。 ※見切り発車感が凄い。 ※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。

【完結】不協和音を奏で続ける二人の関係

つくも茄子
ファンタジー
留学から戻られた王太子からの突然の婚約破棄宣言をされた公爵令嬢。王太子は婚約者の悪事を告発する始末。賄賂?不正?一体何のことなのか周囲も理解できずに途方にくれる。冤罪だと静かに諭す公爵令嬢と激昂する王太子。相反する二人の仲は実は出会った当初からのものだった。王弟を父に帝国皇女を母に持つ血統書付きの公爵令嬢と成り上がりの側妃を母に持つ王太子。貴族然とした計算高く浪費家の婚約者と嫌悪する王太子は公爵令嬢の価値を理解できなかった。それは八年前も今も同じ。二人は互いに理解できない。何故そうなってしまったのか。婚約が白紙となった時、どのような結末がまっているのかは誰にも分からない。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

乙女ゲームのヒロインに転生、科学を駆使して剣と魔法の世界を生きる

アミ100
ファンタジー
国立大学に通っていた理系大学生カナは、あることがきっかけで乙女ゲーム「Amour Tale(アムール テイル)」のヒロインとして転生する。 自由に生きようと決めたカナは、あえて本来のゲームのシナリオを無視し、実践的な魔法や剣が学べる魔術学院への入学を決意する。 魔術学院には、騎士団長の息子ジーク、王国の第2王子ラクア、クラスメイト唯一の女子マリー、剣術道場の息子アランなど、個性的な面々が在籍しており、楽しい日々を送っていた。 しかしそんな中、カナや友人たちの周りで不穏な事件が起こるようになる。 前世から持つ頭脳や科学の知識と、今世で手にした水属性・極闇傾向の魔法適性を駆使し、自身の過去と向き合うため、そして友人の未来を守るために奮闘する。 「今世では、自分の思うように生きよう。前世の二の舞にならないように。」

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

処理中です...