9ライブズナイフ

犬宰要

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 僕のサブマシンガンやムッツーやツバサが使うアサルトライフル、ジュリのショットガンと違ってハルミンの銃から発射時の震動は比較にならないほどあった。ハルミンがその反動を抑えようと必死になっていた。
 狙いをつける必要のないくらい、威力が高かった。僕が持つ銃の攻撃もベェスチティを削っていくけれども、それよりも多く削り、吹き飛ばしていった。削っていく速度も僕のサブマシンガンよりも遥かに早かった。
 ただ、銃そのものはでかく取り回し辛そうだった。それを補う圧倒的な火力は頼もしく、この状況を打破できると感じた。
 
 囲まれていたはずが、ハルミンが撃っている方向は道が出来ており、包囲されている状態から逃げれると思えた。
 
 だが、ハルミンが持っている銃は歩きながら撃つようなものではない気がした。
「ハルミン、ムッツーの方角に、あの光りが見える方に撃ってくれるか!」
 僕はハルミンの銃声に声がかき消されないようにお願いした。
 すると、ハルミンは撃つのをやめ、ムッツーが撃っている方向に銃を設置しなおそうとしたが、重すぎたのか持ち上がらなかった。
「一度消した後に再召喚すればいけるわ」
 タッツーがハルミンに言うと、ハルミンは銃を一度消し、再召喚し、マシンガンで道を作った。
 
 再び鳴り響く銃声に、僕は頼もしく感じた。次第に、前方に扇状に開いていき、ベェスチティはドロドロに溶け、建物は瓦礫になり、歩いて逃げるには充分な程開けていった。ここに長くとどまっている理由もなくなり、光りの方へ進もうと思った時に今までよりも大きな爆発音が逃げてきた方から鳴り響いた。
 
 ドガァァン!!!!
 
 音の後に衝撃波が起こり、僕はたじろぐぐらいに済んだが、タッツー、ツバサ、ジュリが衝撃で倒れた。すると突如、ベェスチティが一斉に動きが止まったかと思うと、ゆっくりと立ち上がり、その爆発があった方向を一斉に向いたのだった。
 
「な、なんだ?」
 
 僕は爆発音があった方向を見ると、大きな爆発が再度おこった。大きな炎が空に巻き上がったかと思うと僕は空を見ていた。気が付いたら、吹き飛ばされて、地面に転がされていた。周りを見るとハルミン以外は吹き飛ばされていた。ハルミンだけは寝そべっていたので、衝撃をうまく受け流していた。
 
 立ち上がって、ベェスチティがこの隙に襲ってくると思ったが様子がおかしかった。
 
あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!
 
 重低音の今まで聞いたことのない声でベェスチティたちが一斉に叫んでいた。思わず僕たちは耳を塞ぐ大きさで、地面も大きく揺れているような錯覚に陥る程の絶叫だった。
 
 それが何秒続いたのか、ぴたりと止んだ。
 
 僕は言い寄れぬ不安と恐怖を感じつつも、塞いでいた手を銃に持ち替えて構えた。何が起きようとも守るという意思で、近くにいるベェスチティに銃口を向けた。
 
 何秒経ったのか、数分経ったのか、短いようで長く感じた後に、ベェスチティたちがドロドロに溶けていった。
 
 視界に入る全てのベェスチティが例外なくドロドロに溶けた。
「な、何が起きた……んだ?」
 僕は大きな爆発があった方角を見て、察した。
 
 リーダー、つまり臓器の塊をやっつけたから、全てのベェスチティが死んだという事を察した。
 
 僕は瞬時に、あの時「撃っていれば」と思った。あの時、あの時さえ躊躇わなかったら、と思ってしまった。また爆発がし、さっきとは違い火がまき散らされていった。遠くから火が広がり、迫ってくるような広がり方を見せていた。
 
「ま、まさか……」
 ムッツーがその火の広がり方を見て、言葉にした。
「ここも火の海になるのか?」
 
 僕は視界の隅に見えた生存確率の数値を見て、生き残れると確信した。
 
――生存確率80%
 
「行こう、光りの方へ。今なら逃げ切れる」
 僕らはベェスチティがいなくなった中、光りを目指した。そこから僕たちは逃げるように離れていった。ハルミンはふらついていたが、タッツーに支えられながら歩いた。ムッツー、マナチ、ツバサ、ジュリは疲労感はあるものの、一歩ずつ歩いた。僕もそれに続くように足を前へ、歩いた。
 
 誰が、なぜベェスチティたちを爆発と火で覆いつくそうとしているのか、瓦礫の山の二人だとしたら、僕はどうしたいのだろう、答えは出なかった。
 
 あれだけの激戦の後は、誰も何もしゃべらなかった。ただ、黙って歩いた。疲れ切っていたのもあり、喋る気力はなかった。
 
 光りのある方へ向かう途中、廃墟の街の方から爆発音がずっと鳴り響いていた。
 
 時折、爆発を確かめるように皆それぞれ後ろを振り返り、廃墟の街の末を一瞬だけ見ると再び光りの方へ進んだ。あのまま、あの街にいたら爆発に巻き込まれていたかもしれなかった。そういった怖さを振り返った時に、僕は感じた。ただどこか安心できたのは、爆発音が僕たちを追ってきてるわけではなく、廃墟の街を壊しているようだった。火は迫ってきてるものの、そこまで早くなく、僕たちはベェスチティの建物がある区域を越えた。
 
 越えた先は道らしきものはなく、地面は砂利の砂漠ではなく、固い雪みたいな感触の灰色の緩やかな丘が広がっていた。
 
 僕たちはあたりが暗くなるまで歩いた。廃墟の街から遠ざかりたかった、誰も何も言わなかったが思いは一つに繋がっていると僕は感じた。
 暗くなったら、テントを出し野営した。砂利の砂漠の時のように互いに身を寄せ合いながら、今日あったことが夢じゃなかったと互いに泣きながら話した。そして、互いに称えて、生き延びたことを褒め合った。
 
 遠くでまだ爆発音が聞こえ、火が見えたりしたが僕たちは気にしていたものの、今は大丈夫だとわかっていた。
 
――生存確率100%
 
 ムッツーとタッツーが洗脳されていた時、ハルミンがふさぎ込んでいた時を僕たちがどんな情報を知り、共有したのかそれを埋めるように話をした。今後生き延びていくために……。
 
 それから、昼間、夜中、規則性もなく爆発音が遠くで聞こえる日々を過ごした、だけど、次第に離れていくにつれて、それは聞こえなくなっていった。
 
 それと同時に、生存確率は100%から徐々に下がっていった。
 
 遠くに見えたのは、新たな街だった。

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