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これでもまだ40%なのかと意識が散漫になって、ベェスチティを倒す速度が落ちてしまっていた。だが、それが些細な問題なのか、生存確率は変動しなかった。じゃあ、倒し続ける事以外に何があるのか、僕にはこの生存確率の仕組みが理解ができていない。
「――ん、痛っ……痛い、えっ!?」
寝ていたハルミンが目覚め、あたりを見渡し、無くなった片目側を手で触っていた。顔を手で覆いつくし、頭を抱えはじめていった。僕はそれを横目にし、落ち着いてと言ったところで落ち着けるわけがないと思った。
――生存確率25%
ぐっと下がった生存確率が不安を掻き立てるには充分なものだった。
「タッツー、ハルミンを頼む。ジュリは、足止めでも構わない、やれるか?」
「わかりました、お願いします」
「戦いながら、探してみます。多分、あるはずなんです」
タッツーがハルミンのところへ行き、、ジュリは銃を構えベェスチティに向けて撃つ。タッツーはハルミンを抱きしめ、落ち着かせようとしていた。
高性能サイレンサーで銃声が抑えられているものの、遠くで聞こえる爆発音とポキポキと音を鳴らしながら迫ってくるベェスチティ、この状況下で落ち着かせる、いや落ち着いてなんていられない。
「ハルミン、聞いてくれる」
「嫌っ!」
「私ね、あなたに謝らないといけないの」
「聞きたくないっ!」
「あなたを守っているつもりが、あなたを弱くさせていた」
「知らないっ! ねぇ、どうして片方が何も見えないの? どうして?」
二人の会話はかみ合っていなかった。ハルミンはパニックになっており、叫び散らしていた。
くそ、何か手立てはないのかと焦り、うまく倒しきれず時間がかかってしまう事が増えてきた。それは僕だけではなく、ムッツー、マナチ、ツバサにも当てはまっていた。
「あ、ありましたっ! 散弾ではなくスラッグ弾! これなら私だって!」
ジュリが叫ぶと、今まで高性能サイレンサーで抑えられた銃声ではなく、大きな銃声に切り替わった。
ヴァンッ! ヴァンッ! ヴァンッ!
その一発はベェスチティの急所付近をまとめて吹き飛ばすものだった。
「ヒィ!」
ハルミンが小さな悲鳴を上げる。
――やめて、ジュリ……やめて、ジュリ……。
ベェスチティがジュリを名指しでやめてとアカネの声で訴えてきた。
「嫌っ!いやぁあああ!」
ハルミンがアカネの声を聞き、さらにパニックになっていった。
「ジュリ、高性能サイレンサーで音を抑えられないのか?」
僕は撃つ度に音が大きく鳴り、ハルミンを驚かせてしまう事と自分も少し驚いてしまうので聞いてみた。
「無理です、この弾を使用する際には高性能サイレンサーを外さないとつかえないと書かれていました」
「くっ、わかった。仕方ない!」
ヴァンッ! ヴァンッ! と音が鳴り響く中でベェスチティはアカネの声で継続的にジュリへ呼びかけていた。
――ジュリ、ネズミを一緒に倒そう。あたしたちは仲間だよ。
ジュリは構わず、ベェスチティに撃ち倒していくと生存確率が30%に上がっていた。このまま、倒しきれれば勝ちなのか、いやそんなわけはない。多分、これは全員……ハルミンも含めて立ち向かわないと勝てない事なんだと思った。
「ハルミン、聞いて。みんな戦ってる、私も戦ってたわ。戦わなかったから私はあなたを助けられなかった。だから、あなたの眼を失う形になってしまった。だけど、今戦わないとみんな死ぬかもしれないのよ」
「わからないよ、なんで戦わないといけないの? 私には無理だよ。もう眼が見えないし、銃とか、それにあれは何なの? どうして襲ってくるの?」
無くなった片目の方を抑えながら、もう片方の目から涙を流していた。ハルミンの思いの吐露は、悪夢のような目の前の出来事と今の状況に対して、叫んで言葉にすればどうにかなってほしいという願いに聞こえた。
「見たでしょ、私たちを食べて取り込むために襲ってきてるのよ」
「ヒッ……」
タッツーは両手でハルミンの頬に触れ、目を合わせるようにしていた。僕はどこかで説得は無理だろうと思い、ジッとしていてとタッツーが言うものだと思っていた。
「ハルミンならできる。元の世界に帰るのなら、帰った時に胸を張れるようにしなきゃ、ここであった怖い事を思い出して怯えて元の生活に戻れなくなるわ。だから、私たちは戦ってるのよ」
僕はそこまで深く考えていなかった。元の世界に帰りたい、帰った後の生活がここでの出来事が影響して生活が変わるのかまで考えていなかった。
「ううっ、嫌だ。嫌だよぉ……」
「ハルミン、一緒に戦おう。銃を出して、日常を台無しにされっぱなしでいいの?」
「……ひぐっ、嫌……嫌!」
ハルミンは駄々をこねているだけのように聞こえた。僕は横目で見る余裕があったわけでもなく、悶々としながらも前の前のベェスチティたちを倒した。するとガシャっと何かが地面に落ちた音が聞こえた。なんだと思い、頭だけ後ろの方を向き、チラリと見るとハルミンが銃を召喚していた。
そこでふと思い出した。砂利の砂漠で試射していた時に、ハルミンだけ銃を召喚していなかったのだ。どんな銃なのかわからなかった。今、チラリと見ただけで僕たちが使ってる銃の誰よりも太く、大きく感じられた。両手で持つ大きさで、地面に置いて撃つ銃なのか、三脚がついていた。
ハルミンがトリガーに手をかけ引き金を絞るのに時間はかからなかった。
彼女の顔は、あの弱い逃げていた時の顔をしていなかった。
バッバッバッ!!
その銃声は、放たれた先に一本の道を作り、建物の柱さえも綺麗に削っていった。斜線にあるのがなんだろうと関係なく、吹き飛ばされていった。
僕たちはその音に驚き、何が起きたのか、わからなかった。その銃が何かは僕にはわからなかったが、ツバサとジュリが嬉しそうな、希望に満ちた声を上げた。
「マ、マ、マシンガンだ!」
「マシンガンだ!」
ハルミンの銃声はなおも大きく鳴り響き、ベェスチティたちから発せられるアカネの声はかき消されていった。
――生存確率60%
「――ん、痛っ……痛い、えっ!?」
寝ていたハルミンが目覚め、あたりを見渡し、無くなった片目側を手で触っていた。顔を手で覆いつくし、頭を抱えはじめていった。僕はそれを横目にし、落ち着いてと言ったところで落ち着けるわけがないと思った。
――生存確率25%
ぐっと下がった生存確率が不安を掻き立てるには充分なものだった。
「タッツー、ハルミンを頼む。ジュリは、足止めでも構わない、やれるか?」
「わかりました、お願いします」
「戦いながら、探してみます。多分、あるはずなんです」
タッツーがハルミンのところへ行き、、ジュリは銃を構えベェスチティに向けて撃つ。タッツーはハルミンを抱きしめ、落ち着かせようとしていた。
高性能サイレンサーで銃声が抑えられているものの、遠くで聞こえる爆発音とポキポキと音を鳴らしながら迫ってくるベェスチティ、この状況下で落ち着かせる、いや落ち着いてなんていられない。
「ハルミン、聞いてくれる」
「嫌っ!」
「私ね、あなたに謝らないといけないの」
「聞きたくないっ!」
「あなたを守っているつもりが、あなたを弱くさせていた」
「知らないっ! ねぇ、どうして片方が何も見えないの? どうして?」
二人の会話はかみ合っていなかった。ハルミンはパニックになっており、叫び散らしていた。
くそ、何か手立てはないのかと焦り、うまく倒しきれず時間がかかってしまう事が増えてきた。それは僕だけではなく、ムッツー、マナチ、ツバサにも当てはまっていた。
「あ、ありましたっ! 散弾ではなくスラッグ弾! これなら私だって!」
ジュリが叫ぶと、今まで高性能サイレンサーで抑えられた銃声ではなく、大きな銃声に切り替わった。
ヴァンッ! ヴァンッ! ヴァンッ!
その一発はベェスチティの急所付近をまとめて吹き飛ばすものだった。
「ヒィ!」
ハルミンが小さな悲鳴を上げる。
――やめて、ジュリ……やめて、ジュリ……。
ベェスチティがジュリを名指しでやめてとアカネの声で訴えてきた。
「嫌っ!いやぁあああ!」
ハルミンがアカネの声を聞き、さらにパニックになっていった。
「ジュリ、高性能サイレンサーで音を抑えられないのか?」
僕は撃つ度に音が大きく鳴り、ハルミンを驚かせてしまう事と自分も少し驚いてしまうので聞いてみた。
「無理です、この弾を使用する際には高性能サイレンサーを外さないとつかえないと書かれていました」
「くっ、わかった。仕方ない!」
ヴァンッ! ヴァンッ! と音が鳴り響く中でベェスチティはアカネの声で継続的にジュリへ呼びかけていた。
――ジュリ、ネズミを一緒に倒そう。あたしたちは仲間だよ。
ジュリは構わず、ベェスチティに撃ち倒していくと生存確率が30%に上がっていた。このまま、倒しきれれば勝ちなのか、いやそんなわけはない。多分、これは全員……ハルミンも含めて立ち向かわないと勝てない事なんだと思った。
「ハルミン、聞いて。みんな戦ってる、私も戦ってたわ。戦わなかったから私はあなたを助けられなかった。だから、あなたの眼を失う形になってしまった。だけど、今戦わないとみんな死ぬかもしれないのよ」
「わからないよ、なんで戦わないといけないの? 私には無理だよ。もう眼が見えないし、銃とか、それにあれは何なの? どうして襲ってくるの?」
無くなった片目の方を抑えながら、もう片方の目から涙を流していた。ハルミンの思いの吐露は、悪夢のような目の前の出来事と今の状況に対して、叫んで言葉にすればどうにかなってほしいという願いに聞こえた。
「見たでしょ、私たちを食べて取り込むために襲ってきてるのよ」
「ヒッ……」
タッツーは両手でハルミンの頬に触れ、目を合わせるようにしていた。僕はどこかで説得は無理だろうと思い、ジッとしていてとタッツーが言うものだと思っていた。
「ハルミンならできる。元の世界に帰るのなら、帰った時に胸を張れるようにしなきゃ、ここであった怖い事を思い出して怯えて元の生活に戻れなくなるわ。だから、私たちは戦ってるのよ」
僕はそこまで深く考えていなかった。元の世界に帰りたい、帰った後の生活がここでの出来事が影響して生活が変わるのかまで考えていなかった。
「ううっ、嫌だ。嫌だよぉ……」
「ハルミン、一緒に戦おう。銃を出して、日常を台無しにされっぱなしでいいの?」
「……ひぐっ、嫌……嫌!」
ハルミンは駄々をこねているだけのように聞こえた。僕は横目で見る余裕があったわけでもなく、悶々としながらも前の前のベェスチティたちを倒した。するとガシャっと何かが地面に落ちた音が聞こえた。なんだと思い、頭だけ後ろの方を向き、チラリと見るとハルミンが銃を召喚していた。
そこでふと思い出した。砂利の砂漠で試射していた時に、ハルミンだけ銃を召喚していなかったのだ。どんな銃なのかわからなかった。今、チラリと見ただけで僕たちが使ってる銃の誰よりも太く、大きく感じられた。両手で持つ大きさで、地面に置いて撃つ銃なのか、三脚がついていた。
ハルミンがトリガーに手をかけ引き金を絞るのに時間はかからなかった。
彼女の顔は、あの弱い逃げていた時の顔をしていなかった。
バッバッバッ!!
その銃声は、放たれた先に一本の道を作り、建物の柱さえも綺麗に削っていった。斜線にあるのがなんだろうと関係なく、吹き飛ばされていった。
僕たちはその音に驚き、何が起きたのか、わからなかった。その銃が何かは僕にはわからなかったが、ツバサとジュリが嬉しそうな、希望に満ちた声を上げた。
「マ、マ、マシンガンだ!」
「マシンガンだ!」
ハルミンの銃声はなおも大きく鳴り響き、ベェスチティたちから発せられるアカネの声はかき消されていった。
――生存確率60%
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