9ライブズナイフ

犬宰要

文字の大きさ
上 下
42 / 82

42

しおりを挟む
「万事休す、か?」
 死体を積み重ね、徐々に範囲を狭めてくるベェスチティに対して、僕たちは機械的に動いているベェスチティを撃ち続け倒していった。近寄られたら終わる。
「いったい何体いるんだろうね、もう結構倒したよ……」
 ジュリが愚痴る。
 そうなのだ、結構な数を倒しているはずなのに、一向にベェスチティの勢いが変わらないのだ。
「ちょ……とや、休んでもいい?」
 タッツーは限界が近そうだった。飲まずのまま背負い続けていたからだ。
「みんな、いったんここでタッツーを休憩させ、僕たちは引き続きベェスチティを倒し、可能な限り近づけさせないようにしよう」
 そのあと、どうすればいい。どうしたらいいんだと僕は自問自答した。
「わかった」
「了解」
 と各自反応、頷いたり声で反応してくれたりした。
 タッツーはハルミンをテント内に敷くクッション材を召喚した上に置き、水のペットボトルを召喚して口を潤していた。全身から湯気が出ているかのような汗のかき方をしており、肩で息をしていた。
 遠くでは爆発音が聞こえ、火も遠くで燃え盛っているのが見えた。また何もかも火で覆いつくされるのかと思ったりした。倒したベェスチティを見て、奇妙だと感じ、何かおかしいと気づいた。倒したと思ったベェスチティから赤い汁が止まっており、傷口も塞がっていたのだ。
 
「まさかっ」
 
 僕はそれが違うことを願った。だが、それが現実だとクリスベクターカスタムブレイクスルーを照射し続けて発覚した。倒したと思ったベェスチティたちは死んでいなく、ただ横たわっていただけだった。肉体の一部が欠損しただけで、生きていたのだった。
 
スススッスススッスススッ
 
 ただ一体に銃弾を撃ち肉片にした先に、ベェスチティだったものはドロドロに溶けて赤い水たまりになったのだ。
 
「ムッツー、マナチ、ツバサ、ジュリ、見えているベェスチティはすべて生きている! 粉々にするほど撃たないと死なない!」
 
 生存確率が31%になった。
 
 僕はなぜ30%のままだったのか、よく考えていなかった。僕がベェスチティがどうやったら死ぬのか伝えた事で周りを包囲していたベェスチティが一斉に動きだした。身体が、頭部が、どこか欠損していようとドロドロに溶けていないベェスチティは動き始めた。
 
「嘘でしょう!」
 ツバサが悲鳴に似た声を上げた。
「わ、私の銃じゃ……ッ!」
 ジュリが悲痛な声を上げた。
「舐めるな、舐めるなよ‥‥舐めるなよ」
 ムッツーが吠える。
「僕はジュリの方をフォローする! ジュリ、弾は他にあったりするか、僕が時間を稼いでる間に何かっ、何かアビリティ・スキルを探してくれ、きっと何かあるはずだ」
 僕は思いついたことを口にしながら、迫りくるベェスチティに向けて銃弾を浴びせた。一体を肉片に変えるのに、想像以上に時間がかかるがやるしかない。
 
「む、むりだよ……嫌だよぉぉぉ」
 マナチが銃を撃ちながら迫りくる恐怖に弱気になっていた。くそ、もっと早く気づけばよかったと僕は後悔し、焦った。
「ジュリ、何か、何かあったか?」
「ううっ、ううぅ……」
 ジュリは唸っていた。それを見て、多分、彼女は見つくしていてこれ以上何か見つからないのかもしれないと僕は頭をよぎっていた。
「あ、諦めないで……ハァハァ……」
 タッツーが肩で息をし、座りながらも銃を構え、ジュリを励ました。
 
タタタタタタッタタタタタタッ
 
「私は諦めないわ、まだ戦えるもの、ハァハァ」
 タッツーはおぼつかないが銃を撃ち、ベェスチティに対して攻撃をし続けた。
 
 何分経ったのか、それはとても長く感じ、もう何時間も戦っているような感覚だった。迫りくるベェスチティによって次第に包囲が狭まっていっていた。倒していたと思っていたベェスチティがまさか死んだ真似をしていたのだ。
 
――仲間になろう。
 
 ここでさらにアカネの声で僕たちを揺さぶってきた。
 
――痛い、痛いよ。やめて、やめて。
 
 ポキポキと音を鳴らしながら、こちらにアカネの声を発しながら迫り、腕や足がないベェスチティは這うように、どこか欠損してるベェスチティはある腕と足で動き、覆いつくされるものだと考えなくてもわかった。
 
 それでも諦めず僕たちは戦った。
 
 視界の隅にある生存確率が35%になっていた。さっきの状況から悪くなっていってるのに、変わらず35%だった。僕はただ何かに縋るのではなく、この状況だろうと何か打開できるのだと数字が教えてくれた。
 
 ベェスチティを一定の肉片にするとドロドロに溶けていくのを見て、次のベェスチティに標準を合わせ同じように肉片にしていった。ベェスチティはどれも狙われるとわかると圧をかけるように腕や足を広げ迫ってきて、僕はその足を止めるように足や腕、頭部などを肉片にするように撃っていた。
 
 それはムッツー、マナチ、ツバサ、タッツーもだった。
 
 もしかして、殺し方が間違ってるのか、肉片にするのではなく……弱点があるのかもしれない。そう僕は考え、今までとは逆に撃つ順番を変えた。
 
スススッスススッスススッ
 
 するとベェスチティは途端にドロドロに溶けていった。
「下腹部の付け根、そのあたりが弱点だ!」
 僕は叫び、目に入るベェスチティに向けて、クリスベクターカスタムブレイクスルーを撃ち、本当の死体に変えてやった。
 
 ただ、それでも僕たちに迫るベェスチティに対して追いついていなかった。
生存確率が40%――と視界の隅に表示されていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件

白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。 最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。 いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。

悪女と名高い聖女には従者の生首が良く似合う

千秋梓
ファンタジー
これは歴史上で一番血の似合う聖女が不死身の従者と共にいくつもの国を巡る話。 社交界の悪女と呼ばれる公爵家次女、クリスティーナ・レディング。 悪い噂が付き纏うということ以外は至って普通の令嬢であった彼女の日常は、ある日を境に一変。 『普通』であった彼女は『規格外』となる。 負傷した騎士へ近づいたクリスティーナは相手の傷を瞬時に癒してしまったのだ。 この世界で回復魔法を使えるのは『聖女』と呼ばれるただ一人の存在のみ。 聖女の力に目覚めたクリスティーナの日常はこの日を境に失われた。 ――ところで、どうして私は従者の生首を抱えて走っているのかしら。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて

だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。 敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。 決して追放に備えていた訳では無いのよ?

プラス的 異世界の過ごし方

seo
ファンタジー
 日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。  呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。  乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。 #不定期更新 #物語の進み具合のんびり #カクヨムさんでも掲載しています

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。 意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。 彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。 そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。 これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。 ○○○ 旧版を基に再編集しています。 第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。 旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。 この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

処理中です...