9ライブズナイフ

犬宰要

文字の大きさ
上 下
21 / 82

21

しおりを挟む
 ネズミの群れに飲み込まれずに、橋からやってくるネズミの群れを撃退できた。それは僕だけの力だけじゃなく、見ず知らずのカースト上位にいそうな釣り目なメスガキだった。
 
 そのメスガキであるアカネは念入りに何か煙を出すものを橋に投げ込みまくっていた。
 
「死ね! 死ね! くらばれ! 消えろ!」
 
 かなり物騒なことを叫びながら橋の上が煙で見えなくなった。煙は巻き上がったりせず、その場に沈むように留まっていた。煙が充満し、ネズミの群れすら見えなくなるとアカネは満足したのか、投げるのをやめた。
 
「その投げていたのは何なんだ?」
 僕が持ってる銃みたいに何か召喚して投げていたものだろうと思った。
「これ? これ膝下くらいの動物を殺す煙を吐き出すやつだよ。たしかぁ……致死性有毒ガス筒って書いてある」
 彼女は僕と同じアビリティ・スキルを持っているとわかった。僕には見えないステータスウィンドウを見ながらそれが何か言ったからだ。
「そっかぁ、すごいね」
「でしょでしょ~! てかヨーちゃんもすごいよぉ! あの群れをその銃で倒しまくるなんてすごいよぉ!」
「あ、ありがとう」
 
 僕はなぜ彼女が一人なのか、そして、他に仲間がいるのか、気になった。都合よくこの橋に来たのは何か他に理由があるんじゃないかと思った。あの瓦礫の山でいまだに爆発している二人の仲間なのかもしれないとも思った。
 
「それにしてもすごい爆発と火だねぇ、いやぁ、なにあれ意味わかんな~い」
「君の仲間じゃないの?」
 僕は正直に聞くことにした。
「え、知らないよ? あたしの仲間はあっちの方にいるよ~」
「あっち?」
「そそそ! あたしはそこに住んでて、仲間に入れてもらったんだ」
「そうなんだ、僕も仲間がいて、今は別行動してるから合流しなきゃ」
「一人じゃ寂しいもんね~」
 僕はこのままこのアカネと二人っきりにいるのは何か嫌だった。単純に好みではないのが大きい。
 
「それじゃ、僕は別行動してる仲間を探すよ。助けてくれてありがとう」
「え、もう行っちゃうの? あ、私も一緒に探すよ。あっちから来たんでしょ、こっちは地理わかる? 大丈夫、あたしが案内してあげるよ」
「え、あ、うん」
「キャハッ、もう気にしすぎだよ~。一緒にネズミを殺した仲間だから任せてぇ!」
 
 僕は相手のノリに飲まれた。
 
「てか、ヨーちゃんってさ、もしかしてマスクとるとかっこいいんじゃね?」
 アカネは防護マスクを外し、自分も外せという空気を醸し出してきた。仕方なく、僕は防護マスクを外した。
「べ、別にかっこよくないだろ」
 声が上ずった。恥ずかしさから顔をそらした。これだからカースト上位は嫌いだ。
「全然ありありっ」
「そ、そうか……それより案内してくれるんだろ?」
 僕は防護マスクをし直した。
「え、ああ、うん。じゃ、行ってみよう~」
 
 アカネがどんな表情をしているのか後ろ姿からはわからなかった。僕は彼女の後ろについて歩き、向かっている方向を見るとそこは薄暗さでよくわからなかった。次第に目が慣れてくるとそこは街だったのがわかった。ただどの建物も人の気配がなく、廃墟だというのが一目でわかる状態だった。
 植物がなくただ風化している廃墟の街だった、ひび割れた外壁や崩れている外壁など多種多様な廃墟が立ち並んでいた。道路もひび割れており、盛り上がっていたり、へこんでいる部分が目立っていた。大道路と思われる場所をアカネは歩き、僕はその後ろについていった。
 
 街灯らしきものはあるが、灯りがついてるわけもなく、何をどうしたらこんな廃墟になるのだろうという状態だった。道路には車などもなく、廃墟の中を見ても何か置いてあるわけでもなかった。まるで建物だけつくって、住まないまま放置されているようだった。
 
「なぁ、ところでどこに向かってるんだ?」
「あの大きな建物の屋上に行けば、上から下が見れるよ」
 ああ、なるほどと思った。この廃墟の街のどこかにマナチたちがテントを設営したとしたら、明かりが漏れたりするからそこに向かえば仲間と合流ができるという事か。
「確かに上から探せば見つかるかもしれない」
 
 そのまま彼女についていき、大きな建物に入っていった。ドアなどもなく、中もがらんとしていた。階段で屋上まで登り、街を一望できる場所だった。
 
 遠くを見ると光りがあり、その光りが地面から湧き出ているような、大きな光る樹のような感じだった。
「ヨーちゃんもあの光りが気になる? あれ、なんだろうねぇ~」
 僕が気になっていたのが伝わったのか、彼女が話しかけてきた。
「アカネもあれが何かわからない感じなのか」
「前は気になっていたんだけど、今はなんか怖いっていうかよくわからないんだよねぇ」
 僕は適当に相槌を打ちながら、マナチたちがどこかにいるのか見渡す事にした。
 
 すると学校の廃墟みたいな場所があり、そこに明かりがあるのが見えた。他にも明かりがある建物があるのか見渡し、特に見当たらなかった事からその場所に行ってみようと思った。
 
「やっぱあそこ気になる? あたしも気になる! 昨日とか一昨日とかあそこに人が居たことなかったし、多分そこにヨーちゃんの仲間がいるんじゃない? 行ってみよっ!」
 アカネのテンションは苦手だが、彼女がいなければマナチたちと合流するのは大変だったかもと思うと礼の一つは言っておかないといけないなと思った。
「ありがとう、助かったよ」
「いやぁ、いいっていいって! ネズミを殺した仲間だしぃ、それに行ってみないとヨーちゃんの仲間かまだわからないじゃない?」
「そ、そうだな」
「それじゃ、行ってみよぉ~!」
 
 僕たちは、屋上から降り、廃墟の学校を目指し歩いた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉

まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。 貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。

本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。

なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。 しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。 探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。 だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。 ――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。 Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。 Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。 それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。 失意の内に意識を失った一馬の脳裏に ――チュートリアルが完了しました。 と、いうシステムメッセージが流れる。 それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

絡みあうのは蜘蛛の糸 ~繋ぎ留められないのは平穏かな?~

志位斗 茂家波
ファンタジー
想いというのは中々厄介なものであろう。 それは人の手には余るものであり、人ならざる者にとってはさらに融通の利かないもの。 それでも、突き進むだけの感情は誰にも止めようがなく… これは、そんな重い想いにいつのまにかつながれていたものの物語である。 ――― 感想・指摘など可能な限り受け付けます。 小説家になろう様でも掲載しております。 興味があれば、ぜひどうぞ!!

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

処理中です...