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第6章

到着餃子の街

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 最後のトイレ休憩を終えた俺たちは、東北道を抜け一般道に入った後、午前11時48分、宇都宮駅の駐車場に到着した。
 最後のトイレ休憩時に言われただいの言葉のせいで、正直何とも言えない気分のままだったけど、とりあえず無事故でここまで到着。めでたしめでたし。

「運転おつかれさまでした」
「おっつかれ~~」
「いやぁ、眠くなる運転だったわー」
「でもおかげで元気に動けそうだね~」
「やっとリダたちに会えるわね」
「いや、俺の時ありがとう少なくない!?」

 大きな荷物は車に積んだまま、車から降りるみんなの言葉にツッコむ俺に大和は笑っていた。
 後で殴るぞほんと。

「みどりの窓口だっけか?」
「そうね、そのはず」
「すぐ見つかるかな~」
「子連れの夫婦なら、すぐ分かるんじゃな~~い?」

 早くリダたちに会いたいはやる気持ちを抑えられないオーバー25の女性陣が前を歩き、その後ろに俺と大和、ゆきむらが続く。
 この横並びは、初めてだな。

「ぐっすり眠ってしまい申し訳ありませんでした」
「あー、大丈夫だよ」
「お役に立てず……この恩は必ずお返ししますので」
「大げさかよ」

 頭を下げてくるゆきむらの姿に大和が笑ってるけど、ほんとね、この子の脳内ってどうなってるのかほんと分からんよ、俺には。

「ま、ゆっきーには帰りに期待ってことだな」
「またお隣の席になれるよう、頑張りますね」
「いやそこ!? じゃんけんは確率だからな?」

 まぁでも、今さらゆきむらに何を言ってもしょうがないだろう。
 これがこいつなんだし。

 だいとゆきむらの仲が悪いわけでもないから、俺が進む道を間違えずにぎょしていけばいいのだろう。
 御しきれるか、ちょっとわかんないけど。

 そんなことを考えつつ、俺たちは前を行く女性陣に続いて進んでいくのだった。



「いそ~?」

 駐車場と違って駅構内は冷房が感じられ、心地よい。
 遠目にみどりの窓口が見えてきたので、俺たちの足取りも軽くなっていた。

「んー、あれっぽいかなー」

 ゆめの問いに目のよさそうなぴょんが答えるけど、みどりの窓口前には何人かの人が立っているのは俺にも見えた。
 その中に子どもを抱いた男女もいるように見える。
 リダが言ってたようにアロハシャツっぽいの着てるように見えるし、きっとあれがリダ夫婦なんだろう。

 ついに、対面か!

「いや~~、ついにだね~~」
「そうね、あーす以外は全員集合ね」
「あ、今日はちゃんとあーすも覚えててあげたんだね~」
「き、昨日のはうっかりだからっ」

 まだリダ夫婦たちとは50mくらいの距離があるのに、既にぴょんは手を振っていた。そのぴょんに対しすれ違う人々が不思議そうな目線を送ってるけど、まぁぴょんには気にならないんだろうな。

 しかし、遠すぎんだろと思ってたんだけど、どうやらその動きにリダ夫婦たちも気づいてくれたようで、まさかのアロハシャツじゃない方、おそらく嫁キングが手を振り返していた。

「あれっぽいな!」
「いや~、嫁キングもけっこうアクティブだね~」

 その姿に笑顔を浮かべたぴょんはさらに激しく手を振り出す。
 そっからじゃ表情わかんねーぞー、とか思うけど、最早その動きに何のリアクションもないあたり、ゆめは相当ぴょん慣れしてんなー。

「リダは背が高そうですね」
「あー、そうだな。大和くらいありそうか?」

 近づいていくにつれ、分かってくる二人の姿。
 アロハシャツを着た男性は、がっしりとした体格で、おそらく大和よりもでかそうだった。水泳をやってる大和も肩幅は広いと思うが、肩幅もそれよりもでかい。
 正直イメージしてたリダは動画編集のスピードとかから眼鏡かけたインドア派の人かと思ってたんだけど、全く眼鏡要素はないし、想像以上に男前というか、強面だった。
 正面から歩いてきたら思わず道を譲りたくなるような、そんな威圧感のある感じ。
 そんな姿で笑ってるから、なんかちょっと面白い。

 対して隣にいる子どもを抱いた嫁キングも、女性にしては背が高そう。
 たぶん俺より少し小さいくらいの、160後半くらいの背丈ではないだろうか?
 でも顔立ちは優しそうというか、リダが強面過ぎるせいで余計にそれが際立つような、とにかく優しそうな顔立ちだった。すごい美人、っていうわけではないけど、話してて安心感があるような雰囲気があり、なんというか、あー、お母さんなんだなーって雰囲気が伝わってくる。
 奥さんにするならこういう雰囲気だよな、って思わせる女性である。

「よっす!」
「おう! こうして会うと、ほんと変な感じだな!」

 お互いの顔が分かるまで近づいた距離で、先手を打ってぴょんが明るく声をかけた。
 それに答えたリダはちょっとだけ訛っていたけど、よく通るいい声。栃木で生まれて栃木で育ったんだろうなってことを伝えてくる。

「遠くまで来てくれてありがとねっ。嫁キングこと、石神美香いしがみみかですっ」

 リダに続いて隣にいた女性、嫁キングも俺たちに笑顔を向けてくる。弾むような声は、こんな小学校の先生いたなー、って思い出を刺激してくるような声だった。
 しかし確かに嫁キングって呼んでるけど、彼女のキャラ名は〈Soulking〉だからな? 覚えてる?

「あ、名乗ってなかったな! 俺は石神玄一郎げんいちろう。ギルドリーダーだぞー!」

 夫婦なんだから名乗る名字が一緒なのは当然なんだけど、その自己紹介に改めてほんとに夫婦なんだなって思いが募る。
 リダ夫妻改め石神夫妻は、二人とも快活そうで、いい夫婦な雰囲気を伝えてきた。

 リダのキャラである〈Gen〉も、ゆめと同じく名前の一部だったのか。

「この子はじんくんでーすっ」

 そして嫁キングが抱えた子どもを少し高く掲げる。
 その姿に見入った女性陣に驚いてしまったか、リダjrじゃなくて、仁くんが泣き出してしまったため、女性陣が少し慌てる。嫁キングは慣れた感じであやし始めてたけど。

 ちなみに駐車場から後続を歩いてきた俺たち3人は、その光景を2歩くらい離れたところで眺めてる感じね。

 しかしほんと、赤ちゃんの頬っぺたって、なんであんなにつっつきたくなるんだろうか。
 あとで触らせてもらおうっと。

「すっごい可愛いね~」
「ほんとね」
「あははっ、ありがとねっ」
「とりあえず、あたしたちも自己紹介しよーぜっ」
「あ、そだね~~、あたしがジャックで~~す」
「わたしがゆめだよ~」
「だいです」
「あたしがぴょんだっ!」
「ゆきむらです。はじめまして」
「せんかんっす。リダたちに会えて嬉しいぜ!」
「で、俺がゼロやんね」

 流れるような自己紹介に、リダたちは笑顔で頷いていた。

「いやー、オフ会の話は聞いてたけど、ほんとイメージ通りだな! ゼロやんもせんかんも、イケメンで羨ましいな!」
「そうねっ! だいはほんとに美人だし、ゆめは可愛いし、ジャックは小さいし、ゆきむらは不思議ちゃんな感じだし、ぴょんは、うん。仲間だよっ!」
「むっ!?」

 まさかのオチに使われたぴょんだったけど、嫁キングの言葉におそらく全員の視線が嫁キングの一部に集まったと思う。
 これはね、もう生物としての本能だからね。しょうがないよね!

 いつもなら怒るぴょんも、この時ばかりは驚きの反応を見せていた。

「え、いや、でもあたしよりでっかくない?」
「子ども出来るまでは、同じくらいなかったのよっ」
「え、子どもできたら大きくなるのか!?」
「一時的みたいだけどねっ」

 完全に男性陣をスルーした会話だが、ぴょんの目がちょっと輝いていたので、ここは静観することとする。
 触らぬまな板に祟りなし。
 大和も、まるで菩薩のような目でそのやり取りを見守っていたので、取るべき対応を学んだようである。

 そんな中ちらっとだいを見る俺。背中しか見えないけど、子どもできたらだいもさらにおっきくなるのかなとか、ちょっと妄想。

「……ゼロさん、変な顔ですね」
「え?」
 
 隣に立つゆきむらが、不思議そうな顔で俺にそう告げる。
 
 か、完全に油断していたか……! 不覚!

「でもほんと、みんなに会えて嬉しいっ!」
「そうだなぁ! 仁がいるから夜までは一緒にいれないけど、今日はせっかくの宇都宮を楽しんでってくれっ!」
「楽しみだね~、ね? だい~?」
「え、うん。もちろん」
「既に脳内は餃子とみた!」
「そ、そんなことないわよっ」
「でもちょうどお昼の時間だしね~~」
「そうだな!」

 会話の流れをゆめたちに任せつつ、とりあえず聞き役に徹する俺と大和とゆきむら。
 まぁ、9人もいるとね、みんな同時に話すとか難しいからね。

 とりあえず立ち話もなんだし、みんなで昼食に移動する感じになりそうだな。
 お店の地図でも見せようとしたのだろうか、スマホをリダが取り出したところ。

「えっ!? なっちゃん!?」

 みどりの窓口前に集まってた、俺たちの方へ知らない声が飛んできたのだった。
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