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オスカーとの3
しおりを挟む「オスカーさん、徹夜明けでしたよね」
「ああ」
「元気ですね?」
「鍛え方が違うからな」
「騎士団長様ですもんね……」
この国の至宝とまで言われる騎士団長様。それは敵うはずがない。
「俺なんて脚がガクガクしてるんですけど」
横になっていても膝と内腿がガクガクする。絶対立てない。何なら下半身の感覚が鈍い。鈍いくせにズキズキとあらぬところが痛む。
何回しただろう。もう、最後は何も出さずに達していたくらいだ。
前から一回、後ろから一回、もう一度前から……ではオスカーは達しないまま横向きで……。
(まって、最初もオスカーさんはイかないまま後ろ向きにされたような……)
達する回数に二倍以上のズレがある。ひとまずオスカー基準で数えると……。
「……何回しましたっけ」
「確か、二箱目は開けたな」
「何枚入りです?」
「三、だったと思うが」
「何枚残ってます?」
「二、……いや、残ってない、か?」
「うそでしょ、絶対残ってますって。どこかに落ちてるんですよ」
「後で探す」
パタパタとベッドの上を探す暖人の手を掴み、横向きにさせると、そのまま抱き枕のように抱き締めた。
「徹夜明けだからな。寝かせろ」
「あれだけ元気だったくせに」
「使い切った。お前に絞り取られたな」
「変な言い方しないでくださいよ」
「はいはい。悪かったから、お前も寝ろ」
「しょ、初夜明けなのに雑じゃないですか?」
「恥ずかしがるなら言うな。可愛くて襲いたくなる」
「っ……、使い切ったんですよね。おとなしく寝てください」
ぐりぐりと胸元に額を擦り付ける。
「徹夜じゃなければもう一箱開けてたな」
「次も徹夜の時にしましょう」
言葉を被せてくる暖人に、くすりと笑った。
本当に、徹夜でなければもっと繋がっていられた。暖人も、思ったより体力がある。
「おやすみ、ハルト」
「……おやすみなさい、オスカーさん」
本当に眠そうな声に、暖人はおとなしくオスカーの腕の中に収まった。
それから暫し。
すぐに規則正しい寝息が聞こえ始めた。
(オスカーさんの寝顔……)
もぞ、と身動ぎして顔の見える位置まで体を離す。
何度か添い寝した事はあったが、いつも暖人が動くとすぐに目を覚ましていた。だが今は、すっかり熟睡して目覚める気配もない。
これはもしや、レアなものを拝んでいるのでは。
(……寝てても男前過ぎるってどういう)
眠っている時は無防備で可愛いとか、幼く見えるとか、あっても良いと思う。
だが、普段より格好良く見えるとはどういう事だ。
(クマがますます男の色気をダダ漏れに……)
もう、一体どういう。暖人はまじまじと見つめてしまった。
ウィリアムのように、見るだけで赤ちゃん出来そう、とドキドキする色気とは違い、目を覚ましたら孕まされる、とゾクリとするオスカーの色気。
実際はそんな事なく優しいのだが、色気だけで言うとそんな感じだ。
そんな人に今まで抱かれていたかと思うと、無意識に体の奥が疼いてしまう。いや、さすがにもう体力的に無理だが。
元の世界で調べた時、男同士は女性相手よりお互い体力を使い、何回もは無理だと知った。
だが、オスカーにすれば暖人も女性と同じように軽いのだろう。思えば最中にも軽々とひっくり返されたり、脚を抱え上げられたりした。
暖人としても、この世界にきた時に、涼佑のように体力が強化されたのかもしれない。
それか、涼佑やウィリアムに何度もイかされ続けて体力がついたのか……。
男同士の難点だった滑りが悪い事も、ローションが乾く事も、腸壁に負担を掛ける事も、全てこの世界は問題解決している。
それなら二箱使い切っても納得は出来る。
物理的には、納得出来るのだが。
(絶対どこかに落ちてるから……)
二箱全部使い切りは、さすがにない。
そこまで性欲は強くないはずだ。
起きたら探してみようと心に決めた。
オスカーに抱かれた後は、以前のようには話せなくなると思っていた。
何より自分が恥ずかしくなってしまい、今までのように言い合う事も出来ないのだろうと。
だが実際は、終わった直後から言い合ってしまった。
オスカーも返答が少し雑になって、まるでウィリアムやティア相手のように、ずっと昔から知っているように話すようになった。それが、嬉しかった。
「……オスカーさん」
呼んでも反応はない。すっかり気を許してくれている事が、また嬉しくて。
「好きです」
胸元に唇を寄せ、起こさないよう慎重に、痕をひとつだけ付けた。
目が覚めてもオスカーからは見えない位置。気付いた時、どんな顔をするだろう。
胸元へと頬を擦り寄せ目を閉じると、その暖かさにあっという間に眠りに落ちていった。
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