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オスカーとの2
しおりを挟むはふはふと荒い息を吐きながら、そっと目を開ける。
(オスカーさんが一回イくまでに、俺は……)
数えるのも悲しいくらい、我慢が利かなかった。
まだオスカーは一度だから、きっと後何回かするのだろう。そう思いながら視線でオスカーを探す。……が。
(…………しない、だと……?)
暖人の髪をくしゃりと撫でたオスカーは、あっさりとベッドから下りた。そして白磁のポットからグラスに水を注ぎ、一気に呷る。
もう一つのグラスに水を注ぎ、暖人の元へと戻ってきた。
「飲むか?」
「……はい、ありがとうございます」
暖人を抱き起こし、グラスを口元に近付ける。ウィリアムだけでなく、オスカーも飲ませ上手か。そう心の中で呟きながら適度な量とタイミングで流れ込む水を飲み下した。
乾いた喉と火照った体に、冷たい水が沁み渡る。
ふと見れば、テーブルの上には見慣れない箱が。きっと冷気の魔法石が入っているのだろう。予想以上に用意周到だった。
今体に掛けられているのも、シーツより厚めのさらりとした生地の白い布。羽毛布団は足元で小さく折り畳まれている。
二人でシーツのようなものを掛け、寄り添っている。
(……すごく、事後っぽい)
いや、その通りなのだが。
水を飲み干し、ふう、と息を吐く。そして、ナイトボードにグラスを置くオスカーをジッと見上げた。
「なんだか、オスカーさん」
「ん?」
「男同士のえっち、って感じです」
「どういう意味だ?」
「元の世界にいた頃のイメージなんですけど、男らしくてさっぱりしてるというか、いい運動したなーって感じがします」
「……それは、いい意味か?」
「はい。すごく気持ち良かったですし、すっきりしました」
特に焦らされる事もなく、たっぷり気持ち良くなって好きなだけ達して性欲発散した、という感覚。
終わった後もベタベタせずにさっぱりしている。これが元の世界で、他の男同士はこうなんだろうなと抱いていたイメージだ。
男はわりと出してしまえばすぐに冷静になるところがある。涼佑と殆ど触れ合えなかった元の世界では、一人で抜いて、スッと冷静になる感覚を何度も味わった。ナカで達した時は、余韻が続くのだが。
だからといってオスカーが冷たいわけではなく。
ぽす、と肩に頭を乗せると、優しく撫でられ髪にキスが落ちる。ちゃんと恋人らしい甘さもあるのだ。
三人とも性格が出ていて、みんな好きだな、と頬を緩めた。
「あの二人はそうじゃないのか」
「さっぱりはしてないですね。涼佑とウィルさんだったら、今頃はまだ挿れられてもないです」
「は? その間、何をしてる?」
「触られてます」
「……お前が、か」
「はい。感じる部分全部、徹底的に触られます」
「……つらいだろ」
オスカーは哀れむ目をした。
「正直、つらいです。けど……嫌では、ないんです。愛されてるなあって嬉しい気持ちはありますし……気持ちいい、ですし」
ただ、涼佑は泣くまで焦らされるしいじわるがつらい。……焦らされてからの絶頂は、途方もなく気持ちが良いけれど。
ウィリアムは、イかされすぎてつらい。……褒められすぎるし愛されすぎて、心が満たされるけれど。
(……だけど正直、気持ちいいのは好き、だと気付いてしまった……)
この世界に来てから、気付いてしまった。気付きたくなかった。
気持ち良い事が好きで三人の恋人に溺愛される浄化の力を持つ聖女キャラなんて、どんな男性向けゲームだ。
一息つくと、思った以上にさっぱりした気分だった。あれだけ達してはいるのだが……。
「その分、まだ体力残ってるんですけど」
ちらりとオスカーを見上げる。
「そうか。俺もだ」
「だと思いました」
そっとオスカー自身に触れると、当然まだまだ元気そうだ。
「そこで確認するのか」
「一番確実ですよね。でも、オスカーさんにだけですよ」
こんなにも恥ずかしげもなく触れるのも、普段通りに話しながら誘えるのも。
そっと手のひらで撫でると、ぴくりと反応する。それが嬉しくて、もみもみと揉んでは撫でた。
「怖いってぴーぴー泣いてたくせにな」
「泣いてないですし」
「次は俺の上で鳴いてみるか?」
「っ……、む、むりですっ」
“上”の意味を察し、パッと手を離した。
そんな体位、あれがもっと奥まできてしまう。奥の、その先まで……。
それはまだ無理、ともぞもぞと上掛けの下に肩まで埋まり、仰向けで横になった。
「無茶すると怒られますし、おとなしくオスカーさんの下にいます」
「それはそれで斬新な誘い文句だな」
両手を伸ばす暖人にクッと笑い、喜んで誘われるままに唇を塞いだ。
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