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*そちらはもはや
しおりを挟むキスの間に服を全て脱がされ、一糸纏わぬ姿でベッドへと押し倒される。
オスカーも服を脱ぎ捨て、その姿を、ついジッと見つめてしまった。
(すごく逞しい筋肉……と、傷痕……)
腕や肩に残る、古い傷痕。
騎士として戦場で戦った、生きてきた証だ。
暖人の視線に気付き、オスカーは少し困ったような顔をした。
「ウィルにもあっただろ。俺たちにとっては大した事じゃない。だから、そんな顔するな」
今にも泣きそうな暖人の目元へ、啄むようなキスをする。
幼い頃から騎士になるべく生きてきた。こんな傷は傷のうちにも入らない。当然として生きてきたからだ。
……だが、こうして自分の為に悲しい顔をしてくれる人がいるというのも、悪くはない。
「お前が泣くと思うと、あまり無茶は出来ないな」
頬を撫でると、その手に擦り寄ってくる。そうですよ、と言うように見上げ、手のひらに唇を押し付けた。
暖人に出逢うまで、こんな気持ちは知らなかった。
こんなにも愛しく、大切で……。
「お前が泣くのは、俺の下だけでいい」
笑うのも泣くのも、全て自分の手でさせたいと思う、こんな気持ちは。
「っ、その顔で言うのは反則ですよっ」
暖人は途端に頬を染め、オスカーの顔をグイグイと押し返した。
あまりにも言いそうな顔でそんな事言わないでほしい。うっかり頷きそうになってしまった。
「そうか。それなら、有効に使わせて貰うか」
「ちょっ……、手!」
「こら、目を閉じるな」
「開けるから手を離してくださいっ」
両手首をベッドに押さえ付けられ、間近で見下ろすオスカーから目を閉じて逃げる。
(あまりにも年齢指定っ……)
逞しくも色気溢れる肌を晒す、異世界級俺様顔イケメン。
仄かな暖色の灯りに照らされ陰になった顔は、ますます男の色気が溢れて見るだけで体が熱を持ってしまう。
頑なに目を閉じぷるぷると震える暖人に、オスカーはそっと口の端を上げた。
やはり暖人は、こうして恥ずかしがって騒いでいる方が良い。悲しい顔も、泣きそうに笑う顔も見たくない。
「離しても開けないくせにな」
「無理でした」
手を離すと一瞬目を開けたものの、またぎゅっと閉じてしまう。その瞼にキスをすると、びくりと震えそっと目を開いた。
「何されるか見えない方が、良くなかったです」
「ふ、正解」
小さく笑い、目元を手で覆い視界を奪う。そのまま腰を撫でると、ひゃっ、と鳴いて、次には怒った声でオスカーの名を呼んだ。
・
・
・
「ふぁっ、ぁ……だめ、そこっ……指、だめぇっ」
身を捩り、快楽から逃れようと上へとずり上がる。
「こら、逃げるな」
「やっ……だめっ、あっ、ああっ」
逃れようとしても、腰を掴み引き戻される。そしてまた後孔に指を埋められ、もう片手は胸の尖りを摘まれた。
「ひゃっ、やだっ……、オスカーさんの指、だめっ、ッひゃんっ」
爪先で胸を引っ掻かれ、おかしな声を上げてしまった。
両手で口を塞ぎ、ぷるぷると震える。
「可愛い声だな」
「っ! っ~!」
「睨むな。可愛くて困る」
「!」
本気で困ったような顔をされ、うっかり可愛いなと思ってしまった。
そうだった。オスカーの弱った姿を見ると、何でもしてあげたくなるのだった。
……だが、今はそうもいかない。
「ひんッ、ひゃ、ぁっ、だ、だめっ……」
両手を口から軽々と引き離すと、また胸の尖りを摘み始めた。摘んでは撫で、引っ掻き、弾いたり押し潰したり。
こちらが何でもする必要もなく、好き勝手されている。
オスカーの指は危険だ、駄目だと言っても、胸は弱いから駄目だと言っても。
「駄目じゃないだろ」
そう言って、やめてくれない。
涼佑と同じだ。暖人の駄目はもっとしてだと思っている。それに、本気で嫌がっていない事を見抜いているのだ。
確かに、殴って逃げたいほど嫌ではないが……。
(でも、本当にだめなんだってばっ……)
「んんっ、んゃっ、っ……ッ」
下肢からは何も出さずに達した感覚だけが襲う。
こうなるから駄目だった。ナカに入れられた指は解すだけの動きでも、胸を触れれば達してしまう。
(だめ……出さずにイくの、だめ……)
ずっと気持ちが良くて。ずっと達しているようで。
指が胸から離れても、腹や腿の感じる場所を撫でられる。目印でも見えているのかと疑う程、的確に。
だがきっとこれでも手加減してくれているのだ。あのオスカーの指に触れられて、これで済むはずがない。
きっと初めてだから、オスカーなりに気を遣ってくれている。
そこでふと、快感が止んだ。
膝を持ち上げられ、暖人は目を瞬かせる。
「いいか?」
「え……」
「駄目か?」
「えっ、いえ、大丈夫です」
慌てて了承した。
あちこち触られたにしても、涼佑やウィリアムより、随分と早い。
焦らすというより、ただ感じさせてくれただけというような、そんな。
(……まって、そういえば、オスカーさんって……)
今になって、大事な事を思い出してしまった。
後孔に熱いものが触れ、グッと押し込まれて。
「っ、まって、まって……! オスカーさんの、おっきくて入らないっ……」
慌ててオスカーの胸を押し返した。
「……煽ってるのか?」
「違います!」
「違うのか」
「はい、……いえ、挿れますよ……挿れたいです、でも……」
ちらりと下へと視線を向ける。
「成長したそちらはもはや凶器というレベルでは……?」
「どうした、饒舌だな」
「少しサイズダウンしていただけたらと」
「無理だろ」
「ですよね……」
そっと視線を逸らした。
寸止め状態で大変申し訳ない気持ちはある。抱く側を知らなくとも、同じ男としてこの状態で待つのがつらい事は分かるつもりだ。待ってくれるオスカーに感謝しかない。
「心配するな。お前に痛い思いはさせない」
「っ……、かっこいい、けど怖いんです……」
「何が怖い?」
「……おっきくて」
「それが何故怖い?」
「……痛そう、で……?」
ふと首を傾げた。
言われてみれば、何が怖いのだろう。
大きさやゴツゴツした見た目は目を閉じてしまえば分からない。それ自体はオスカーのものだから怖くはない。口で舐める事には抵抗もなかったのだから。
内臓を潰されるような圧迫感……は、涼佑とウィリアムにたくさん抱かれて多少慣れ、怖いとまではいかない。
たっぷり慣らされれば裂ける事もないと実証済みでもある。
怖いのは、痛そうなくらい?
あれ、と目を瞬かせオスカーを見上げた。
「痛い思いはさせない。痛みがなければ、怖くないだろ」
「……はい。騒いですみません……」
「気にするな。無理をさせてるのは俺の方だからな」
目元にキスをして、宥めるように髪を撫でる。
途中で止められ怒っても良いところなのに、こんなにも優しくて……。
「……今、すごく抱かれたいです」
「そうか」
躊躇いながらオスカーの背へそっと腕を回すと、褒めるようにくしゃりと髪を撫でられた。
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