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*二人きりで話を:オスカー3

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※R15


「そろそろ時間か」

 二人きりの時間は普段より長い方だと思っていたが、残り少なくなると途端に名残惜しくなる。
 もっと触れていたい。
 もっと、暖人はるとの声を聞きたい。
 もっと……。

「ハルト」
「はい」
「すまない」
「え? んっ、んぅっ、えぅっ……」

 腰を抱かれたかと思うと、突然口の中に指を押し込まれる。
 言葉を発する前に長い指で舌を捕らえられ、性急に刺激を与えられた。

「やっ……、んんっ、っぁ……ふぁ、っ……」

 舌の次は弱い上顎を擽られ、また舌へと戻る。そしてまた上顎を。内側から頬を撫でられる感覚にもびくりと震え、オスカーの上に乗り上げたまま服を掴みぎゅっと目を閉じた。

「んンッ、ぁっ、んぅ……」

 ぐちゃぐちゃと卑猥な水音が響き、耳を塞ぎたくなる。こんな真っ昼間の、青空の下で。いつ誰が通りかかるとも分からない場所で、こんな……。

「ふ、っ……ッんぁっ、ぁ、ッ」

 突如背筋に電流が走るような感覚が襲い、ビクンと大きく跳ねた。
 そのまま何度か身を震わせたところで、漸く咥内から指が抜かれる。


 暖人は口を薄く開いたまま、はふはふと荒い呼吸をしている。頬も赤く、首筋まで染まって。

「……悪かった。やりすぎたな」

 ここまでするつもりはなかったと言って、信じて貰えるだろうか。
 見つめる先で、暖人はゆるゆると瞼を持ち上げ、そっと視線を伏せた。

「……いえ。自分でもちょっと、過敏すぎて、引いてます……」
「俺は引いてはいない」
「ありがとうございます。本気で安心しました」

 まだ力が入らないまま、何とか手を伸ばしおしぼりを取る。その布でオスカーの手を拭きながら、内心で頭を抱えた。

 ウィリアムのキスもだが、口の中を触られただけでも軽く達してしまうとはどういう事だ。それも、一度ならず二度までも。

「……俺、こんなでちゃんとオスカーさんと出来るんでしょうか」
「屋敷に来た時には、加減をする。今ので感覚は掴めたから安心してくれ」
「オスカーさんって、優しいですよね」
「そうか?」
「はい。そんなところも好きです」

 会話の流れではさらりと言える。
 自分でもさすがにこれは早すぎで感じすぎ、と引いたところも気にせずにいてくれる。

(好き、だな……)

 改めて思う。
 オスカーの優しさも、強引なところも、全部が好きだ。
 子供のように拗ねて当たってしまっても、不快に思うどころか楽しんでくれる。ウィリアムとはまた違った意味で懐が広く男らしくて、格好良い。
 ぎゅうっと抱きつき頬を擦り寄せると、大きな手が優しく頭を撫でてくれた。



 そのまま暫し抱き合っていると、ふいに足音がした。

「時間だけど、……ハルト、随分積極的だね?」

 オスカーの膝を跨いで座り、首に腕を回した体勢。ウィリアムには一瞬、行為の最中に見えてしまった。

「え? あっ……」

 暖人もその事に気付き、オスカーの上から下りようとする。だがオスカーの手はグッと暖人の腰を引き寄せた。

「ハルト。戻る前に着替えるか?」
「ふぁっ、っ~~! そうですねっ?」

 ぐり、と腰を押し付けられ、変な声を上げてしまう。
 顔を真っ赤にしながら今度こそオスカーの膝から下り、下着を掴んで噴水の陰まで足早に向かった。


 残された二人は、キラキラと太陽の光を弾く噴水を見つめる。

「……俺も、ハルトに上に乗って貰いたかった」
「今度やって貰え」
「そうだね。……最初からそれはハルトの負担が大きいだろうか」
「待て。何の話をしている」
「上に乗って貰いたい話だよ」

 そう言って暖人のいる方を見つめる。噴水の向こうでは、暖人は今服を脱いでいるのだろう。

「……妄想なんて、ハルトに出逢うまでした事がなかったな」
「ウィル、お前、大丈夫なのか?」
「ここまで我慢出来た自分を褒めたいよ」
「後少し頑張れ。ここで気を抜いたらリョウスケにハルトを連れて行かれるぞ」
「……そうだな」

 ジッと一点を見つめ続けるウィリアム。

「……屋外は、まだハルトには早いか」

 ぼそりと呟く。その目は遥か遠くを見つめていた。
 さすがにオスカーも同情した。性的な事に興味のなかったオスカーと違い、欲求を覚える前に与えられ続けたウィリアムにとっては、この半年間はつらかっただろう。
 暖人の存在だけで満たされるとはいえ、愛しいと思えば思う程に体はつらくなる。想いが通じた今は更に生殺しだ。

「俺は後でいい。ウィル、頑張ってリョウスケを説得しろ」
「いいのか?」
「ああ」

 暖人の身の安全の為にも。内心でそっと呟いた。
 そんな会話が繰り広げられているとは知らない暖人は、汚れた下着を隠しながら、恥ずかしそうにこちらへと戻ってくる。出来る事なら今すぐ押し倒したい、と思うのはオスカーも同じ。

 ウィリアムを窺うと、もう見事に普段通りの穏やかな笑みに変わっていた。
 まだそんな顔を作れるなら大丈夫だと安堵しながらも、これ以上煽ってくれるなと、もじもじする暖人を見つめこっそりと息を吐いたのだった。

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