136 / 168
*二人きりで話を:オスカー3
しおりを挟む※R15
「そろそろ時間か」
二人きりの時間は普段より長い方だと思っていたが、残り少なくなると途端に名残惜しくなる。
もっと触れていたい。
もっと、暖人の声を聞きたい。
もっと……。
「ハルト」
「はい」
「すまない」
「え? んっ、んぅっ、えぅっ……」
腰を抱かれたかと思うと、突然口の中に指を押し込まれる。
言葉を発する前に長い指で舌を捕らえられ、性急に刺激を与えられた。
「やっ……、んんっ、っぁ……ふぁ、っ……」
舌の次は弱い上顎を擽られ、また舌へと戻る。そしてまた上顎を。内側から頬を撫でられる感覚にもびくりと震え、オスカーの上に乗り上げたまま服を掴みぎゅっと目を閉じた。
「んンッ、ぁっ、んぅ……」
ぐちゃぐちゃと卑猥な水音が響き、耳を塞ぎたくなる。こんな真っ昼間の、青空の下で。いつ誰が通りかかるとも分からない場所で、こんな……。
「ふ、っ……ッんぁっ、ぁ、ッ」
突如背筋に電流が走るような感覚が襲い、ビクンと大きく跳ねた。
そのまま何度か身を震わせたところで、漸く咥内から指が抜かれる。
暖人は口を薄く開いたまま、はふはふと荒い呼吸をしている。頬も赤く、首筋まで染まって。
「……悪かった。やりすぎたな」
ここまでするつもりはなかったと言って、信じて貰えるだろうか。
見つめる先で、暖人はゆるゆると瞼を持ち上げ、そっと視線を伏せた。
「……いえ。自分でもちょっと、過敏すぎて、引いてます……」
「俺は引いてはいない」
「ありがとうございます。本気で安心しました」
まだ力が入らないまま、何とか手を伸ばしおしぼりを取る。その布でオスカーの手を拭きながら、内心で頭を抱えた。
ウィリアムのキスもだが、口の中を触られただけでも軽く達してしまうとはどういう事だ。それも、一度ならず二度までも。
「……俺、こんなでちゃんとオスカーさんと出来るんでしょうか」
「屋敷に来た時には、加減をする。今ので感覚は掴めたから安心してくれ」
「オスカーさんって、優しいですよね」
「そうか?」
「はい。そんなところも好きです」
会話の流れではさらりと言える。
自分でもさすがにこれは早すぎで感じすぎ、と引いたところも気にせずにいてくれる。
(好き、だな……)
改めて思う。
オスカーの優しさも、強引なところも、全部が好きだ。
子供のように拗ねて当たってしまっても、不快に思うどころか楽しんでくれる。ウィリアムとはまた違った意味で懐が広く男らしくて、格好良い。
ぎゅうっと抱きつき頬を擦り寄せると、大きな手が優しく頭を撫でてくれた。
そのまま暫し抱き合っていると、ふいに足音がした。
「時間だけど、……ハルト、随分積極的だね?」
オスカーの膝を跨いで座り、首に腕を回した体勢。ウィリアムには一瞬、行為の最中に見えてしまった。
「え? あっ……」
暖人もその事に気付き、オスカーの上から下りようとする。だがオスカーの手はグッと暖人の腰を引き寄せた。
「ハルト。戻る前に着替えるか?」
「ふぁっ、っ~~! そうですねっ?」
ぐり、と腰を押し付けられ、変な声を上げてしまう。
顔を真っ赤にしながら今度こそオスカーの膝から下り、下着を掴んで噴水の陰まで足早に向かった。
残された二人は、キラキラと太陽の光を弾く噴水を見つめる。
「……俺も、ハルトに上に乗って貰いたかった」
「今度やって貰え」
「そうだね。……最初からそれはハルトの負担が大きいだろうか」
「待て。何の話をしている」
「上に乗って貰いたい話だよ」
そう言って暖人のいる方を見つめる。噴水の向こうでは、暖人は今服を脱いでいるのだろう。
「……妄想なんて、ハルトに出逢うまでした事がなかったな」
「ウィル、お前、大丈夫なのか?」
「ここまで我慢出来た自分を褒めたいよ」
「後少し頑張れ。ここで気を抜いたらリョウスケにハルトを連れて行かれるぞ」
「……そうだな」
ジッと一点を見つめ続けるウィリアム。
「……屋外は、まだハルトには早いか」
ぼそりと呟く。その目は遥か遠くを見つめていた。
さすがにオスカーも同情した。性的な事に興味のなかったオスカーと違い、欲求を覚える前に与えられ続けたウィリアムにとっては、この半年間はつらかっただろう。
暖人の存在だけで満たされるとはいえ、愛しいと思えば思う程に体はつらくなる。想いが通じた今は更に生殺しだ。
「俺は後でいい。ウィル、頑張ってリョウスケを説得しろ」
「いいのか?」
「ああ」
暖人の身の安全の為にも。内心でそっと呟いた。
そんな会話が繰り広げられているとは知らない暖人は、汚れた下着を隠しながら、恥ずかしそうにこちらへと戻ってくる。出来る事なら今すぐ押し倒したい、と思うのはオスカーも同じ。
ウィリアムを窺うと、もう見事に普段通りの穏やかな笑みに変わっていた。
まだそんな顔を作れるなら大丈夫だと安堵しながらも、これ以上煽ってくれるなと、もじもじする暖人を見つめこっそりと息を吐いたのだった。
67
お気に入りに追加
1,796
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
【完結】もふもふ獣人転生
*
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。
ちっちゃなもふもふ獣人と、攻略対象の凛々しい少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。
本編完結しました!
おまけをちょこちょこ更新しています。
第12回BL大賞、奨励賞をいただきました、読んでくださった方、応援してくださった方、投票してくださった方のおかげです、ほんとうにありがとうございました!
兄たちが弟を可愛がりすぎです
クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!?
メイド、王子って、俺も王子!?
おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?!
涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。
1日の話しが長い物語です。
誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。
トップアイドルα様は平凡βを運命にする
新羽梅衣
BL
ありきたりなベータらしい人生を送ってきた平凡な大学生・春崎陽は深夜のコンビニでアルバイトをしている。
ある夜、コンビニに訪れた男と目が合った瞬間、まるで炭酸が弾けるような胸の高鳴りを感じてしまう。どこかで見たことのある彼はトップアイドル・sui(深山翠)だった。
翠と陽の距離は急接近するが、ふたりはアルファとベータ。翠が運命の番に憧れて相手を探すために芸能界に入ったと知った陽は、どう足掻いても番にはなれない関係に思い悩む。そんなとき、翠のマネージャーに声をかけられた陽はある決心をする。
運命の番を探すトップアイドルα×自分に自信がない平凡βの切ない恋のお話。
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談? 本気? 二人の結末は?
美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
「トリプルSの極上アルファと契約結婚、なぜか猫可愛がりされる話」
悠里
BL
Ωの凛太。オレには夢がある。その為に勉強しなきゃ。お金が必要。でもムカつく父のお金はできるだけ使いたくない。そういう店、もありだろうか……。父のお金を使うより、どんな方法だろうと自分で稼いだ方がマシ、でもなぁ、と悩んでいたΩ凛太の前に、何やらめちゃくちゃイケメンなαが現れた。
凛太はΩの要素が弱い。ヒートはあるけど不定期だし、三日こもればなんとかなる。αのフェロモンも感じないし、自身も弱い。
なんだろこのイケメン、と思っていたら、何やら話している間に、変な話になってきた。
契約結婚? 期間三年? その間は好きに勉強していい。その後も、生活の面倒は見る。デメリットは、戸籍にバツイチがつくこと。え、全然いいかも……。お願いします!
トリプルエスランク、紫の瞳を持つスーパーαのエリートの瑛士さんの、超高級マンション。最上階の隣の部屋を貰う。もし番になりたい人が居たら一緒に暮らしてもいいよとか言うけど、一番勉強がしたいので! 恋とか分からないしと断る。たまに一緒にパーティーに出たり、表に夫夫アピールはするけど、それ以外は絡む必要もない、はずだったのに、なぜか瑛士さんは、オレの部屋を訪ねてくる。そんな豪華でもない普通のオレのご飯を一緒に食べるようになる。勉強してる横で、瑛士さんも仕事してる。「何でここに」「居心地よくて」「いいですけど」そんな日々が続く。ちょっと仲良くなってきたある時、久しぶりにヒート。三日間こもるんで来ないでください。この期間だけは一応Ωなんで、と言ったオレに、一緒に居る、と、意味の分からない瑛士さん。一応抑制剤はお互い打つけど、さすがにヒートは、無理。出てってと言ったら、一人でそんな辛そうにさせてたくない、という。もうヒートも相まって、血が上って、頭、良く分からなくなる。まあ二人とも、微かな理性で頑張って、本番まではいかなかったんだけど。――ヒートを乗り越えてから、瑛士さん、なんかやたら、距離が近い。何なのその目。そんな風に見つめるの、なんかよくないと思いますけど。というと、おかしそうに笑われる。そんな時、色んなツテで、薬を作る夢の話が盛り上がってくる。Ωの対応や治験に向けて活動を開始するようになる。夢に少しずつ近づくような。そんな中、従来の抑制剤の治験の闇やΩたちへの許されない行為を耳にする。少しずつ証拠をそろえていくと、それを良く思わない連中が居て――。瑛士さんは、契約結婚をしてでも身辺に煩わしいことをなくしたかったはずなのに、なぜかオレに関わってくる。仕事も忙しいのに、時間を見つけては、側に居る。なんだか初の感覚。でもオレ、勉強しなきゃ!瑛士さんと結婚できるわけないし勘違いはしないように! なのに……? と、αに翻弄されまくる話です。ぜひ✨
表紙:クボキリツ(@kbk_Ritsu)さま
素敵なイラストをありがとう…🩷✨
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる