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*三つの箱:オスカー2
しおりを挟むそこで暖人は、ふと思う。
ウィリアムにした事をオスカーにもした方が良いのだろうか、と。
(でも、この流れからどうすれば……)
もう我に返った後だ。それに、服の上から見たところ反応していないようで。
「……」
「どうした?」
「いえ、何でも……」
「言いたい事があるなら遠慮せずに言え」
「遠慮ふぇじゅっふぇ、っ」
頬を揉んでいた手でむにむにと口を摘まれ、鳥のくちばしのようにされてしまう。
言えって言ったくせに、と不機嫌な顔をしてみせると、楽しげに目を細めたオスカーはもう一度頬を揉んでから手を離した。
「ほら、言ってみろ」
「顔の形が変わったらオスカーさんのせいですからね……。ウィルさんにしたことをオスカーさんにもしていいかどうか、考えてたんです」
溜め息混じりに答える。
いや、答えてしまった。
「ウィルは良くて俺だと駄目なのか?」
「え、っと……」
「大概の事ではもう驚かないぞ」
さあ言えとばかりの顔をする。
それでも暖人は何度も迷いながら、そっとオスカーの“そこ”へと視線を向けた。
「オスカーさんの、……口で、駄目かなと……」
語尾は消え入ってしまう。驚かないと言ったオスカーも、さすがにこれには一瞬理解するのが遅れた。
「…………ウィルには、したのか?」
「はい……」
もごもごしながら、ウィリアムが反応している事に偶然気付き、暖人から申し出て了承して貰ったと説明する。
「なるほど……?」
いや、どんな状況だ。それも何故口で。手でも良いだろう。
暖人にとことん弱いウィリアムは、押し切られたか相当理性を殴られる事があったのだろうと想像した。
暖人の世界では、相手は一人に決められている。
いくら合意とはいえ、本来の相手である涼佑に無断で抱く事は、暖人をあまりにも大切にしてるウィリアムがする筈がない。
口ならそれよりは、という事か。いや、口での奉仕が許容範囲内かどうかは、暖人の世界を知らないオスカーには分かりかねるが。
「口か」
正直この時点で、許される事なら暖人を押し倒したいと思っている。好きな相手にこんな事を言われれば当然の反応だろう。
俯いている暖人の顎に手を掛け、ジッと見つめる。
暖人の、唇を。
この小さな口で何が出来たというのか。
つい先日まで、顔を見るだけでも真っ赤になって逃げていたくせに。口で、とは。
ウィリアムのそれを、一体どんな顔で?
「オスカーさん……んっ、う?」
暖人の唇を何度か撫でた親指を、そのまま口の中へと押し込む。
目を瞬かせる暖人を見下ろし舌の表面を撫でると、それだけでびくりとして奥へと逃げた。
「っ、おふはぁ、はっ……う、ぇぅっ」
逃げる舌を追い二本の指で捕まえ、軽く引きながら反応する場所を撫でる。涙目で名を呼びながら体を小刻みに震わせる暖人に、ぞくりと快感が沸き起こった。
舌先も裏も根元も上顎も、擽るように撫でる。
見下ろす先で暖人は口の端から飲み込み切れなくなった唾液を垂らしながら、くぐもった喘ぎを零した。
執拗に責め続ければ、潤んだ瞳から涙が落ちる。その様にオスカーは目を細め、濡れた目元へと唇を寄せた。
「ふぇっ、んくっ、んっ、うーっ!」
びくりと大きく跳ねた暖人は、ぎゅっと目を閉じ、渾身の力でオスカーの肩を叩いた。
その後もベシベシとダメージのない力で叩かれ、オスカーは漸く咥内から指を抜く。
「口でしてくれるんだろ?」
「~~っ!」
そっちじゃないです! と声もなく怒鳴る。叩いても今度はもう、ぺちぺちと可愛い攻撃にしかならない。
オスカーの事を、絶対動物を撫でるのが上手だと思っていたが、この指はこんな危険も孕んでいたとは。
(この指、怖い……)
ただの指。たった二本指。それも口の中を触られただけだ。
ウィリアムとは違う恐ろしさを感じ、ぶるっと体を震わせた。
「最後まではしないが、俺がお前に触るのは駄目か?」
「触っ……?」
「お前のそれを手で触るだけだ」
それ、と示された先には、夜着越しに存在を主張しているものが。
「わっ、嘘っ……、俺はいいです、放っておけば収まりますからっ」
「そうか、手が嫌なら口にするか?」
「っ、手がいいですっ」
「分かった」
ひょい、と暖人を抱えるオスカーに、やられた! と暖人は呻く。
突拍子もない事を言われて慌てた時にあの二択は狡い。……と、いつも更に突拍子もない言動をする暖人は思いながら、落ちないようオスカーにしがみつくしかなかった。
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