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王宮4

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 ……そうだ、事務的に話せば良いだけだ。暖人はるとはひらめいた。

「え、っと、地下への入り口ですけど」

 地下への扉は、屋敷に向かって右側の温室にあった。
 背の高い植物が育てられている温室の奥、天使の彫像の右羽を下へ動かして開けていた。
 契約書の入っている金庫は、執務室の本棚の向かって右奥、一番下の本の奥に隠されている。

「そこまで見えるとは……」
「俺たちのやる事はないね」

 二人は苦笑した。

「他の二人の事は見えなかったか?」
「すみません……。もしかしたら、実際に会った人じゃないと見えないのかもしれません」

 超能力系の本にそんな設定があった。
 謝る暖人の頭を、オスカーがポンポンと撫でる。驚いて見上げると、ウィリアムが横から手を伸ばし、暖人の顔を自分の方へと向けさせた。

「ハルト。君のおかげでこの国は救われるよ。心から感謝する」

 ウィリアムが暖人の手を取り、指先にキスをする。彼は度々この仕草をする為、何かの証かただのキスか分からなかった。


 だが、もうひとつ言わなければならない事がある。

「あの……。週明けには運び出すそうです……。それと、討伐が成功したら、先程の男性は皇帝の側近に取り立てられるそうで……」

(何だろう、この、推理小説の最後をネタバレするような罪悪感は……)

 ちくちくと胸が痛む。別に悪い事を言ったわけではないのに。
 そっと二人を見上げれば、珍しく口が開くほど驚いていた。

「……まずは、陛下に報告だな」
「そうだね……」

 二人はハッとして、力なく言葉を零す。

「俺、何かいけないこと言いましたか?」
「いや、ただ驚いただけだよ。ハルトの能力の高さにね」

 ウィリアムは困ったように笑う。救世主の力を目の当たりにして、鳥肌すら立ってしまった。

「今の間にそれだけの事が見えたのか」
「はい。一気に脳に捩じ込まれる感じで、ちょっと気持ちが悪くなりましたけど」
「何……? それを早く言え」

 オスカーが突然暖人をソファに寝かせる。

「ハルト、水は飲める? 他に何か欲しいものはあるかい?」
「えっ、いえ、病気じゃないのでもう大丈夫で……」
「お前は無理をしながらも隠そうとするだろ」
「そんなことは……」
「謁見はまた別の日にして貰えるよう、頼んでくるよ」
「ああ」
「ちょっ、と、待ってください! もう大丈夫ですからっ、王様って忙しい人ですよね? 早く行きましょうっ?」

 起き上がると、ウィリアムが背を支える。
 立ち上がろうとすると、オスカーが手を差し出した。

(ただ、王様に会いに来ただけなのに……)

 今日はスチル回収日なのか。
 俺は、こんな展開望んでない……。
 突然始まったフラグ祭りに、暖人は頭を抱え呻いた。

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