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*その晩3

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「ひぅっ、んっ、んんっ」

(またイっちゃった……)

 言葉通りにアールにひとつひとつ大切に触れられ、愛し尽くされている。
 今度は全身にキスされながら自身を擦られて。ただ、体力温存のために根元を指で戒められて、出してはいなかった。

 出していないから、熱が体の中で渦巻いてつらい。つらいけれど、アールに愛されるのは嬉しい。嬉しいけれど……早くアールが欲しくて、押し倒してしまいそうだった。

(だめだめ、今の俺は、従順な妻ポジション……)

 おとなしく、と自己暗示をかけて全身の力を抜く。


「うひゃあっ!」

 その隙にぬるりとしたものが後孔に滑り込み、咄嗟に声を上げた。

「ふっ、色気のない声だな」
「元気でごめんなっ」
「ああ。可愛くて困る」
「っ、もうっ、そういう~っ、ひゃぁんッ」

 ナカに埋めた指をぐるりと動かされ、高い声を上げてしまう。

「ここが一番元気な声が出るな」
「ひっ、あッ、あ――ッ!」

 数回前立腺を突かれただけでまた達する。何も出さずにナカだけで達し、ずっと達する感覚が止まらない。

「イきっ……ぱな、し……つらぁ……」

 全身で感じさせられ、焦らされて、触れられていないナカも敏感になっている。それなのに、強い刺激を与えられてはたまらない。


「……今、挿れたら」
「!」

 低く呟かれた声に、身体が大袈裟に震えた。

「心配するな。今日は性急にはしない」

 優しく髪を撫でられ、額に口付けられる。指も止まり、ただ馴染ませるために中に留まった。

(今、挿れられたら……意識、飛んじゃうかも)

 きっと一気に絶頂どころではない。目が覚めても、理性が飛んで何をしてしまうか分からない。


「……でも、もう挿れてほしい」

 無意識に本音が零れ、ハッとして口を覆った。しっかりと聞こえたアールは、輝かんばかりのとても良い笑顔を見せる。

「ああ、分かっている。ここは触れていないのに、ぐずぐずになっているからな」
「そういうのは声にしなくていいんだよっ」

 ぺちぺちと肩を叩くと、アールはその手を取り愛しげに手のひらに口付けた。

「突然王子様出してくる~っ」

 文句を言うと、ふっと蕩けるような笑みが返ってきた。

「優しくする」
「ンッ……!」

 王子様に相応しい柔らかな笑みに、心臓がどくんっと跳ねる。日に日に新しい魅力を身に付けるアールに、そろそろ自分の心臓は止まってしまうのではと本気で心配していた。


 心臓はともかく、話しているうちに多少は体の方が落ち着いた。後孔に固いものが触れ、ゆっくりと押し挿れられる。痛みも抵抗もなく、一番太い場所を飲み込んだ。
 全身で感じて、ソコはもうずっとアールを待ちわびていた。そして。

(お風呂で自分でしました、とか言えない……)

 絶対に抱かれると分かっていたから頑張ってみた。どちらかが我慢出来ずに、すぐに挿れてもいいように。そしてアールも、まさか風真が自分で慣らしているとは思わなかった。

(この奥は出来てないけど……ほんと、ぐずぐずだ)

 半ばまで進んでも柔らかくアール自身を包み込む。アールが欲しくて、体も心も全部が蕩けていた。


「はっ、ぁ……あ、うぅっ……」

 ただ、ゆっくりされる方がつらい。

「っ……」

 ぎゅうぎゅうとナカを締め付けてしまい、アールも小さく呻いた。
 アールはまだ一度も出していない。その状態で堪えていられるのは、今日までの経験と、風真を大切にしたいという気持ちだった。

(俺より、アールの方がつらい……)

 いっぱい大切にして貰った。もう、充分だ。

「おくっ……おく、突いてぇっ」

 背に腕を回し、ぎゅうっと抱きつく。

「っ、だが」
「もう、アールがほしくて……つらい」
「くっ……」

 意図して内壁を締めると、アールが声を漏らした。

「ね……俺のおくまで、愛し尽くして……?」

 理性はもう、飛んでいたのかもしれない。甘えた声でねだり、煽るように腰を揺らした。


「っ……」
「ひぅッ! んあっ、ッ――……!」

 ぐぷ、と体内で音が鳴る。奥深くまで貫かれ、一瞬意識が飛んだ。

「ァ……、ぁ、ひ……っ」

 揺さぶられる衝撃で意識が引き戻される。ナカを擦る動きは止まらず、奥深くを抉られる度に、風真自身から色の薄い体液が吹き出した。

「あ、は……アールっ、あ、あぅッ」

 肩に噛みつかれ、痛みさえも快感に変わる。もっと、とアールの背に爪を立てれば、望む通りに与えられた。

「フウマっ……、フウマっ」

 身動きが取れないほどに抱きしめられ、腰を打ち付けられる。
 本能のままに、求めてくれる。

 伴侶になった最初の夜は、たくさん愛されたかった。
 理性で、本能で、アールの全てで、愛してほしかった。
 その全てを満たされ、歓びのままにアール自身を締め付けた。

 小さな呻きと共にナカのそれがどくどくと震える。


 ……それでも、愛してくれた分、欲張りになる。


 ずるりと抜かれたそれは、達しても萎えていない。外した薄い膜を縛るアールを、渾身の力で押し倒した。

「フウマっ……」
「んっ、あぁっ!」

 驚いている間に上に乗り上げ、自らアール自身を受け入れた。

「っ……」
「抜いちゃだめっ、このままっ……」

 ぼろ、と涙が零れる。泣き落としなんて手は使いたくないけれど、今日だけは押し返されたくない。

「ここまで……アールのものに、なりたい」

 そっと腹を撫でる。
 ここまで、アールが入ることを知っている。今まで入っていた、もう少し先。

「ここに……アールのぜんぶ、ちょうだい……?」

 アールの、を。


「ッ――……!」

 グッと腰を押さえ付けられ、望む場所を抉じ開けられる。

「あぐっ、ぅ、ァッ……ぁ、あっ」

 奥深くを褒めるように捏ねられると、苦しさはすぐに快楽に変わった。


「フウマ……」

 アールの上で快楽に喘ぐ姿。その顔に手を伸ばし、下を向けさせた。
 とろりと溶けた艶やかな黒の瞳。閉じきれなくなった口から覗く赤い舌。快楽にとろけた風真を愛しげに見つめ、愛らしい声を零す舌を指先で掴んだ。

 声さえも思い通りにされる風真に、ふっと笑みを零す。そのまま腰を突き上げれば、舌はするりと奥に引っ張られてしまった。
 それでも、何度でも思い通りに出来る。
 それでも……。

「んっ、ぅ」

 風真の声を塞ぐのは、指より唇がいい。

「んぐっ、う、んンッ……」

 上体を引き寄せて唇を塞ぐ。苦しげに呻く風真の頬を撫で、腰を揺らして奥を穿った。

 理性は、飛ばしていない。
 理性で、風真の望みを叶える事を選んだ。今日は、風真を愛し尽くすと決めたのだから。風真が求めるならば、全てを捧げたかった。


「愛している」

 熱に掠れたアールの声。ふっと綺麗な笑みが視界に入り……。

「ッ……! あ、あ……ひッ……!」

 軽く抜かれた固いものが、ぐぷっとまた音を立てて捻じ込まれる。望んだ体の奥深くに熱い飛沫を打ち付けられ、途方もない快楽にそこで意識はぷつりと途絶えた。

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