248 / 270
小旅行2
しおりを挟む「マカロフ卿こっちは終わったわよ。お蔭さまで私のMPは残り僅かね」
「そのスキルがあれば対個人戦は無敵なんじゃないか? ナリユキ・タテワキにも勝てそうだ」
「そうなの? まあいいわ。残りのあの日本人は任せたわ」
「何だ知っていたのか。それにしても仕事が早いな」
「そうかしら? 長期戦になりそうな相手は先手必勝するほうが手っ取り早いのよ」
ちょっと待って? どういう事? 何でアマミヤさんがあんな隙だらけで、マカロフ卿と話しているの?
私は身体向上を使ってジャンプした。こんなところを抜け出すのはいとも簡単。
クレーターから抜けだして私は絶望した。
アリスちゃんが凍っている……。
全身の力が抜けて私の活力という活力は抜けきってしまった。なんで――。
「メンタルブレイクってやつだな」
「2人もやられてしまったら当然の事ね」
「2人? 他にもいるのか?」
「ええ。お蔭で本当にへとへとなの。他の人間が絶対零度を2度も使ったらMPが0になる可能性多いわね」
「確かにそうだな。まあそこは転生者補正ってやつだろうさ」
ここで戦わないといけないのに、私は全身の力が入らなかった――。手と足、そして先程のダメージで一旦自動消滅した天使の翼は出すことすらできない感覚に陥っている。
「ほら、見ろ。完全に戦意喪失しているようだ。お嬢様よ良く聞け。大人しく捕まれ」
「大人しく言うことを聞けば酷い仕打ちをするような部屋には連れて行かないわ」
そうか。ここで私が捕まればアードルハイム帝国の拷問部屋に連れていかれることになるのか――。でも――。どう考えてもこの2人を相手にして勝つ方法が見当たらない。ここで、アリスちゃんの氷を持って、天使の翼で空を飛びながら逃げた方がよいのだろうか?
「大人しく言う事を聞けば、アリスちゃんとノア君を元通りにしてくれるの?」
「そんな訳ないでしょ。特にあの少年を元に戻したら脅威になるじゃない」
「あの少年ってあれか? 緑色の髪をした奴か?」
「そうよ。マーズベルに行った時にいたの?」
「ああ。念波動の数値は5,200だ」
「――。冗談キツイわ」
「ナリユキ・タテワキも同じ数字だったな」
「帯刀さんも同じ数値なのね。まあ流石といったところね」
「知っているのか?」
「ええ。地球にいたときの知り合いというか――。先輩だったから」
先輩? 本当にナリユキさんとこの女性はどういう関係なのだろうか?
「成程な。さてお嬢様。ラストチャンスだ。大人しく捕まれ」
私が捕まれば計画は大狂いのなるのではないか? それだけが心配だった。
ふと、見上げて視界に入ったマカロフ卿の顔――。彼の瞳はどこか悲しさを持ち合わせていた。
そして思う。彼は悪い人じゃないのかもしれない。
私は不思議と両手を差し出していた。これは意識してではない。無意識のうちだった。
「あら。案外素直なのね。どういう風の吹きまわしかしら」
アマミヤさんはそう言いながら私に手枷と足枷をした。これで私はもう何も抵抗することはできない。この手枷と足枷を外す方法は、自力で何とかするか、無難に鍵を探すかの二択になる。
「そんなことはいいだろう。お嬢様も馬鹿ではない。なにせナリユキ・タテワキの側近だからな。とは言っても俺からすればまだまだ甘ちゃんだがな」
「元軍人が言うと皆がひよっ子に見えてしまうわ。いずれにしても連れて行きましょう。裏ルートからでいいはね?」
「そうだな」
そう言って私とアリスちゃんは馬車に乗せられて運ばれることになった。
そして気になったのは裏ルートという言葉。一体何を考えているのだろう。じゃない! 1つ肝心な事を聞いていなかった!
「少し聞きたいんだけど、ティラトンのbarを襲ったのは?」
「貴女が気にする必要はないわ。と言っても貴女にはもうスキルを発動することができないから、何もすることができないんだけど」
まあそうだよね。教えてくれないよね。
「ラングドールさんはどうなるの?」
「彼は大方死刑ね。貴女はあくまで転生者。彼はこっちの世界の人間。元々干渉することが無い次元から来た私達が、彼の命を気にかける意味なんてないのよ。所詮他人の命なのだから、今は自分の命を大切にしなさい」
言っていることが意味が分かるようで分からない。自分の命を大切にしなさいなんて、どういう意図があってそんな事を言うのだろう。マカロフ卿もアマミヤさんも一体何を企んでいるのだろう。考えれば考えるほど沼になりそうだ。
「ラングドールが死刑って聞いて驚かないんだな」
「予測はできていたからね。それに私の印象では彼は死を恐れていない。やれること全力でやった。例え死んでも誰か繋いでくれる。そう考えているような気がするから」
「凄いわね。貴方今いくつ?」
「22だよ」
「よく見ているわね。肝心なところで鈍感な帯刀さんとは大違い」
その言葉にふと疑問を抱く。私の印象だとなりゆき君は凄く優しくて気配りができて、尚且つ腰が適度に低い謙虚な男性だ。私とアマミヤさんの印象に大きなズレが生じているだけだろうか。
いや……。この人は私が知らないなりゆき君を知っている。そう考えただけで知りたいという欲と、嫉妬が半々ほどの割合で沸々と込み上げてきた。
「そのスキルがあれば対個人戦は無敵なんじゃないか? ナリユキ・タテワキにも勝てそうだ」
「そうなの? まあいいわ。残りのあの日本人は任せたわ」
「何だ知っていたのか。それにしても仕事が早いな」
「そうかしら? 長期戦になりそうな相手は先手必勝するほうが手っ取り早いのよ」
ちょっと待って? どういう事? 何でアマミヤさんがあんな隙だらけで、マカロフ卿と話しているの?
私は身体向上を使ってジャンプした。こんなところを抜け出すのはいとも簡単。
クレーターから抜けだして私は絶望した。
アリスちゃんが凍っている……。
全身の力が抜けて私の活力という活力は抜けきってしまった。なんで――。
「メンタルブレイクってやつだな」
「2人もやられてしまったら当然の事ね」
「2人? 他にもいるのか?」
「ええ。お蔭で本当にへとへとなの。他の人間が絶対零度を2度も使ったらMPが0になる可能性多いわね」
「確かにそうだな。まあそこは転生者補正ってやつだろうさ」
ここで戦わないといけないのに、私は全身の力が入らなかった――。手と足、そして先程のダメージで一旦自動消滅した天使の翼は出すことすらできない感覚に陥っている。
「ほら、見ろ。完全に戦意喪失しているようだ。お嬢様よ良く聞け。大人しく捕まれ」
「大人しく言うことを聞けば酷い仕打ちをするような部屋には連れて行かないわ」
そうか。ここで私が捕まればアードルハイム帝国の拷問部屋に連れていかれることになるのか――。でも――。どう考えてもこの2人を相手にして勝つ方法が見当たらない。ここで、アリスちゃんの氷を持って、天使の翼で空を飛びながら逃げた方がよいのだろうか?
「大人しく言う事を聞けば、アリスちゃんとノア君を元通りにしてくれるの?」
「そんな訳ないでしょ。特にあの少年を元に戻したら脅威になるじゃない」
「あの少年ってあれか? 緑色の髪をした奴か?」
「そうよ。マーズベルに行った時にいたの?」
「ああ。念波動の数値は5,200だ」
「――。冗談キツイわ」
「ナリユキ・タテワキも同じ数字だったな」
「帯刀さんも同じ数値なのね。まあ流石といったところね」
「知っているのか?」
「ええ。地球にいたときの知り合いというか――。先輩だったから」
先輩? 本当にナリユキさんとこの女性はどういう関係なのだろうか?
「成程な。さてお嬢様。ラストチャンスだ。大人しく捕まれ」
私が捕まれば計画は大狂いのなるのではないか? それだけが心配だった。
ふと、見上げて視界に入ったマカロフ卿の顔――。彼の瞳はどこか悲しさを持ち合わせていた。
そして思う。彼は悪い人じゃないのかもしれない。
私は不思議と両手を差し出していた。これは意識してではない。無意識のうちだった。
「あら。案外素直なのね。どういう風の吹きまわしかしら」
アマミヤさんはそう言いながら私に手枷と足枷をした。これで私はもう何も抵抗することはできない。この手枷と足枷を外す方法は、自力で何とかするか、無難に鍵を探すかの二択になる。
「そんなことはいいだろう。お嬢様も馬鹿ではない。なにせナリユキ・タテワキの側近だからな。とは言っても俺からすればまだまだ甘ちゃんだがな」
「元軍人が言うと皆がひよっ子に見えてしまうわ。いずれにしても連れて行きましょう。裏ルートからでいいはね?」
「そうだな」
そう言って私とアリスちゃんは馬車に乗せられて運ばれることになった。
そして気になったのは裏ルートという言葉。一体何を考えているのだろう。じゃない! 1つ肝心な事を聞いていなかった!
「少し聞きたいんだけど、ティラトンのbarを襲ったのは?」
「貴女が気にする必要はないわ。と言っても貴女にはもうスキルを発動することができないから、何もすることができないんだけど」
まあそうだよね。教えてくれないよね。
「ラングドールさんはどうなるの?」
「彼は大方死刑ね。貴女はあくまで転生者。彼はこっちの世界の人間。元々干渉することが無い次元から来た私達が、彼の命を気にかける意味なんてないのよ。所詮他人の命なのだから、今は自分の命を大切にしなさい」
言っていることが意味が分かるようで分からない。自分の命を大切にしなさいなんて、どういう意図があってそんな事を言うのだろう。マカロフ卿もアマミヤさんも一体何を企んでいるのだろう。考えれば考えるほど沼になりそうだ。
「ラングドールが死刑って聞いて驚かないんだな」
「予測はできていたからね。それに私の印象では彼は死を恐れていない。やれること全力でやった。例え死んでも誰か繋いでくれる。そう考えているような気がするから」
「凄いわね。貴方今いくつ?」
「22だよ」
「よく見ているわね。肝心なところで鈍感な帯刀さんとは大違い」
その言葉にふと疑問を抱く。私の印象だとなりゆき君は凄く優しくて気配りができて、尚且つ腰が適度に低い謙虚な男性だ。私とアマミヤさんの印象に大きなズレが生じているだけだろうか。
いや……。この人は私が知らないなりゆき君を知っている。そう考えただけで知りたいという欲と、嫉妬が半々ほどの割合で沸々と込み上げてきた。
22
お気に入りに追加
838
あなたにおすすめの小説
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる