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婚約初夜3

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(死んだかと思った……)

 気持ちがよすぎて。
 潮も吹きすぎて。
 最後の方は、全く記憶がない。

(しあわせだな、じゃないんだよ……)

 食べられて幸せ、が最後の記憶だ。あんなにぐちゃぐちゃでふにゃふにゃにされながら、何があったかしっかり覚えている。
 穴があったら入りたい。そして出来れば食べられずに一緒にいたい。それが幸せだ。

(酔ってえっちするもんじゃないな……)

 ふう、と息を吐く。
 本能丸出しでアールを欲しがってしまった。それはアールが嬉しそうなので良しとするが、後でこうして羞恥心に呻く事になる。今後は酔ってから致すのはやめよう。


「これが、あと二日……」
「夢のようだな」
「俺は体力が心配」

 ぽそりと呟いた。
 これがあと二日。しんどい。と思ったのは、嫌だからではなく、体力の問題だ。

「アールとずっと一緒にいられるのは夢みたい。ただ三日三晩えっちするのは、俺の体力がもたないかも。ごめんな」
「謝る必要はない。二人でする事だからな」
「うん……ありがと。走るのはいくらでも走れるのに、こっちの持久力には反映されないとかなぁ」

 走り込みや剣を振っても鍛えられないの持久力は、どうやって鍛えれば良いのだろう。
 今日までわりと抱かれているというのに、鍛えられている気がしない。

(今日はなんか、体が変だったし……)

 婚約者のアールに抱かれていると考えた途端に、ぶわっと体が熱くなった。感じ過ぎて、ずっと達し続けてしまった。今後もこうなら困ってしまう。
 むむっと難しい顔をする風真ふうまに、アールはそっと視線を伏せた。


「……出すと、体力を奪われるらしい」
「へ?」
「出さなければ、体力がもつのでは」
「なんの話……あっ、そういう」

 思い至り、パッと頬を赤くした。だがすぐにへらりと笑う。

「アールがそっちの勉強しててくれて良かった~」

 風真も小説で勉強しようと頑張ったものの、そういうシーンに差し掛かると恥ずかしくなって読めなかったのだ。

 明るい笑みを見せる風真に、アールは戸惑う。体力をもたせるために風真の射精を強制的に止める話だと、気付いていないのだろうか。

「まあ俺、アールよりちょっっっとだけ早いもんな。そっか、それでアールより先にバテてたのか」

 解決策あって良かった、と上機嫌の風真に、アールの不安はふっと消える。
 強いるのではない。風真も、長く抱き合いたいと思ってくれているのだから。


「出さないようにって、どうすんの?」
「縛る」
「ん?」
「ここを」
「コレを!?」
「根本を」
「……痛いのは、やだな」
「心配するな。優しくする」
「顔が……顔の圧で納得させられる……」

 ふっと微笑まれ、じゃあお願いします、と心が秒で折れた。
 アールは周囲を見渡し、テーブルの上のシャンパンに視線を止める。シャンパンの種類を選んだ時に、婚約後らしく深紅のリボンを結ばせたのだ。

 これだ、とアールは頷く。
 あれか、と風真は察した。

(ソコに赤いリボン……、……いや、まあ、柔らか素材だったしな)

 痛くないならと、また秒で妥協した。

 赤いリボンの結ばれたソレを想像し、アールは視線を伏せる。今すぐ結びたい。だが風真を大切にしたい。まだ駄目だ。まだ、風真の体力が戻っていない。
 先にするべき事をしよう。そっと息を吐いた。


「フウマに謝罪したい」
「ん?」
「中に出した。それも、何度も」
「ンッ! ……いいよ。俺がそうしてほしかったし」

 そう言葉にすると、表情は変わらないままでアールの雰囲気がパッと華やいだ。だがすぐに視線を落とす。

「孕めと言ったが、同意なく子を作るつもりはなかった」
「っ、……大丈夫。もし出来てもアールの子だし、……いや、まだ出来てないし、……そもそも男の体だからさすがに一回で出来たりしないって。……神子でもみんな子供が出来るわけじゃない、かも」

 何を言っても失言な気がして、何度も言い直す。

(アールってほんと、俺を孕……なプレイ好きだよな)

 教材の問題か、男の本能か、跡継ぎが必要な王太子としての方の本能か。
 産めるものならいつかは産みたい。だが今ではない。まだ結婚もしていないのだ。
 この世界の赤子は、五ヶ月足らずで産まれてくる。今出来てしまっては、結婚式をする時には臨月か子連れだ。

(ってか、どっから産むんだよ……)

 一番の疑問。こればかりはさすがにケイも知らないだろう。


「私の子なら、産んでくれるのか」
「うん。てか、アールの以外ないだろ」

 当然とばかりに答えると、また雰囲気が華やいだ。

「この喜びを、どう言葉にすれば良いのか」
「大丈夫。伝わってるよ。でも、産むの今すぐじゃないよ?」
「ああ、分かっている。だから次は、を着けるまで煽らないでくれ。お前を大事にしたい」

 理性を失いかけても視界に入るよう枕元に置いていたゴムを指さす。それでも今回は手に取る事が出来なかったが。

「いつも大事にしてくれてありがとな。でも、余裕なくなっていつも通りに出来てないアールも可愛い」
「っ、不甲斐ない姿を見せた」
「そんなアールも可愛いし、後からごめんって言ってくれるのも優しくて、可愛くて好き」
「格好悪い私は忘れてくれ」
「へへ。可愛いアール好きだし忘れないよ。俺のために理性頑張ってコレ着けてくれるアールも、かっこよくて好きだよ」

 コロンと横向きになり、アールに抱きつく。

「お前は……。私が何をしても、許してしまうのか」
「アールにされて嫌なことないしさ。どんなアールも、全部好き」

 すりすりと頬を擦り寄せる。可愛いアールを見た後では恥ずかしさもなく、好き、大好き、と言葉にしてたっぷりと甘えた。


「……可愛いのはお前だ」

 蚊の鳴くような声で呟き、風真を抱きしめる。可愛い事を知っているのに、毎日愛しさが増して仕方がない。

(可愛いのはアールなんだよな)

 一生懸命に好きでいてくれるアールが、可愛くて仕方ない。素直に甘えると、照れ隠しにこうしてきつく抱きしめてくれるところがまた可愛い。


 可愛くて困る。二人は同時に同じ事を考え、そっと息を吐いた。

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