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*ベタな誤解2

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 勢い良く扉が閉まり、鍵を掛けられる。
 するとアールに思い切り抱きしめられた。

「っ……アール、ごめ……、っ!?」

 ごめん、不安にさせて。
 そう言葉にする前に、抱きしめたままで脚を払われた。気付いた時には、アールの前に座り込む体勢。

(え? あれ?)

 肩を押さえられ、目の前にはアールの、股間が。
 いつかの記憶が蘇る。あの時は風真ふうまの大事な部分が踏まれた。踏まれて達するという、とんでもない記憶だ。
 だが今度は下に衝撃はなく、代わりに目の前に衝撃があった。ファスナーが下ろされ、アールのが晒される。まだ芯を持たない熱いモノが、唇に押し付けられた。


「やっ……」

(……嫌じゃ、ないな?)

 アールとは恋人で、拒む理由もない。わりと何をされても平気だ。
 思えば邪気の治療で何度も舐めているモノ。抵抗もなく嫌でもないが、先に誤解を解きたかった。自分が傷付くのではなく、今、アールを傷付けている。

「アール、誤解だから説明させ……んぐっ!?」

 口を開けた瞬間に顎を掴まれ、無理矢理ソレを押し込まれた。

(ここでオープニングのスチル回収!?)

 アールの足元に踞り無理矢理咥えさせられるスチルは、絶対に回収出来ると由茉ゆまが言っていた。
 以前起こった時には未遂のようなもので、回避したと安堵していたが。随分と日が経った今、スチル回収とはやられた。

「んっ、んうっ、ぐっ」

 奥まで押し込まれ、軽く揺らされる。アールは苛立っているというのに、乱暴に突かれる事はない。
 ちらりと視線を上げると、僅かに残った理性との狭間で眉を寄せ顔を歪めていた。


(苦しい、けど……)

 アールの不安をなくしたい。どうせなら、気持ちよくなって欲しい。

「ふ……んっ、んっ」

 そっと舌で裏筋を舐めると、咥内のモノがびくりと震えた。
 口いっぱいで少ししか動かせない。それでも、舌全体を使って優しく舐める。喉に触れた時には生理的な吐き気を堪えて喉を締め、先端を刺激した。

「っ……」

 小さく呻く声が聞こえ、もっと気持ちよくしたいと舌を動かす。だが。

「んぐッ、ぅ、んンぅッ……!」

 頭を掴まれ、強引に前後に動かされた。喉奥を突かれ、ぼろぼろと涙が零れる。

「んぅ、ぇっ、うっ」

 苦しくて、嗚咽が漏れる。それなのに咥内を擦られる感覚に、じわじわと快感が混ざり始めた。


(やば……口の中、きもちぃ)

 キスをされる時に触れられる場所。そこが気持ち良いと体が覚えてしまった。
 咥内で硬度を増し、とろりと液を垂らし始める自身。飲み下すと媚薬のように腹の奥が熱くなる。そっと手を伸ばし自分のそれに触れると、既に固く反応していた。

「んっ、ンッ、うぅッ」

 跪いて咥内を犯され、自慰をして、酷く感じている。こんな性癖はなかったはずなのに。
 勃ち上がっているのに、手が震え、服の上から触るしか出来ないもどかしい刺激。先端を爪で引っ掻き、快感を求めた。

(いっそ、踏んでほしい……)

 あの時のように、強い刺激を与えてくれたら……。

「んぅッ、ッ――……!」

 咥内のモノがびくりと震え、喉奥に熱い飛沫がぶつけられる。息苦しさと溺れそうな衝撃。衝動的に手の中のモノを握り締め、痛いほどの刺激に、声もなく絶頂を迎えた。



 邪気が溜まった際に摂取していた条件反射で、こくりと喉を慣らして飲み下す。甘い味ではない、アールの味。
 達した余韻と酸素の足りない頭は、嬉しい、と咥内の液を全て飲み干した。口から熱いモノが抜かれ、とろりと瞳を蕩けさせてアールを見上げる。

(……いや、踏んでほしいはアウトだろ)

 ふと我に返り、風真は視線を伏せた。
 強い刺激が欲しかったが、そんなプレイを望むのはまだ早い。何度か体を重ねているとはいえ、まだ健全な行為しか出来ていないのだから。


「っ……」

 遅れて我に返ったアールは、顔を真っ青にして立ち尽くした。

「アール。大丈夫だよ」

 座って、と服の裾を引き、崩れ落ちるようにしゃがみ込んだアールの頭をよしよしと撫でる。

「アールの理性が赤ちゃんだって知ってるし、アールのを舐めるのも、嫌じゃないよ」

 普段の行為でも飛ばさなかった理性。それを飛ばしてしまったなら、悪いのは自分だ。だが自分が悪かったと言えば、アールはますます罪悪感に苛まれてしまう。

「さっきのは誤解だから、説明させてほしい。騎士さんは、目に睫毛が入りそうだったから取ってくれたんだ」
「っ……」
「あの角度だからキスしてるように見えたかもだけど、もしキスされそうだったら護衛さんが止めてくれてたよ」
「……護衛、……いたのか」
「うん。俺の隣にいた」

 彼まで見えていなかったのかと、風真は苦笑する。そこまで盲目的になるのは危険な気もする。それでも。


「誤解させてごめんな。アールを不安にさせるのは嫌だけど、嫉妬してくれたのは、嬉しかったよ」

 アールのモノを咥えている時も、こんなになるほど愛してくれているのだと、不謹慎ながら喜んでしまった。

「この際だから言っちゃうけど……強引なアール、けっこう……かなり、ドキドキするから、こういうのもたまにはいいなって……」
「っ……」
「ごめん。引いた?」
「……理性を、引き止めている」
「そっか。ごめん」

 ここでまた理性を飛ばさせては、アールは後悔する。だが、今のままではいけないと風真は唇に力を込めた。

(恋愛って、疲れたら終わりって姉ちゃんが言ってたし……)

 だから、して欲しいことやされたら嫌なことを話し合い、お互いを知る必要があるのだと言っていた。我慢してもさせても、そのうち疲れてくるのだと。


「アール。俺は、アールが俺を好きだからすることに、嫌なことはないよ。して欲しくないのは、俺以外を好きになることな」

 きちんと自分の意思を伝え、アールの手を握る。

「アールのしたいことは?」
「……フウマを、傷付けたくない。大切にしたい」
「うん。いつも大事にされてるよ。ありがとな」

 アールの瞳を見つめ、嬉しそうに頬を緩めた。

「……して欲しくないことは、私以外を見ること。私以外に触れること。触れられること。話すこと。いつも私の目の届くところにいて欲しい。……だが、それを強制出来ない事は分かっている」

 自由に動き回る風真が、一番生き生きしているから。風真の笑顔が、好きだから。
 閉じ込めて、弱らせたくない。悲しい顔をさせたくない。

「その日の出来事を楽しげに話すフウマが好きだ。それと同時に、私の知らない時間がある事に、酷く焦りと苛立ちを覚える」
「……そっか。うん、それは俺も……」

 言い掛けて、風真は気付いた。
 アールは、今日は王宮で書類仕事だ、謁見だ、街の南側の視察だ、と一日の予定を伝えてくれる。毎日、今はこれをしている頃だなと思いながら過ごしていた。

(だから俺、そんなに不安とかないんだ……)

 居場所が分かれば安心する。風真は一つ頷いた。


「俺は、アールが毎日予定を教えてくれるから不安がないんだ。だから俺も、そうするな」

 ニッと笑うと、アールは目を瞬かせる。

「確かに、どこで何をしているか分かれば、焦りは少なくなる……だろうか」
「なるなる。結構効果あるよ。……あれ? そういえば、俺の行動って報告されるんじゃなかったっけ?」
「今まで付けていた者は元の仕事に戻した。今はお前の口から聞くのが楽しいからな」
「ンッ、そっかぁ」
「……お前の護衛と、離れの使用人から事後報告をさせる事もあるが」
「やっぱ聞いてんじゃん~。まあ、一番俺の行動知ってるのは護衛さんだよな」

 風真に忠誠を誓う護衛だから、宝石商や細工師の元へ行った事や、ロイたちに会った事は報告しないでくれる。
 反対に、もし風真が無意識に危険な人物に近付く事があれば、他の使用人を通してすぐにアールに報告させるだろう。ますます優秀になる、信頼出来る人だ。

「……そうか。私がフウマの護衛になれば良いのか」
「いやいや、良くないからな? 王太子は護衛される方な?」

 苦笑すると、アールは悔しげに声を漏らした。

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