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*初夜2

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 唇が離れると、腰の下にクッションを入れられる。片足を抱えられ、アールの肩に乗せられた。

「この体勢、全部見えちゃう……」
「ああ。綺麗だ」
「ううっ、綺麗じゃないし、恥ずかしすぎ」

 あんな場所、綺麗なわけがない。だが、この体勢で男の体を見ても綺麗だと言い、太股にキスまで出来るアールに内心では酷く安堵していた。
 アールも、風真ふうまの下肢が萎えていない事に胸を撫で下ろす。今から挿れられるのだと実感しても、風真の身も心も拒んでいない。羞恥と期待に微かに震える蕾に、そっと瞳を細めた。

「男同士は後ろからの方が負担が少ないらしいが……。初夜は、フウマの顔を見ながらしたい」
「初っゃ……うん。俺も、アールの顔、みてたいな……」

 もじ、と恥ずかしそうに言う風真の額に、感謝と愛しさを込めてキスをした。


 アールは枕元に放っていた小さな銀色の包みを取り、中身を取り出す。風真の片足を抱えたまま。

(……さては、恥ずかしがる俺を見たくて、先に付けなかったな?)

 忘れていたという顔ではない。風真が脚を下ろさないよう、腕で拘束したまま器用に包みを開けていた。
 それならと、風真もアールの手元をジッと見つめる。その先には、アールのもあった。
 視線に気付いたアールは、珍しく困った顔をして下肢を隠す。

「あまり見るな」
「俺ばっか見られて不公平じゃん」

 にひ、と笑う。困った顔のアールも可愛い。可愛いアールの前では、恥ずかしがらずにいつもの自分でいられた。

「付けるとこ見せてほしいなぁ」
「ふ、先程まで真っ赤になって震えていたくせに」

 クスリと笑い、風真の要望通りに下肢を晒した。
 白く長い指で、くるくると器用に巻き付けられていくそれ。アールの綺麗な形が覆われていくのが勿体なく思えてしまう。

(でも、最初は付けないでしたいなー、なんて言えないよな……)

 そんな事を言えば、本当に孕まされてしまう。
 神子に子が出来るか否かは関係なく、アールという存在の力で体を作り替えられてしまいそうだ。
 ここから出して貰えない発言を思い出してじわりと頬を染め、慌てて思考を散らした。


(それにしても、まさか自分が使われる側になるなんてな)

 コンビニで目に入ってしまう度に、いつかは自分も使うのだろうと考えては、まだ遠い未来だと思っていた。
 それがこんな近い未来に、自分が見届ける側になるとは。

「アール、それ、使ったことあるの?」
「ああ。練習した」
「……念のため訊くけど、付ける練習だけだよな?」

 そうだが、と言い掛けて、アールは一度口を閉ざす。

「王侯貴族は初夜で失態を晒さないよう、実践で夜伽の授業を受ける慣習がある」
「っ……」
「だが、私が失態を晒すなど有り得ない。他人の肌に触れる事も嫌悪しかなかった。実践どころか座学も受けず、今になって知識を詰め込んだところだ」

 小説の知識だけで事に及ぶようなアールではない。まずは人体の構造から学んだ。
 そして自らも同性の伴侶を持つ、男同士の行為に詳しい講師を見つけ、持ち前の記憶力を駆使して短期間で詰め込んだ。
 講師の用意した人形と、練り物を使った疑似内壁で実践もした……とは、あまり格好良い姿ではなく、風真には言えなかったが。


「体位だけでも、あれほど存在するとは……」
「そっ、ソウダネ……」

(いや、全然知らないしっ)

「この体位に慣れてきたら他も試そうと思い、図解資料を向こうの部屋に置いている」
「そっ、かぁ」
「フウマの意見も聞きたい。二人ですることだからな」

 すり、と脚を撫でられ、風真は真っ赤になって顔を逸らした。

(これがしたい、って、俺の口から言うのか……)

 羞恥プレイかと思ったが、アールは幸せそうな顔だ。本当に風真と一緒に決める事を嬉しいと思っている。

「……うん。一緒に決めよ」

 それなら、アールの意見も聞きたい。アールのしたい事は、出来る限り叶えたい。
 アールの腕をそっと撫でると、その手を取られ指先にキスをされた。

「私が抱くのは、後にも先にもフウマだけだ。経験はないが、フウマを傷付けたりはしない。……フウマの中に、入ってもいいか?」
「っ、うん……。俺も、アールがほしいよ」

 痛くてもいい。それでも、アールは決して傷付けない。風真は頬を緩め、アールの頭を引き寄せて唇を重ねた。



「んっ、う……」

 熱いものが押し付けられ、内壁をゆっくりと押し広げていく。
 垂らされた甘い香りの液体が滑りを助け、痛みも抵抗もなく、一番太い場所がナカへと埋め込まれた。

「うっ……、ふ……は……」

 あまりの圧迫感に息を詰めそうになり、目を閉じて息を吐く。ゆっくりと呼吸をして、体から力を抜いた。
 自分より、アールの方が苦しいはず。きつく締めて、痛みを与えたくない。
 ふう、と息を吐き、動きを止めて優しく風真の髪を撫でているアールに、もう平気だと笑ってみせた。


「は……ぅ、んンッ……!」

 もう一度息を吐いたところで、グッと腰を押し付けられる。体の奥まで開かれる衝撃に、ぎゅっとシーツを握り締めた。

「っ、フウマ……」
「だいじょ、ぶっ……ごめっ……」

 痛みはない。アールの方が苦しげに眉を寄せていた。

「アール、キスして……」

 手を伸ばし、アールの首に腕を回す。そっと指先で首筋を撫でると、熱い吐息を零して風真の唇へと触れた。

「ンッ、ぅ……」

 更に奥まで開かれ、圧迫感に呻く。それでもキスをされると、柔らかな心地よさに体から力が抜けた。

(体、柔くて良かった……)

 膝が胸に付くほどに体を折り曲げられても、痛みはない。こうして向かい合ってキスが出来る。嬉しくて、風真の方からそっと舌を差し出した。

「ぁ……んっ、ふ……」

 舌同士が触れ合う、初めてのキス。熱い舌が絡まり、上顎を撫で、ぞくりとした快感に身を震わせた。


(キス、きもちい……)

 舌を噛まれ、吸われて、アールの動きに翻弄されてしまう。とろりと瞳が溶け、風真の方からも舌を絡めた。
 甘い、甘いキス。全身の力が抜け、きゅうっとアール自身を甘く締め付けた。

「んっ、あ、ぁ」

 ゆるゆると腰を揺らされ、体の奥から熱が込み上げる。ずるりと抜かれると、ゾクゾクした快感に背をしならせた。

「フウマっ……」
「あっ、ぁ……るっ、あっ、んッ」

 ゆっくりと突き挿れられ、また抜かれる。ナカを擦られる度に、全身が快感に震えた。

「んっ、んぅっ」

 キスをされ、頭の中まで蕩けていく。甘い、甘いキスだ。

「は……ぁっ、あぁっ、あっ」

 ひゃんひゃんと鳴けるほど、舌が回らない。開きっぱなしの口から零れる嬌声。快楽に呑まれて蕩けた瞳に、アールはそっと口付けた。


「可愛い……、私の、フウマ」

 自分の手で、体で、こんなにも感じている。
 ずっと欲しかった。ずっと愛していた。
 やっと、手に入れられた……。

 グッと奥を突き上げると、縋るように抱きつき、背に爪を立てる。
 涙を零して頬を擦り寄せる風真の奥を、何度も穿ち、その度に感じる痛みに夢ではないと実感した。

「ァ……るっ、イっ……ぃ、くぅっ」

 吐精感を堪え、アールに縋り付く。一緒に、と甘える声で鳴きナカをきゅうきゅうと締め上げられては、我慢など出来るはずもなくて。

「っ……愛している、フウマ」

 愛しい体を抱きしめ、想いを込めて耳元で囁く。

「フウマ……私の子を、孕め」
「ッ、――!」

 孕ませてやる。甘い声で告げ、感じる場所を擦り上げる。
 奥を穿ち何度も押し付けると、風真は声もなく喘ぎ、絶頂を迎えた。



 意識を手放した風真を抱きしめ、閉じた瞼にそっと唇を触れさせる。

「私の、フウマ……。一生、離さない」

 誰にも渡さない。私のものだ。
 心も、体も、魂さえも、全て。


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