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*求愛

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「って、そもそも産めるか分かんないけどさっ」

 無意識にアールの服を握っていた事に気付き、ハッとして手を離す。だがその手を逆に取られ、驚いているうちに寝室へと連れて行かれた。
 窓も半開きのまま。アールは風真ふうまを抱き上げ、そっとベッドへと横たえる。

「アールっ?」

 顔の横に手を付かれ、焦る風真を真っ直ぐに見下ろす、空色の瞳。

「……私の子を孕むまで、ここから出さない」
「!?」

 初めて塔に案内された時、言われた言葉だ。あの時は冗談だと誤魔化されたが、本当は……。
 カァ、と頬が熱くなり、顔を横に向ける。だが顎を掴まれ、アールの方へと引き戻された。

「そのつもりで抱く」
「だっ……」

 抱かれる。子供が出来るまで。
 シンと静まり返った寝室。ここに閉じ込められて、ずっと、アールに……。

 ぶわっと全身が火照り、ぎゅっと目を閉じた。想像と、今のアールを見ているだけで子供が出来てしまいそうだ。


 羞恥にぷるぷると震える風真を怯えていると誤解して、アールはそっと風真の頬を撫でる。

「お前が子を望まないなら、中には出さない。気が昂ってしまったが、お前を傷付けるような事は……」
「……アールは、欲しい?」

 逆に問い掛けた。今までもずっと、アールに我慢させていた。それにこういう事は、二人で決めたい。

「私は……」

 震えも止まり、熱に潤んだ瞳がアールを見上げる。

「……まだ、私だけのフウマでいて欲しい」

 答えは、風真と同じだった。
 本能が風真を孕ませたいと訴えてくる。だが、子供にも風真を奪われたくない。やっと、手に入れられたのだ。

 結婚だけでも早くしたいが、世継ぎを作らなければ、やはり男の体では子を成せないのだと邪推され、側室になる令嬢が各家門から送られてくる。受け入れはしないが、その事で風真を傷付けたくはない。

 結婚式も、世継ぎも、まだ早い。アールはふっと笑みを零し、風真の頬をむにむにと摘んだ。


「最初から子はまだ早いと思い、準備はしている」
「準備、って……」
「安心して、私に抱かれろ」
「!」

 二人きりなのに、アールが可愛いアールではない。やる時はやる男。アールは本来の堂々とした態度と、愛情を溢れさせた甘い瞳で風真を動けなくさせた。

「お前の全てを貰い受ける。覚悟していろと言っただろう?」
「う、うぁ……」
「私のものになれ、フウマ」
「っ……」

 ぶわわっと全身が熱くなる。こんな体勢で、こんな顔で、こんな事を言われたら……。

「な……なる……」

 答えはもう、それ以外にない。
 きゅっとアールの服を掴むと、それが合図のように、熱い唇が風真の唇を塞いだ。





「んっ……、ふ……」

 キスをしながら服を脱がされる。胸元の紐を解かれ、上体を起こされて、するりと上を取り去られた。
 また横たえられ、鎖骨にキスをされる。アールに脱がされるなら、ボタンのある服でも良かったなとぼんやりと考える。この状況で自分で脱ぐ暇などない。経験しなければ分からない事だった。

 腰を上げるよう促され、言われるままに従うと、下着ごと脱がされた。晒された肌に外気が触れて、すり、と膝を擦り合わせた。

「綺麗だ」

 一糸纏わぬ姿を見下ろし、空色の瞳が愛しげに細められる。

「あ、……んっ」

 アールの方が綺麗、と言いたい言葉は、吐息に消えた。
 鎖骨から胸元へと痕を付けられる度に、髪が触れて擽ったい。さらりとした見た目よりしっかりとした、金の髪。腹へと口付けられると髪が脇腹に触れ、ぞくりとした感覚に身を捩った。


(なんか、全部気持ちいい……)

 大切に触れられ、頭と心がふわふわする。
 いつまでも欠けない銀の月に照らされたアールの部屋で、これから、アールのものになる。
 胸がきゅうっとなり、金の髪に指を絡めた。

「アール、俺だけ脱がされて、恥ずかしい」

 自分だけが、全てを見られている。羞恥と、それ以上に、肌が触れ合わない事が切なかった。

 アールは優しく頬を撫で、ベッドから下りる。そして風真の目の前で、躊躇いもせず全てを脱ぎ捨てた。

(綺麗……)

 均整の取れた体躯。白い肌。晒された下肢すら美しく、見惚れてしまう。
 風真は体を起こし、ベッドへと戻ったアールを押し倒した。

「っ、フウマっ……」

 ちゅ、と胸元に唇を触れさせる。そこから、腹へと。綺麗に隆起した筋肉に沿って小さな痕を残した。

(やっぱり、アールの方が綺麗だ……)

 いつか、キスマークを付けるのは性行為の一環だとアールから教えられた。その意味を、ようやく理解した。


 嬉しそうに頬を染めてアールを見下ろす。
 アールの全てが愛しい。そっと下肢へと触れると、ぐらりと視界が揺れた。
 また、アールの下だ。

「すまない……。それ以上は、我慢が利かなくなる」
「我慢、しなくていいよ?」
「っ……、大切にしたいから、駄目だ」

 ちゅ、と目元に唇が触れ、子供を宥めるように髪を撫でられた。
 アールはベッド脇の棚から瓶を取り出し、とろりとした液体を手のひらに出す。蜂蜜のようなそれは、ほんのりと甘い桃の香りがした。

「……万が一、痛かったら言ってくれ」

 アールの手が膝を掴み、脚を開かされる。ぬるりとしたものが後孔に触れたところで、ふわふわとした意識が引き戻されてしまった。


「んっ……、待って、すごい恥ずかしいっ……」

 脚を閉じるとアールの腕を挟んでしまい、生々しさにますます恥ずかしくなる。
 すり、と指先で撫でられ、指を動かす度に太股に振動が伝わって、思わず脚を開いた。

(閉じても開いても恥ずかしいっ……)

 アールの腕に触れないようにすると、秘められた場所を眼前に晒す事になる。視線を下に向けると、アールはそこへと視線を注いでいた。

「恥ずかしいってばっ」

 バチンと脚を閉じる。やはり、見られる方が恥ずかしい。顔を真っ赤にして睨んでみても、アールは愛しげに微笑むだけだ。

「可愛い」
「ひゃっ」

 太股にキスをされ、ぴくりと震える。その隙に脚を開かされ、指先がナカへと滑り込んだ。

「んっ……」
「痛いか?」
「痛くは、ないけど……うあっ、んんっ」

 指を一本奥まで突き挿れられ、圧迫感に呻いた。
 痛くはない。体内に異物の入るおかしな感覚はあっても、息苦しい圧迫感すらもすぐに薄れた。

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