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*自尊心

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「ならば、こうしよう」
「へ? うひゃっ!」

 再び押し倒され、アールの自身が風真ふうまのソレに直に当てられた。

「待って待って待って、頭が追い付かないっ」
「これならば、背徳感はないだろう?」
「あっ……う~っ、ないけど……こう、比較されると俺の自尊心が……」
「この世界に召喚される際に、神が力以外与えなかったという事は、フウマはそのままで完璧だからでは?」
「ンンッ……そんな純粋な目で……」

 本心でしかないと訴える曇りなき眼。それ以上言い返せずに項垂れた。

(……まあ、アールって犬飼ってたしな)

 男としてのソコの自信はひとまず抜きにしても、愛嬌のある犬属性の自分は、アールにとっては好ましいのだろう。
 例え召喚された時がそうでなくとも、一緒に過ごしているうちに愛着が湧き、可愛く見えてくるというものだ。

(むしろ与えるものが多すぎて、神様諦めたんじゃ……)


「ただ擦るだけだが、お前が嫌ならやめる」

 考え事をしていると、アールは誤解して眉を下げる。

「えっ? 嫌じゃないよっ?」

 ハッとして答えた風真は笑顔のまま固まった。

(駄目だ……貞操観念が息してない……)

 本当に、嫌だとは思わない。いや、アールの美しい容姿と比例するが添えられたところで、嫌悪感など抱くはずもない。きっとそう思うのは自分だけではないはず。
 そう考えてから、例えそれが多数派だとしても、貞操観念が失われて良い理由にはならないとブンブンと頭を振った。

「……やはり、嫌か?」
「嫌じゃないよっ? 俺の貞操観念が息してないって思ってるだけでっ」
「ふっ、そうか」
「んんっ、アールがよく笑うようになって嬉しいけど、笑われるのは複雑~っ」

 今度は頭を抱える。

「可愛い奴だと思っているだけだ」
「ンッ」

 柔らかな微笑みに、また呻いて顔を覆った。

(乙女ゲームでは~~っ?)

 ゲーム、そして、風真の愛読書で良く見るキラキラしたヒーローだ。

(体勢が全然違うけどなっ)

 絶対に出してはならないモノを二人とも晒して、くっつけ合っている体勢。上半身と下半身のジャンルがあまりに違いすぎる。


「わっ!」

 突然視界が揺れ、今度は抱き起こされる。アールの太股を跨ぐように脚を開いて座らされ、しっかりと腰を抱き寄せられた。

「えっ、あのっ、アールっ?」
「腕はここだ」
「えっ」

 片手をアールの首に回され、反射的にもう片手も回す。

「しっかり掴まっていろ」
「へ? うわっ、わっ、んんッ……」

 下肢を刺激が襲い、ぎゅっとアールに抱きついた。

「うぁっ、あっ、ぁっ」

 ゆるゆると扱かれ、先端を親指で撫でられる。弱い場所をゆったりと責められ、熱い吐息を零した。

「はっ……はぁっ、駄目……これ、きもちい……」

 ユアンやトキとは違う、優しい快感。全身に甘く広がる気持ち良さに、すり……とアールの髪に頬を擦り寄せた。
 もどかしくて、ずっと気持ちいい。はふはふと息を吐きながら、気付けば自ら腰を揺らしていた。


「ぁ……、んっ……」

 盛大に喘ぐのではなく、きもちいい、と言葉を交えて快感に声を漏らす。アールの手で感じ、甘えるように擦り寄る風真に、アールの頬は自然と緩んでいった。
 可愛い、と耳にキスをすると、ぴくりと震える。腰に回した手をそっと服の中に入れ、肌を撫でると、可愛い声が零れた。

「可愛い……、私のフウマ……」
「んっ、あっ、あっ……」

 耳元で囁かれ、ゾクゾクと背筋が震える。自身の先端から溢れた蜜を、アールの指が掻き混ぜるように撫でた。

(ぬるぬるして気持ちいい……)

 とぷとぷと溢れる蜜を塗り広げられ、扱く動きでも粘着質な水音が聞こえ始めた。


「フウマ。片手を下へ」
「へ……?」

 言われるままに腕を下ろすと、熱いモノが手のひらに触れる。

「私の方を意識して動かしてくれ」
「ん……」

 ぼんやりとした頭で、言われた通りにアールのモノを手のひらで包んでゆっくりと扱いた。
 ふ、と頭上から吐息が聞こえる。

「アールも、気持ちいい……?」
「ああ、気持ちがいい」
「そっか、良かった」

 顔を上げ、へらりと笑う。

「っ、……フウマ」

 アールの顔がそっと傾き、近付く。吐息が唇へと触れて。

「んっ、……するとこだったっ」
「……すまない」

 ぎゅっと唇を引き結んだ風真が、慌てて顔を俯けた。
 風真が我に返らなければ、触れていた。アールは天を仰ぎ、目を閉じる。


(あわっ、視界がひわいっ……)

 下を向いた風真も目を閉じる。二人の手で包まれたソレは、二人分の蜜に濡れて淫猥な光景を見せていた。
 カァ、と耳まで赤くなる風真に気付き、アールはかぷりと耳に噛み付いた。

「ひぇっ!」
「全身美味しそうだ」
「俺は食べ物じゃっ……ひゃっ、ひ、んっ」

 べろりと舐められ、耳朶を喰まれる。唇で耳を喰まれながら手を動かされ、びくりと腰が揺れた。

「フウマ、手が止まっているぞ」
「そんなこと言ってもっ、んんぅッ」

 ぎゅっと風真の手ごと自身を握られ、上下に動かされる。突然の強い快感に、背を反らせ喘いだ。

「可愛いな」
「ひゃ……ひ、ぅっ、うあっ、あッ」

 下から響く粘着質な音と、ぴちゃぴちゃと耳を舐められる音。聴覚からも犯され、感じるあまりぽたりと涙が零れた。

「……好きだ、フウマ」
「っ!」

 甘い声が注がれ、ぞくりと全身が震える。好きだ、と繰り返す声。腹の奥が熱くなり、グッと射精感を堪えた。

「私のものになれ、フウマ。……愛している」
「ッ――!!」

 一際甘い声で紡ぐと同時に、先端に爪を立てられ、今度こそ堪えきれずに熱を吐き出した。


「っ、ぁ……ぁ、ぅ……」

 解放の余韻に吐息を零す風真の手を掴み、アールはまだ達していない自身を扱く。小さな呻き声と共に手の中のモノが震え、ぱたぱたと手と腹に熱いものが落ちた。

 アールが人の手を使い、しっかりと感じて達した事に、風真の心に妙な満足感と優越感のようなものが湧き起こる。
 自らの開放感と相俟って、はふ、と息を吐き目を閉じると、そっとベッドへと横たえられた。

「タオルを取って来る」

 アールは風真の髪を撫で、ベッドを下りた。

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