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*あったかい蜂蜜

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(あれ? ユアンさん、自分で?)

 小さく揺れるベッド。皮膚を擦る音に、風真ふうまはパタパタと手で周囲を探る。

「俺がしますよ。お礼なので」
「でも、治療だから」
「お礼でもあるので」

 手がユアンの脚に触れ、慎重に動かして目的のものに辿り着いた。

「相変わらずの……、いえ」

 なんでもないです、と言うと、ユアンの小さな笑い声が聞こえる。笑っていられるのも今のうちだ。風真はカプリとソレを口に入れた。

(……あのウィンナー見る度に思い出しそうだな)

 シェアするタイプの大きなウィンナーと同じ口径。熱さも似ている。固さだけはユアンの方が上だった。
 擦られたソレからは、既に先走りが零れている。


「……ん?」
「どうしたの?」
「ん、甘い……?」

 指で扱きながら、先端をぺろぺろと舐める。

「神子君っ?」
「ん……、ん~?」

 とろりとした粘度のある液体は、蜂蜜のような甘さだ。先端を口に含み、ちゅうっと吸うと、口の中でびくりと震えた。

「ユアン、甘い物を大量に食べたのか?」
「いや、食べてないよ?」
「ユアン様、一度お医者様の診察を」
「その病気はないから。健康体だから」

 ユアンは苦笑した。

「えっ、待って、アールとトキさんもいるんですかっ?」
「いるが?」
「いますよ?」
「なんでですかっ、恥ずかしいんですけどっ」

 口と手を離し、正座をして慌てる風真に、三人は顔を見合わせた。


「フウマさん。食堂での事をお忘れですか? 今更、ですよ?」
「そうしたのは誰ですか!」
「ユアン様ですね」
「トキだろ?」
「二人ともだ」

 アールの大きな溜め息が聞こえた。

「私の知らないところで神子に触れられるのは我慢がならない。治療は譲ったが、神子を譲るつもりはないからな」

 だからおかしな事が起こらないか見張っている。アールは本気の声を出した。

「だが、ユアンが何か患っているなら」
「ないから。健康体だよ」
「それなら、何故甘い?」

 問い詰めるアールの声を聞きながら、風真も首を傾げる。

「俺が飲みやすいように、味覚の方が変わったのかも? 変な味しなくて蜂蜜っぽい甘さだし」

 元々の味は少しもしない。手についた液をぺろりと舐めると、やはり甘い味がした。

「フウマ、それは……」
「目の毒だね……」

 アールとユアンがそっと呟き、トキだけはソワッとする。一瞬で何かを想像して、満足したようににっこりと笑った。


「では、何度か飲めますか?」
「えっ、……はい」
「浄化した魔物の数と、視界の色。相当邪気が溜まっています。一度の体液量では到底足りません」
「……ですか」

 そりゃそうだよな、と風真は納得するしかなかった。
 直腸からの摂取なら、一、二度で済むだろう。風真も何となくだがそう感じる。だがそれが出来ない今、口から飲み続けるしかない。

「甘く感じるなら、三人で」
「ユアン。神子を襲わない為にも、やめろ」
「大変な画になると申し上げたばかりですよ? それに私は、辞退致します」
「トキ……」
「その代わりと言っては何ですが……フウマさん。少しだけ触れる事を、お許しいただけますか?」

 話を振られた風真はびくりと跳ねる。治療なら、自分が気持ちよくされる必要はない。
 だが、様々な事を考慮して、風真は唸る。

「トキさんも、騎士さんたちの治療をしてくださったので……。ものすごく控えめにしていただけるなら……」
「ありがとうございます。控えめに、ですね?」
「あっ、やっぱり普通でいいです」

 この流れは究極の焦らしプレイだと気付き、すぐさま撤回した。


「……私は何もしていない」
「アールは、魔物が目の前にきた時に護ってくれたし」
「そうだよ、アール。神子君の厚意甘えようよ」

(ん? これって結局、とんでもない画になるんじゃ……?)

 ユアンとアールのソレを舐め、トキには触れられて喘がされる。限りなくハッピーバッドエンドのスチルを回収してしまうのでは。

(でも今更撤回できない雰囲気……)

 やっぱり駄目だと言えば、アールは自分が役立たずだったなどと落ち込むだろう。

「……ただ、そこでジッと見てるのはやめてほしい」
「分かった。離れて見ていよう」
「見ないで!?」
「それでは私は、目を閉じてから触れますね?」
「トキさんはなんか危険な気がするので普通にお願いしますっ」

 見えない事を理由に、やはり焦らしプレイをされそうだ。

「うえぇっと、いったんアールは離れてっ」
「ああ」
「……離れた?」
「離れたぞ」

 声が遠くから聞こえる。風真は息を吐き、再び身を屈めてユアンのモノを握った。

 実際は声を小さくしただけで、アールはわりと近くにいる。自分だけ除け者にされて疎外感があった。せめて視線で参加した気になろう。アールはジッと風真を注視した。


 風真は舌を出し、ユアンの自身をアイスのようにぴちゃぴちゃと舐め、ちゅうちゅうと吸う。
 頭上から小さく呻く声が聞こえ、口の中のモノはびくりと震える。

(これはあったかい蜂蜜……熊さんの手から食べる蜂蜜……)

 味が甘くなっても、全く抵抗がない訳ではない。毛むくじゃらではなく、つるんとした熊の手を想像して、黙々と口を動かした。

「んっ! ふっ、うぅっ」

 突然、下肢に緩い刺激が与えられる。トキの手だ。その手はゆるゆると風真自身を揉み、風真はぶるっと身を震わせた。
 その拍子に一気に込み上げるものがあり、慌てて口を離す。

「ぷはっ、待って、出るっ」

 少し触れただけ。随分と早いという視線を感じ、ぷるぷると首を振った。

「違うっ、トイレっ……」
「私が連れて行こう」

 アールは誰の返答も待たずに風真を抱き上げ、目的の場所へと向かった。


「……ユアン様。大丈夫ですか?」
「正直、つらい……」

 何度も寸止めでつらい。下半身を露出したまま会話をするのもつらい。この中で一番行為に慣れていても、こんなにも雰囲気がコロコロ変わるのは初めてだった。

「これがフウマさんからの罰かもしれませんね」
「神子君が意図的にやってるなら、ご褒美なんだけどね」
「ふふ、残念ながら無意識でしょう。本当に、無邪気で可愛らしい……」

 トキはくすりと笑う。ユアンは「可愛くはあるんだけど」と、予期せぬ焦らしに苦笑した。

「ここで出してくださっても良かったのですけどね」
「想像させないでくれ……」

 こんな場面は何度かあったが、子供の世話だと思って微笑ましく思っていた。
 だが内心では堪えていたのだ。それを大人の事情に結び付けられると、これから同じ場面で堪えられるかどうか。ユアンは何度目ともなる苦い笑みを浮かべた。

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