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*完璧な配役

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「そろそろ熱くなってきましたか?」
「へ?」

 トキはゆったりとお茶を飲み、にっこりと笑った。

「お腹の奥から、熱くなってきたでしょう?」

 お腹? と風真ふうまは腹に手を当てる。意識すると、じわじわと熱感を自覚した。
 そこから瞬く間に全身に広がり、じわりと汗が滲む。


「っ、トキさん、もしかして……」

 ついに媚薬を、と顔を上げる。だがそこにトキの姿はない。

「え……、うえっ!?」

 目の前から消えたトキは、いつの間にか背後にいて、風真の両手首を後ろ手に拘束していた。

「ちょっ、トキさん!?」
「痛いですか?」
「痛くないです! じゃなくてっ」
「フウマさんはお体が柔らかいですね」
「柔らかさが仇にーっ!」

 椅子の背を、腕と体で挟む体勢。

(異世界でサスペンス映画体験~っ!)

 しかも相手は仲間。これは、仲間に裏切り者がいたパターンだ。

(申し訳ないけどトキさん、スパイ役ぴったりだな……)

 穏やかで優しくて皆の仲裁役で、一番信頼されている人こそ、この役に相応しい。更には笑顔が似合う。完璧な配役だ。


「フウマさん。考え事ですか?」
「すみませっ、ぴゃっ!」

 スパイとか言って、と内心で思いつつ咄嗟に謝罪したところで、首筋を撫でられた。

「どうして謝るのですか?」
「えっ、いえ、反射的にっ」
「反射的に?」
「ひっ、トキさんっ、そこだめっ……ぁ、んんッ」

 胸の尖りを緩く摘まれ、身を捩る。

「は、ぁっ、ぁ……」

 腹を撫でられ、そこからまた熱が広がった。

(そうだ……俺、媚薬が……)

 自覚すると更に身体が熱くなり、息が上がる。
 胸に触れていた手が離れ、脇腹や首筋を緩く撫でた。じれったい刺激。身体の奥に熱が溜まり、思考が鈍くなっていく。

「フウマさん。何を考えていらしたのですか?」
「……サスペンス映画の、……俺の世界のお芝居で、こんなふうに、椅子に縛られるシーンが……」

 太股を手のひらが撫で、熱い吐息が零れる。

「一番、穏やかで信頼されてる人が……だいたい、裏切り者で……」
「そうですか。その役に私がぴったりだ、と考えた事への謝罪だったのですね」
「すみません……」
「こちらこそ申し訳ありません。私の事を考えてくださっていたなら、咎める必要はありませんでしたね」

 アールかユアンに触れられた時の事を思い出しているかと、意地悪をしてしまった。


「フウマさんは私の事を、一番穏やかで信頼出来ると思ってくださっているのですね」
「……はい。えっちなこと以外では……」
「では、ご期待に添えるよう頑張りますね」
「へ? ひゃうッ、いっ、あっ」

 胸を摘み上げられ、ぐいぐいと引っ張られる。

「穏やかでなく、信頼出来ない、完璧な裏切り者を演じてみせます」
「こんなえっちな映画じゃなッ……」

 サスペンス、命の危機、拷問は痛いやつ、と訴えると、胸に爪を立てられた。

(痛いけど痛くない拷問……!)

 抓られたり、爪で抉られたり、他の場所なら痛いはずのそれは、ただ強烈な快感を与えてくる。

「ひんッ、ひ、はっ……、あぅッ……」

 指の動きが、穏やかじゃない。普段のトキから考えたらこんな事をするなど、信じられない。
 身体が熱い。全身が、……気持ちがいい。

(完璧な裏切り者を誕生させてしまった……)

 胸を痛いほどに弄られ、軽く達してしまう。それでも手を止めない。もしこれが拷問なら、素晴らしい悪役だ。


 胸ばかり責めていた手が、下へと滑る。

「ひゃん!」

 服越しに自身を掴まれ、高い声が上がった。

「んっ、ぅ」

 咄嗟に唇に力を込め、声を殺す。

「フウマさん。我慢せず、声を出してください」
「でも、教会ですしっ……」

 もうかなり今更だが、これ以上喘ぐわけにはいかない。誰かに聞かれるにしても、一番悪い場所だ。


「ひえっ!」

 突然ベルトとボタンを外され、大事な場所を外に出される。

「……そうですね。神聖な教会で、こんなにいやらしい汁を垂らして、いけない子ですね」

(なんか始まった!)

「こちらも、触って欲しそうにぷっくりと腫れてますよ?」
「んぁっ……んっ、ん……っ」

 胸の尖りの周辺を撫でられ、もう散々触った場所! と心の中で訴える。
 じれったい刺激。指が動く度に、服が先端に擦れて感じてしまう。

「こちらは触ってもいないのに、溢れてきますね」
「……?」

 視線を下に向けると、トキに支えられているだけのの先から、透明の雫が溢れて零れた。

「っ……」

 ボッと顔が赤くなる。
 恥ずかしい。恥ずかしいどころではない。今は上も下も、直接的な快感を与えられていないのに。

「期待だけでこうなってしまうなら、触ったらどうなってしまうのでしょうね?」

(すぐイってしまいますね!?)

 心は元気にツッコミを入れる。だが口を開けば、その瞬間喘がされてしまう事が決定していた。
 うっかり言葉責めスイッチを入れてから、トキがとても愉しそうだ。声も、手も、風真の反応を存分に楽しんでいる。


(あれ……? もしかして、トキさんルート復活した……?)

 今までの悪戯より、悪戯で済まない触れ方をされている。それに、薬を盛られるなど他のルートにあるだろうか。

「また考え事ですか?」
「っ!」

 ぶんぶんと首を横に振る。

「私の事、ですか?」
「!」

 今度はコクコクと頷いた。

「そうですか。でしたら……」

 そっと髪を撫でられる。あれ? と優しい撫で方に気が抜けた瞬間。

「着替えは用意しています。安心して出してくださいね」
「ひぃんッ」

 ぐりっと親指で自身の先端を擦られ、背をしならせた。
 ガタガタと椅子が鳴り、暴れる体をトキが易々と押さえ付ける。

「うあっ、あ、あぁっ――!」

 上と下を容赦なく擦り上げられ、強烈な快感に目の前に星が散る。

(だめだっ、これ、だめっ……)

 がくがくと震え、開きっぱなしの口から唾液が零れる。

「あ、あ、ぁッ」

 きもちいい。きもちいい。
 もうそれしか考えられない。
 あまりの快感にぼろぼろと涙を零し、部屋に響き渡る大声で喘ぎながら、トキの視線を受けるそこから大量の液体を勢い良く吹き出した。

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