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もやもや

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「みんな、俺のからだ目当てなんじゃんっ」

 誰かと恋人になる前から、何度下着を洗った事か。
 トキに抱き上げられて部屋に戻った風真ふうまは、シャワーを浴びながら一緒に下着もバシャバシャと洗っていた。
 綺麗になった下着を見て、ふと思う。

「……いや、目当てにされるほどのものじゃないな?」

 下着も色気のない男物のボクサー。今日は黒で裾に星の模様が入ったものだ。伸縮性があり、小学生の頃に穿いていたブリーフを思い出す。
 鏡を見ても、当然ふくよかな胸はなく、柔らかな肉もない。客観的に考えれば、これでよくえっちな事をする気になったなと思う。

 喘ぐ声も男で、挿れる場所も専用のそれではない。入ったところで可愛くえっちに喘げる自信もない。
 少し感度は良いかもしれないが、あんなに大袈裟に喘がれてはむしろ萎えるだろうし、女の子のように可愛い顔にはなっていないはず。

(……萎えてなかったかも)

 記憶を手繰り寄せれば、三人ともそれなりに服の下で反応していたような気がした。


「なんか分かんないけど……目当てにされてるな……?」

 三人とも男が好きな訳でもないのに、男相手に反応していた。
 何故、と首を傾げてから、男に触れられてひゃんひゃん喘いで早漏並みに達しすぎな自分を思い出す。
 好きになる子は女の子だったはずが、今は男相手に触れられて反応している。偏見はないのだが、まさかここまで抵抗も嫌悪感もないとは。

「男だもんな……気持ちいいこと好きだよ……」

 自分も含め。ぶつぶつと呟きながら体を洗い終え、下着と一緒にバスルームを出た。


 服を着てタオルで髪を拭きながら、鏡を見る。

「でも、……俺の心も、欲しいって言ってたもんな」

 美形でもない、色気もない、そんな自分に欲情して、心まで欲しいと言ってくれた。
 誰もが振り返るだろう美形で、地位もあり、優しくてたくさんの愛を与えてくれる。そんな三人に想われるなど贅沢なこと。

 一緒に過ごす時間の中で、好きになってくれた。由茉ゆまはそう言っていた。
 その気持ちが、嬉しい。心を分けられるものなら、三つに分けて三人に渡したい。そう思えるのは、……まだ誰にも、恋をしていないからだ。


「……好き」

 好きな相手がいるなら、その人だけに全てを渡したいと思うはず。由茉も義兄あにもそうだった。

「好き、好き……う、ううっ……」

 ガシガシとタオルで髪を拭き、呻く。

「好きってなんだーー!!」

 考えれば考えるほど分からなくなる。
 そもそも自分は、頭で考えるより感覚の方が優秀だった。そうだ、感覚だ。

「考えるな、感じろ!」

 とある有名な言葉が、悩みももやもやも吹き飛ばしてくれる。ありがとう、有名な人。
 風真はバッと両手を上げて「ありがとう!!」と叫んだ。

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