上 下
49 / 50

*番外編4

しおりを挟む

「んっ、ぁ……っ」

 胸を弄られて、もうどれくらい経っただろう。
 ベッドに向かい合って座ったまま、指と舌で執拗に責められて。身を捩っても、腰に回された腕で抱き寄せられて、逃げられない。
 胸はもう赤く腫れて、舌先が触れるだけでもジンジンする。

「もっ、やぁっ……」

 爪を立てられ抉られて、その痛みすらも快感に変わる。何度も引っ掻かれてはたまらずに、また胸だけで達してしまった。


「や……っも、そこ、やだぁっ……」

 もうずっとそこばかり。また強く摘まれて、頭の芯まで突き抜けるような快感が襲った。

 最初は何も出ずにイく感覚だけだったのに、今はもう、お腹も脚も俺の出したものでドロドロになってる。
 寛哉ひろやさんの綺麗に割れた腹筋にもかかってしまって、なんだか、マーキングみたい。つい手を伸ばしてお腹に触れてしまった。

「へぇ? 余裕だな?」
「っ! 違っ……いっ、あぁっ、っもぅやだぁっ」
「やめて貰えない理由、分かってんだろ?」
「っ……おれ、が、悪い猫だからっ……ですっ……」
「分かってんじゃねぇか」
「は、ぃっ……」
「お前は誰のものだ?」
「ひろやさ、のっ……寛哉さんの、もの、です……っ、!!」

 ぎゅうっと尖りを摘まれて、ぼろぼろと涙が零れた。

 痛い、きもちいい、痛く……なく、て、今度は出さずに達してしまった。

「ひろや、さっ……ひろやさ、ん、だけの、猫ですっ……」

 ひろやさんだけ。
 ひろやさんだけのねこだから。

 頬を擦り寄せると、いい子だ、とばかりに頭を撫でられた。


 やっと胸から手が離れて、優しいキスが髪に落ちる。
 甘やかすみたいに撫でられて、泣きたいほどに嬉しかった。


 好き、だいすき。


 だいすき、だから……。


「そんなにこれが欲しいか?」
「っ……、ほし、ぃ……」

 後ろ手に寛哉さんのものに触れる。
 震える脚に力を入れて、膝立ちになって脚の間にそれを触れさせた。

 寛哉さんので、俺のなかをいっぱいにして……いっぱい、突いてほしい……。
 奥までぜんぶ、寛哉さんのものにしてほしい……。

「こら。欲しいんじゃないのか?」

 寛哉さんが手に取ったゴムを奪って、ベッドの下に放り投げる。そばにあった他のも、全部払い落としてしまった。
 猫か、って寛哉さんが呆れたように笑う。

「ひろやさんの、ほしい……」

 そっと撫でると、びくりと震えてますます大きくなった。

「このまま、シて……。熱いの……、いっぱい、奥にだして……」

 体の奥まで、寛哉さんでいっぱいにして……。

「っ……、悪い猫だ」
「ひっ、ああッ!」

 腰を掴まれた途端、酷い衝撃が襲う。
 一気に奥まで貫かれて、それだけで達してしまった。

「あ、……熱、ぃっ……」

 ゴムに邪魔されない、寛哉さんの熱。熱くて、溶けてどろどろになってしまいそう。
 背に回した腕でぎゅっと抱きつき、頬を擦り寄せる。入ってるだけで、何度も達してるみたいに気持ちがいい。


 すると突然、寛哉さんの手が痛いくらいに腰骨を掴んだ。そして。

「っ……、やっ……まって、まってぇ……ッ」

 下から思い切り突き上げられて、上げた声は悲鳴に変わった。

「ひぃっ、……ま、まだっ……イったばっかりぃっ……」
「お仕置きして欲しかったんだろ?」
「ッ……!」

 耳元で囁かれ耳朶に歯を立てられて、また出さずに達してしまった。
 イきっぱなしで、苦しい……。狂ってしまいそう……。

 ……でも俺の返事は、ひとつしか許されないんだ。

「は、ぃ……、っ……、ひっああっ」

 胸を噛まれて、中だけでもう何度もイってしまう。目の前が真っ白になって、その度に意識が遠ざかったり引き戻されたりする。


「ぃ、っ……んあっ、あ、っ……?」

 しばらくすると、動きが少しだけ緩やかになって、寛哉さんの唇が瞼に触れた。

「本気で嫌ならそう言えよ。我慢はするな」

 指先が頬を撫でる。
 頭がぼんやりとして、何を言われたか良く分からなかった。

 本気、で……?
 ……本気で、嫌じゃ、ない。
 嫌じゃないから、やめないで。
 何されても大丈夫、だから……捨てないで……。

 目の前の体にしがみつき、頬を擦り寄せる。すると、寛哉さんは困ったような声で笑った。

「そんな怯えた顔するな。お前が何を言おうが暴れて嫌がろうが、怒らねぇし捨てねぇよ。一生離してやらねぇから、安心しろ」

 優しく背を撫でられる。その手が頬に触れて、思わず頬を擦り寄せた。
 大きくて、暖かい手。たくさん撫でてくれる、大切にして、守ってくれる、大好きな手。

「ひろや、さん……」

 名前を呼ぶと、嬉しそうに目を細めてくれる。
 優しくて、ちょっと意地悪で、俺の欲しい言葉をたくさんくれる、寛哉さんが……。

「だいすき、です」

 頬に触れた手にそっと手を重ねて、精一杯笑ってみせた。そういえば、こんな風に二人きりできちんと言葉にしたこと、あったかな。
 寛哉さんは少し驚いたような顔をして、すぐにとても甘い顔をした。

「ああ、俺もだ。好きだよ、みつき」

 その言葉だけで、目の奥が熱くなる。
 堪えようとしたのにすぐにぼろぼろと涙が零れて、そんな俺をきつく抱き締めてくれた。
 背を撫で、髪にキスをして、目元にも頬にもたくさん唇が触れた。

 間近で見つめる灰色の瞳。
 ああ、好きだな……。
 そう思ったら、俺の方からもキスをしていた。


 触れるだけのキスが深いものへと変わり、酸素が足りなくなった頃。

「まあ、本気で嫌がってねぇんなら、いいよな?」
「え? ……っ!?」

 さっきまでの優しい顔とは別人のように、寛哉さんがニヤリと笑った。

「っ……!」

 腰を掴まれたかと思うと、いきなり奥をガツガツ突かれて目の前に星が散る。
 今!? と思ってしまった。
 あの雰囲気で、いきなりこんな、確かに入ったまま止まってるのは俺もつらかったけど!

「やっ、いやですっ、いやですってばっ……!」
「へぇ?」
「っ~~、寛哉さんの意地悪っ」
「そんな俺も好きだろ?」
「好っ……」

 好きじゃない、わけがないけどっ。言葉にはせずにキッと睨むと、寛哉さんは愉しげに笑った。

 俺がいくら嫌がっても大丈夫だと示そうとする優しさ……だと、分かってる。分かってる、けど。
 感じる場所ばかりを突かれて、抉られて、イったのにまだ突かれて。嫌だと言ってもやめてくれない。やめてと言ったらキスで誤魔化された。

 イきっぱなしで、体が馬鹿になったみたいだ。
 体中が性感帯になったみたいに、肌が触れる感触すらも気持ちがよくてたまらない。


「っ……な、なんか、きちゃ……ぅ、っ……こわいっ……」

 快感が怖いくらいに膨らんで、震える俺を寛哉さんはきつく抱き締めてくれる。

「大丈夫だ、そのまま、……イけ」
「ッ――!!」

 低く囁かれる声。感じたことがないほどの快感の波が襲い、目の前が真っ白になる。

 びしゃびしゃと酷い水音がして、お腹のところが熱い。体の奥にも火傷しそうなほどの熱を感じて……。

 覚えているのは、そこまでだった。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

幻の背《せな》

BL / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:24

溺愛極道と逃げたがりのウサギ

BL / 連載中 24h.ポイント:85pt お気に入り:787

ノスフェラトゥの花嫁

BL / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:150

Sランクの年下旦那様は如何でしょうか?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:166

-Body Language→

BL / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:65

後追いした先の異世界で、溺愛されているのですが。

BL / 完結 24h.ポイント:177pt お気に入り:1,680

喫茶つぐないは今日も甘噛み

BL / 連載中 24h.ポイント:241pt お気に入り:706

うちの家族が過保護すぎるので不良になろうと思います。

BL / 連載中 24h.ポイント:191pt お気に入り:1,961

処理中です...