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*番外編2
しおりを挟む(※シロが拾われた日の話。シロ視点)
「っ……、っ」
キスなんていつぶりだろう。息の仕方も忘れている。
航はあまりキスをしてくれなかったけど、元からキスをするのは、好き。
暖かくて頭がふわふわする。
唇を触れさせるだけで、舌が触れるだけで、俺は愛されてるんだ、って嬉しくなる。
キスが好きだからなのか……知らない人となんて、と思っていたのに、大丈夫みたいだ。
俺がこの人に抱かれれば、航はきっと褒めてくれる。
だから、頑張らなきゃ。
この人は酔っていたから、もしかしたら、と思って自分からキスをした。玄関だと追い出されそうで、寝室に入ったタイミングで。
ただ押し付けるだけのキス。俺にはそれでも精一杯だった。
それが良かったのかもしれない。彼は驚いた顔をした後で、可愛いな、と言って俺の腰を引き寄せキスをした。
俺がしたのとは比べ物にならないくらい、深いキス。
「ん、……ふ、……」
上顎を舌先で擽られれば、背筋がぞくぞくする。頭の芯が痺れるみたいな感覚が、気持ちよくてたまらなかった。
そのままベッドへと連れて行かれて、あっという間に服を脱がされた。きっとこんなことは慣れているんだろう。とてもモテそうな、大人の男の人だ。
「ふ、っ……、っ」
向かい合わせで座り、彼の唇が首筋や鎖骨に触れる。擽ったさに首を竦めると、そんな俺を、彼は目を細めて見つめた。
唇が胸に触れ、もう片方は手のひらでやんわりと揉まれる。
……どうしてこんなところを触るのだろう。航だって最初の頃だけしか触らなかった。女の人じゃないから、触っても柔らかくも何もないのに。
「っ……!」
そんなことを思っていると、突然強い快感が襲った。
「ひっ、ぅっ……、っ……ッ」
胸を甘噛みされて、もう片方を抓られ、背を撓らせた。
なに、と思っている間にも与えられる刺激。脳まで駆け上がるような快感。刺激を与えられる度に声が零れそうで、慌てて口を押さえた。
脇腹や太股にも手を這わされ、ぞくぞくする快感に思わず身を捩って逃げを打つ。
「嫌か?」
ぴたりと動きが止まり、俺は慌てて首を横に振った。
嫌じゃない。だめ、やめないで。
そう伝えたくて、彼のシャツを掴む。
今やめられたら……。焦りが恐怖に変わり、慌てて彼から離れる。
この人は男でも抱ける人だ。裸を見ても、ない胸に触れても、普通に行為を進めようとする。だから、大丈夫。
ベッドに俯せて、お尻を彼の方へと向ける。腰を上げ、もう挿れてほしい、と示すように自分の指でそっと開いてみせた。
……顔が熱い。こんな誘い方、航にもしたことない。
いつも俺の方が航がほしくなって、付き合ってくれる航の上に乗って自分で挿れているから。
こんなことをして、萎えたりしないだろうか。
どこかで見た誘い方にあったけど……。
……どうしよう……、怖い……。
「へぇ、意外と大胆だな」
意地悪な声がして、脚の間を撫でられる。そのまま俺のものまで撫でていく指先。それだけで達しそうになり、慌てて堪えた。
……大丈夫。まだ、何も出てない。大丈夫だ……。
安堵しているうちに、たっぷりとローションを絡めた指が入ってくる。
いつも自分で準備を済ませているから、誰かに触れられるのは久しぶりだ。俺の指より太くて、節がごつごつしてて……ただ入ってるだけで、とても気持ちがいい。
……航のじゃない、のに。
自分でしても、こんな感覚にはならなかった。
ああ……、そういえば、さっき航の友達に抱かれたんだった。体がまだ敏感になってるのかな。
二人でなんて初めてで、何回されたか覚えてないや……。だから、航じゃないのに、こんなに感じちゃうんだ。
すんなり指が入ってしまったせいで、この人もおかしいと思ったみたいだ。でも、酔っているから分かってないのか、何も言ってこない。
「っ……」
指を少し動かされただけで、奥が疼く。
「っ、ふ……っ、ぅ……ッ、っ……!」
「ん、ここか?」
「ッ……! っ、んっ、ッ!」
すぐに感じる場所を見つけられて、指先で小刻みに叩かれる。たまらない快感が背筋を駆け上がった。
慌てて自身を掴む。……大丈夫、まだ、イってない。
でも、中がぎゅうぎゅう締まって、指を締め付ける度に達したような感覚が何度も襲う。
だめ、だ……このままじゃ、おかしくなる……。
「っ……、んんっ」
彼の手に触れ、もう挿れて、と示すように腰を揺らす。それだけでも感じてしまい、ガクガクと脚が震えた。
「っ、……なるほど、な」
小さく呟かれた声。
カサッと音がしてそっと振り向けば、シーツの上に四角いものが落ちていた。
……この人、きちんとゴム付けてくれるんだ。これ、高いのに。
航とならそのままがいい、けど……やっぱり航以外の人には、中に出されたくない。
「ッ――!!」
突然衝撃が襲い、枕に顔を押し付ける。息が出来ない、けど、そうしないとたえられなかった。
俺が慣れてると思ったのか、一気に挿れられたみたい。……そうしてほしかったから、良かった。
中がいっぱいに広げられて、お腹が苦しい。こんなに大きいのは初めてだ。
「ッ……! っ、ん……ッ、っ!」
腰を掴まれ、激しく揺さぶられる。ガツガツと音がしそうなくらい奥を突かれて、目の前に星が散った。
奥も浅いところも、中をぜんぶ突かれてるみたいで、体が何度も痙攣する。出さないように押さえてるのに、もう、ずっと達してるみたいに。
「ぅ、っ……んッ! っぅ……!」
「っ、声、我慢するな」
……あ、余裕のない声、だ。ちょっと嬉しい……。
でも俺は、ふるふると首を横に振った。
……声、出したい……。
でも、男の声なんて、きっと萎えてしまう。
一度出たら止まらなくなるから、だめ。煩くしちゃだめだ。
俺は口を開いたら、余計なことまで言ってしまうから。
枕を抱えて顔を埋めて、ふるふると首を横に振り続ける。
すると突然動きが止まって。
「可愛いな」
大きな手が、髪を撫でた。
チュ、と小さな音がする。
……彼に愛される人は、きっと、幸せだ。
こんなふうに、優しく撫でられて、キスをされて。
でも……俺の幸せは、航に愛されること、だから。
きっと航も、またこんなふうに愛してくれる。
また、好きだって言って、優しく触れてくれる。
この人と上手くいけば、きっと。
きっと航は、迎えにきてくれるから……。
だから、この人に嫌われないようにしなくちゃ。
この人の傍にいられるぶんだけ、航と一緒にいられる。
たくさん抱いて貰って、飽きられないように、がんばらなくちゃ。
他の人には出来ないくらい思いっきり突かれても、俺は大丈夫だから。
他の人はたえられないことも、俺はたえられるから。
だから、好きなだけ、好きなことをしてほしい。
いっぱい役に立つから。何でもするから。
だから、俺のこと、捨てないで。
だから……、そんなに優しく、しないで……。
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