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理由4
しおりを挟む「でも……、……許される、なら……あなたに愛されていたかった……」
飼い猫のように愛されて、甘やかされて。
蕩ける蜜のように甘く幸せな日々だった。
とても、大切にしてくれた。
ここに居ても良いのだと、言ってくれた。
ただ愛されるだけの猫になりたかった。
好きになってはいけなかった。
好きになりたくなかった。
優しくされたくなかった。
本当は、ずっと……。
「一緒に、いたかったっ……」
愛された分、自分も愛したかった。
たくさん愛して、愛されて、……いつかそんな日が来るかもしれないと、錯覚していたかった。
「居ればいいだろ」
その言葉に、ふるふると首を横に振る。
「だって、俺はっ」
「過去の男の事なんざどうでもいいんだよ」
「っ……、でも、俺……きっと寛哉さんに、迷惑かける、から……」
また、同じ事をしてしまう。
また、迷惑をかけてしまう。
鬱陶しいくらいに執着して、怒らせて……嫌われて……。
……もう、捨てられたくない。独りは……怖い……。
「馬鹿。束縛だの執着だの愛が重いだの、お前が俺に勝てるわけねぇだろ?」
震えるシロの髪に触れると、ビクリと震えて。だがすぐに、ポカンとした顔で寛哉を見上げた。
「帰って来るか心配で待ち伏せするくらいなら、最初から鎖で繋いで監禁しとけ。どこで何してるか心配ならGPSくらい仕込んどけ」
呆れたように言う。それが出来ずに執着だなど笑わせる。
「ま、置いてかれたらどうしようもねぇけどな」
枕元に放られていた携帯を、トン、と指先で叩く。
シロの目がぱちぱちと瞬いた。
「お前の愛が重いってんなら、俺をそこまで不安にさせねぇよな?」
どこで何をしていても、信じられるくらいに。
ニヤリと意地悪く笑う寛哉を、シロは呆然として見つめた。……それでも、口が勝手に言葉を零す。
「…………はい」
「聞こえねぇ」
「っ……はいっ」
でも……。
今言った事は、本当だろうか。
同じだけの執着を、向けてくれるのだろうか。こんな俺に、本当に……?
「逃がさねぇから覚悟しとけよ?」
「っ……」
間近で見据えられ、コクコクと頷く。
逃げられない――。
本能で感じた。まるで、狩りの獲物になったかのように。
ゾクリとする恐怖と……高揚感。
俺はもう、彼のものだ……。
愛されて、いいのだろうか。
愛して、いいのだろうか。
許されるだろうか。
……許されないとしても。
それでも、このひとを、愛したい。
だって俺はもう、この人のものだから……。
そっと見上げた先で、綺麗な銀月色をした瞳が、満足そうに笑った。
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