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*強情な奴2

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 激情が過ぎ、パタリとシーツの上にシロの手が落ちる。
 視線を落とせば、シロはすっかり意識を飛ばしてぐったりとしていた。

「……やりすぎた、か?」

 と言っても、今まで一度で意識を飛ばした事はない。普段の方がもっと激しい行為をしているというのに。
 ……いや、シロがそちらの行為に慣れているとしたら、今日の慣れない行為で疲れてしまったのかもしれない。焦らさせる事に体が疲れて……。

「…………精神的に疲れた、か……?」

 言葉にすると、自分の精神にダメージが来る。一緒に居ると疲れる、と言われたような錯覚で。

 落ちそうな気持ちを、深い溜め息と共に吐き出す。シロを見れば、心地よさそうに寝息を立てていた。

 ――可愛いな……。

 何度思ったか知れない。シロは可愛い。普段は猫のように丸まって眠っているシロが、仰向けで両手を広げて眠っている。可愛い。……この体勢は良くない。

 ガシガシと頭を掻き、ベッドから降りる。このままではまたその気になりそうだ。そっと布団を掛けてやる。
 ひとまず頭と体を冷やしてから、シロの体を拭いてやろう。

 動くと、ピリ、と背に感じる痛み。バスルームの鏡に映せば、幾つもの引っ掻き傷が出来ていた。
 自然と口元が緩んでしまう。頑なに声を出さず、極力寛哉ひろやに触れないようにしていたシロが、こんなに痕を付ける程に理性を飛ばして悦がってくれた。今までなら、怯えて決して爪を立てる事はなかっただろう。

「あー……、どうすっかな……」

 ここまで嬉しい気持ちになるとは思わなかった。ここまでシロに対して強い感情を抱くとは思って……いや、気付いていなかった。気付いたところで態度を変えたかと言われたら、変えなかっただろうが。

 どうするか。
 こんなに可愛いとは思わなかった。
 ひとつ息を吐き、冷たいシャワーを浴びる。汗と共に熱も悩みも、全て流れてしまえと思いながら。

 ひとまずは、シロがまた怯えてしまわないように、この傷は見せないようにしないと。

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