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*Day.3-4

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 机に腕を付き、つま先立ちで腰を上げる。しっかりと腰を掴まれている為、つらさはないが……。

(机に乗り上げる罪悪感……)

 つい今し方までオスカーが仕事をしていた執務机に、上半身をほぼ乗せている状態。いや、その前には座ってしまったが。

「んっ……」

 閉じた太股に、熱いものが押し付けられる。まだ芯を持たないそれが太股の間に入り込み、ぶるっと身を震わせた。
 そのままゆっくりと前後されると、何とも言えないくすぐったさが湧き起こる。

(なんか……なんか、なぁ……)

 腰を掴まれ背後からする時の体勢で、体内に圧迫感がない不思議な感覚。キスも前戯もなく、理性もしっかりしている中での行為。
 今まで太股を触られてやたらと感じていたのは、言葉と前戯で身体が高められていたからだと知った。


 そう考えているうちに、太股の内側を擦る熱いものが、徐々に芯を持ち始める。

(……これは、挿れられるより……)

 ぬちゃぬちゃと粘着質な音が響き始め、頬が熱くなる。
 普段は理性も思考もぐちゃぐちゃになった辺りで聞く音だが、素面で聞くとますます恥ずかしい。挿れられている時より音が大きく聞こえ、羞恥のあまり机に付いている腕がプルプルと震えた。

「腕、つらいか?」
「えっ、いえっ、大丈夫ですっ」
「うつ伏せた方が楽なら」
「大丈夫ですっ、……その体勢だと、本当にしてるみたいで恥ずかしいので」
「そうか」

 ちゅ、と耳にキスをされ、動きが再開する。

(……甘い)

 何だかいつもより甘い気がする。きっとオスカーも今、甘い顔をしているのだ。背後からで良かった。正面からだと、抱いて、と言ってしまったかもしれない。


 そっと息を吐いた暖人はるとが、オスカーには何となく面白くなかった。普段は太股を撫でるだけでもビクビク震えるくせに、何故今は平然としているのか。
 腰を掴んでいた手を片方外し、服の上からでも分かる胸の尖りをぎゅうっと摘み上げた。

「ひんっ! っ……オスカーさんっ、そこはしなくていいですからっ」
「お前の声がないと勃ちが悪い」
「勃ちって……ひゃぅんっ」

 今度は両手で軽く捻り上げると、可愛い声が上がった。

「オスカーさん、だめっ、ぁ、ぁっ」

 がくりと力の抜けた体をそっと机に俯せ、下敷きになり大きく動かせない代わりに、爪でカリカリと先端を引っ掻く。

「あぅっ、ぃ、ぁっ、ぁ……」

 布越しの強すぎない刺激。規則正しい動きで引っ掻かれ続け、暖人は止めどなく甘い声を上げながら身を捩った。

 机の上で前へ逃げるような動きに、オスカーはそっと目を細める。
 この声と、過ぎる快楽から逃れようとする仕草。これが欲しかった。
 太股の間で硬度を増していく自身。何度も擦り、ゆっくりと位置を変えた時。

「っ!?」

 びくりと大きく跳ねた暖人は、バッと両手で口を押さえた。

「どうした?」
「っ……だって、声……」
「外には聞こえないようになってる。安心して出せ」
「……ほんと、ですか?」
「ああ」

 暖人はそっと胸を撫で下ろす。それもそうだ。重要な話をする部屋ならきっと、防音もしっかりしている。
 今頃我に返ったのは、オスカーの熱いモノが突然上に上がって来たからだ。それで大きな声が出てしまいそうだったから。


 オスカーは暖人の髪にキスをして、動きを再開する。が。

「んぁッ、っ……オスカーさんっ、そこはっ」
「一緒にするんだろ?」
「でもこれっ……」

 一緒にといっても、手でされると思っていた暖人は戸惑う。その間も熱いモノが脚の間を行き来して、暖人自身の裏筋を擦り上げていく。

「本当にシてるみたい、か?」
「ふぁっ、んっ……」

 暖人はコクコクと頷いた。
 背後から覆い被さり腰を揺らされ、粘着質な水音が響く。それはもはや、行為そのものだった。

「ハルト」
「んんっ……」

 低く甘い声で囁かれ、ぞくぞくと背筋が震える。挿られていないというのに、奥まで突き上げられたような快感が襲った。

「あっ、ぁ……オスカー、さんっ……」

 擦られる度に前と後ろを同時に攻められる錯覚。
 背中に感じる体温と、耳元に触れる熱い吐息。

(オスカーさんも、感じてくれてる……)

 それが嬉しくて、震える脚にぎゅっと力を込めた。

「っ……」

 突然絞め上げられ、オスカーは小さく呻く。
 ナカとはまた違う気持ち良さ。暖人の柔らかな筋肉と滑らかな肌が、こんなにも感じさせてくれるとは想像以上だった。

「っ、は……気持ちいいな」
「!」

 言葉にするオスカーに、暖人はびくりと跳ねる。熱を孕んだ声でそんな事を言われては……。

「ふぁ、あ、ッ――……」

 背筋を駆け上がる快感に、たまらずに熱を吐き出してしまった。





「待ってろ」

 オスカーはそう言って、廊下側とは逆の扉へと入って行った。
 暖人は机に突っ伏したまま、縁に指を引っかけ何とか座り込むのを耐える。このまま座り込んでは、オスカーの出したものが床に付いてしまう。

 暖人の出したものは、オスカーが手で受け留めたおかげで、床や机には付いていないだろう。と、願っている。
 オスカーのものは、今……、太股の間を伝っている。オスカーが手でザッと拭ってくれたのだが、残っていたようだ。
 ……それか、尻の間に押し付けるように出されたものだから、少し入ってしまったのか。

(普通のえっちじゃん……)

 もはや、それ。
 暖人はぐりぐりと机に額を擦り付けた。


「……オスカーさんの、お仕事机で……シてしまった……」

 時間がないから、じゃない。何自分から服を脱いでいるのか。冷静になった今、ここから見える景色の何と罪深いこと。

(メルヴィルさん、騎士のみなさん、ごめんなさい……)

 真面目な話をする場所で、こんな事をしてしまいました。暖人はううっと呻きながら懺悔した。

 そこでふと、あるものに気付く。
 机に突っ伏したまま、サァ……と顔を青くした。

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