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31話 The fun is mine④
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「応ッ!」
教団の信徒たちが動き出す。
黒染めのスーツたちが、火の入った気球のようにみるみるうちに膨張していく。
「ははは!行くぞ我が同胞ァッ!!西道流秘術:動潤により、我らは比類なき力を手に入れたのだァッ!」
「そしてェ!この多層式防盾:手引塀が合わされば、千人力にもなろうと言うものッ!」
とりわけ巨大な体躯を誇る信徒の一人がそう叫ぶと、自らが背負っていた甲羅のような装甲板を右手で外し前面に突き出す。するとソレは金属特有の高い音を立てながら、ちょうど頭から脛ほどまでを覆うように広がった。
同時に全体重を乗せた突進。店入口から見て右側にいる松野に向けて噴進弾と化した巨漢が迫る。
「散夢破羅…展開」
刹那、男の下顎は音速を超えた撃撲によって装甲ごと削り取られ、調理場の壁にめり込む。店主:立向居の六角棒による打撃である。
念のため申し上げておくと、”漢”立向居は人形による符術を使用することが出来るが、それは身体能力を向上させるものではない。先程の立ち回りは単純に彼の膂力が成せる技であった。信徒たちは想定外の事態にたじろぐ。
「ひっ、ひえ~」
壁越しに様子を伺っていた沢村美幸は堪えきれず驚愕の声をあげた。
彼女のすぐ左隣の銃眼から床へ赤黒いシミが広がっていく。高速の物体が衝突した際に生じる断熱圧縮に似た現象により、男の骨片とともに突き刺さった装甲のかけらはプスプスと細い煙を吐いていた。
「むっ!他に誰ぞ居るのか?」
店に押し入るでもなく、入口から少し離れたところに陣取っていた軽雲は、部下に確認を促す。
「ハッ、どうやら店の奥にはおなごが居るようです」
「ほう…おなごか…古今東西、漢はおなごに弱い。ガラ(身柄)を押さえて、まずは漢どもの気力を削ぎ、そこから不信心を責め苛みながら嬲るもまた一興」
軽雲は邪悪な思考を巡らせ、部下達にに沢村を捕らえるよう命じる。
「覚悟しいや…」
婦女子を人質に取るという”策”に活路を見出した信徒たちは途端に笑みを浮かべ、悲鳴が聞こえた調理場の壁を破壊するため殺到する。
「美幸君ッ!撃ちなさぁぁいッ!」
機関短銃や手槍で武装した信徒たちを肉塊にしながら、立向居が叫ぶ。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
同じく絶叫しながら沢村は小銃の引き金を引いた。
教団の信徒たちが動き出す。
黒染めのスーツたちが、火の入った気球のようにみるみるうちに膨張していく。
「ははは!行くぞ我が同胞ァッ!!西道流秘術:動潤により、我らは比類なき力を手に入れたのだァッ!」
「そしてェ!この多層式防盾:手引塀が合わされば、千人力にもなろうと言うものッ!」
とりわけ巨大な体躯を誇る信徒の一人がそう叫ぶと、自らが背負っていた甲羅のような装甲板を右手で外し前面に突き出す。するとソレは金属特有の高い音を立てながら、ちょうど頭から脛ほどまでを覆うように広がった。
同時に全体重を乗せた突進。店入口から見て右側にいる松野に向けて噴進弾と化した巨漢が迫る。
「散夢破羅…展開」
刹那、男の下顎は音速を超えた撃撲によって装甲ごと削り取られ、調理場の壁にめり込む。店主:立向居の六角棒による打撃である。
念のため申し上げておくと、”漢”立向居は人形による符術を使用することが出来るが、それは身体能力を向上させるものではない。先程の立ち回りは単純に彼の膂力が成せる技であった。信徒たちは想定外の事態にたじろぐ。
「ひっ、ひえ~」
壁越しに様子を伺っていた沢村美幸は堪えきれず驚愕の声をあげた。
彼女のすぐ左隣の銃眼から床へ赤黒いシミが広がっていく。高速の物体が衝突した際に生じる断熱圧縮に似た現象により、男の骨片とともに突き刺さった装甲のかけらはプスプスと細い煙を吐いていた。
「むっ!他に誰ぞ居るのか?」
店に押し入るでもなく、入口から少し離れたところに陣取っていた軽雲は、部下に確認を促す。
「ハッ、どうやら店の奥にはおなごが居るようです」
「ほう…おなごか…古今東西、漢はおなごに弱い。ガラ(身柄)を押さえて、まずは漢どもの気力を削ぎ、そこから不信心を責め苛みながら嬲るもまた一興」
軽雲は邪悪な思考を巡らせ、部下達にに沢村を捕らえるよう命じる。
「覚悟しいや…」
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「美幸君ッ!撃ちなさぁぁいッ!」
機関短銃や手槍で武装した信徒たちを肉塊にしながら、立向居が叫ぶ。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
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