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第20.5話 番外編:松野のおっさんと与太者
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松野隆雄は企業に雇用される、いわゆる給与所得者である。
3月は年度末も近いとあって、彼の勤め先も繁忙期に突入していた。
松野は、デスクから腰をさすりながら、おもむろに立ち上がると、
「七島にいってくるよ」※
と同僚に声をかけ職場から一時離脱した。
(ショカコーラ残ってるかなぁ)
彼はショカコーラの常用者であった。
ショカコーラとは、エーステライヒで製造されている、超!!カフェインを配合した豆練菓子である。
著者が、本作品でルビを多用する振仮名中毒であるように、この國において労働中毒の人間が占める割合は非常に高いものであった。
であるからして、徹夜上等の会社員たちはこぞってショカコーラを”服用”する。
「ショッカ♪ショッカ♪ショカコ⤴――ラ⤵♥」
中年松野、年甲斐もなくはしゃぐ。
それも致し方ないことだろう。なにせ8時間ぶりの休憩であるし。
七島は勤務地の道をはさんだ反対側、近くて便利な”お店”。
店に足早に入ると、入り口手前の商品棚を凝視する。
(あった――――――――ッ! うひょ―――――――やったね♪)
すかさず円盤状の缶を2つと、覚醒用の切紙を掴み会計に持っていく。
会計の前には先客がいた。
丁度先程まで松野が作成していた資料:棒グラフのような不均等な”タッパ”の男3人衆である。
(早くショカ キメたい 早くショカ キメたい 早くショカ キメたい)
松野、焦る。
しかし男たち、何を思ったのか女性店員に絡んでいる。
「僕たち未成年じゃありませ―――――――ん♥」
「酒・煙草・・・あと女ァ。なんでもしってるぜぇ――――藁藁藁」※
「客に売れねぇもん置いてんじゃねぇよボケナスゥ⤴」
店員、無論困惑―――。
しどろもどろの彼女の対応、さらに増長する与太者ども。
数分経って、松野のイラつきは頂点に達した。
「君たち・・・・・」
男の一人の肩を叩く。
「えッ何・・・・えっ・・・」
与太者はそう言ったかと思うと、突然 膝を折り床と接吻した。
残りの二人が驚愕の表情を見せながら、松野を凝視する。
「お仲間さん、倒れてますよ?」
「なんだぁコイツ!カズっちに何したァ!!」
長髪の男が拳を突き出し、松野の左肩に触れる・・とその瞬間、身体はそのまま肩ごと後方に下がり、その反動とともに前に出てきた中年の右手掌底が男の顎を撃ち抜いた。
「うげッ!」
強い衝撃を受けたためか、打撃部を覆った男の指の隙間から大量の血が零れる。
「これ、会計お願いします」
呆然とするもう一人の男を尻目に床に落ちた商品を拾って、店員に差し出す。
「お・・・お会計・・1,030エソになります・・・」
颯爽を店をあとにする松野に、店頭で新聞を読んでいた男性が声をかける。
「お兄さん・・・今の、國体術でしょ?やりますねぇ!」
「あ、ども・・・」
時間は有限、時には時短も必要だと再認識した松野であった。
※七島《ななとお》・・・各地に点在する雑貨店。以前は朝七時から夜十時まで開店していることを売りにしていたが、やがて終日営業するようになってしまった悲しい存在。なぜ? 利便性の向上が、すなわち(七島の従業員の)幸福への道となる訳では(勿論)ない。
そのことに対して憂いを抱いた”著者”であった。
※藁藁・・・笑い・滑稽さを示す表現。
3月は年度末も近いとあって、彼の勤め先も繁忙期に突入していた。
松野は、デスクから腰をさすりながら、おもむろに立ち上がると、
「七島にいってくるよ」※
と同僚に声をかけ職場から一時離脱した。
(ショカコーラ残ってるかなぁ)
彼はショカコーラの常用者であった。
ショカコーラとは、エーステライヒで製造されている、超!!カフェインを配合した豆練菓子である。
著者が、本作品でルビを多用する振仮名中毒であるように、この國において労働中毒の人間が占める割合は非常に高いものであった。
であるからして、徹夜上等の会社員たちはこぞってショカコーラを”服用”する。
「ショッカ♪ショッカ♪ショカコ⤴――ラ⤵♥」
中年松野、年甲斐もなくはしゃぐ。
それも致し方ないことだろう。なにせ8時間ぶりの休憩であるし。
七島は勤務地の道をはさんだ反対側、近くて便利な”お店”。
店に足早に入ると、入り口手前の商品棚を凝視する。
(あった――――――――ッ! うひょ―――――――やったね♪)
すかさず円盤状の缶を2つと、覚醒用の切紙を掴み会計に持っていく。
会計の前には先客がいた。
丁度先程まで松野が作成していた資料:棒グラフのような不均等な”タッパ”の男3人衆である。
(早くショカ キメたい 早くショカ キメたい 早くショカ キメたい)
松野、焦る。
しかし男たち、何を思ったのか女性店員に絡んでいる。
「僕たち未成年じゃありませ―――――――ん♥」
「酒・煙草・・・あと女ァ。なんでもしってるぜぇ――――藁藁藁」※
「客に売れねぇもん置いてんじゃねぇよボケナスゥ⤴」
店員、無論困惑―――。
しどろもどろの彼女の対応、さらに増長する与太者ども。
数分経って、松野のイラつきは頂点に達した。
「君たち・・・・・」
男の一人の肩を叩く。
「えッ何・・・・えっ・・・」
与太者はそう言ったかと思うと、突然 膝を折り床と接吻した。
残りの二人が驚愕の表情を見せながら、松野を凝視する。
「お仲間さん、倒れてますよ?」
「なんだぁコイツ!カズっちに何したァ!!」
長髪の男が拳を突き出し、松野の左肩に触れる・・とその瞬間、身体はそのまま肩ごと後方に下がり、その反動とともに前に出てきた中年の右手掌底が男の顎を撃ち抜いた。
「うげッ!」
強い衝撃を受けたためか、打撃部を覆った男の指の隙間から大量の血が零れる。
「これ、会計お願いします」
呆然とするもう一人の男を尻目に床に落ちた商品を拾って、店員に差し出す。
「お・・・お会計・・1,030エソになります・・・」
颯爽を店をあとにする松野に、店頭で新聞を読んでいた男性が声をかける。
「お兄さん・・・今の、國体術でしょ?やりますねぇ!」
「あ、ども・・・」
時間は有限、時には時短も必要だと再認識した松野であった。
※七島《ななとお》・・・各地に点在する雑貨店。以前は朝七時から夜十時まで開店していることを売りにしていたが、やがて終日営業するようになってしまった悲しい存在。なぜ? 利便性の向上が、すなわち(七島の従業員の)幸福への道となる訳では(勿論)ない。
そのことに対して憂いを抱いた”著者”であった。
※藁藁・・・笑い・滑稽さを示す表現。
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