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第14話 おつかいモンスター
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「ヤマダ様!我らの村に着きましたぞ!」
村長の大声が響く。
「おお~ここが!」
俺は村の衆とともに藪を掻き分けて彼らのテリトリーに入る。
泥煉瓦を組んだものや土壁に茅葺き屋根がのったものなど建物がまばらに並んでいる。
建物の周りや通路部分以外は全体的に背の低い雑草が生い茂っている。通路は草木を通るためだけに掻き分けたようなもので、当然舗装はされていない。その様はまるで獣道を思わせるものだった。
建物の近くまで足を踏み入れるとすぐに、巨大な粘菌のような物体が目に入った。
ソレは大きさは牛ほどもある透明な物体で呼吸をしているのか、ゆっくりと上下に動いている。
また表面は滑らかで近寄って見ると少し黄色がかっていた。体内には臓器なのか、ゾウリムシのように丸い斑点が浮いている。
「あれは…?」
「ウガリという、おつかい魔物ですね。もしかしてご存じない?」
「ええ…お恥ずかしながら」
隣にいた男が少し不思議そうに首をかしげつつも説明してくれた。
「あれは材料を食べさせると体内で道具を生成してくれるんですよ。適当なところをちぎり取って食べることもできます。もっとも村にとって大事なものなので飢饉のときなど以外にはたべませんけどね。」
「その…獰猛だったり、危険はないんでしょうか、駆除したりは?」
「とんでもない!おつかいモンスターは貴重なものです。特にウガリは村同士の友好や婚姻の証として贈られたりもするんですよ。マラグンガンなど野生のものの中には我々の手には負えないものもありますが…」
なるほど、牛や羊のような家畜として飼っているのか。見た目はゲームの敵”スライム”にしか見えない…。まぁ俺はゲームをした経験は殆どないし、友人の家に遊びにいった時に少しした程度なのでスライムがどんな生き物という設定なのかは分からないが、スライムが人間の村の中を悠然と移動しているのは違和感を感じるものだった。
「ほら、あそこではレンガをつくってますね」
男が俺に声をかける。
視線を移すと、2体のスライム…もといウガリが並んでいる。
どうやってレンガを作っていくのかまじまじと見ていると、女性たちが談笑しながら粘土と水、砂と藁のような茎が中空の植物の束をスライムに突っ込んでいく。
スライムは投入された材料を体内で押しつぶしたりしているのか、激しくクネクネとした蠕動運動を繰り返し成型されたレンガをブピッッという音とともに後端からひり出した。
出てきたレンガはゴザを敷いた上に綺麗に並べられる。これを日干しして建材として使用しているのだろう。
スライムの周りを、頭に花飾りをつけた子供たちが笑いながら駆けまわったり、スライムを撫でたりしている。
子供たちの様子を見ると、スライムは村の生活に深く関わっていると同時に、村人たちはスライムに全く恐れを抱いてはいない、むしろ村の資源として大事に扱っているということがよく分かった。
「これはす、凄いですね…」
「でしょう?おつかいモンスターによって我々の生活がつくられている、神秘的な光景だぁ…」
男はスライムの仕事ぶりに満足していたのか、恍惚な表情で目を細めながらそう言った。
「あのスライムを使えば薬剤や武器を大量生産できそうだな…とでも考えているのかい?」
突然の独鈷杵ボム太郎の声…。俺に巣くう肉塊”ぷわふも”も目を覚ましていたようだ。
「君はハイエルフに敗けたみたいだね」
”ぷわふも”のその余計な一言は、村の様子に興奮していた俺を一気に現実へ引き戻した。
「いや、敗けたのは”俺たち”だ。加えて言うと、俺たちはまだ命を繋いでいる。だから、再戦の機会もあるだろうし奴を屠る準備をする時間もある」
「ふぅん…それはえらく前向きなのだ」
”ぷわふも”は俺に嘲笑するように言った。
「ポジティブシンキングは俺の長所の一つだ。言い換えれば楽観視する傾向があるということで短所とも言えるがな」
「うーむ、メラヒポのくせに冷静な自己分析するとは生意気なのだ…しばらく休む」
”ぷわふも”はそう言うと黙りこくってしまった。
「あら…貴方が例のお客人?」
鈴のように澄んだ声。俺を呼んでいるようだ。
村長の大声が響く。
「おお~ここが!」
俺は村の衆とともに藪を掻き分けて彼らのテリトリーに入る。
泥煉瓦を組んだものや土壁に茅葺き屋根がのったものなど建物がまばらに並んでいる。
建物の周りや通路部分以外は全体的に背の低い雑草が生い茂っている。通路は草木を通るためだけに掻き分けたようなもので、当然舗装はされていない。その様はまるで獣道を思わせるものだった。
建物の近くまで足を踏み入れるとすぐに、巨大な粘菌のような物体が目に入った。
ソレは大きさは牛ほどもある透明な物体で呼吸をしているのか、ゆっくりと上下に動いている。
また表面は滑らかで近寄って見ると少し黄色がかっていた。体内には臓器なのか、ゾウリムシのように丸い斑点が浮いている。
「あれは…?」
「ウガリという、おつかい魔物ですね。もしかしてご存じない?」
「ええ…お恥ずかしながら」
隣にいた男が少し不思議そうに首をかしげつつも説明してくれた。
「あれは材料を食べさせると体内で道具を生成してくれるんですよ。適当なところをちぎり取って食べることもできます。もっとも村にとって大事なものなので飢饉のときなど以外にはたべませんけどね。」
「その…獰猛だったり、危険はないんでしょうか、駆除したりは?」
「とんでもない!おつかいモンスターは貴重なものです。特にウガリは村同士の友好や婚姻の証として贈られたりもするんですよ。マラグンガンなど野生のものの中には我々の手には負えないものもありますが…」
なるほど、牛や羊のような家畜として飼っているのか。見た目はゲームの敵”スライム”にしか見えない…。まぁ俺はゲームをした経験は殆どないし、友人の家に遊びにいった時に少しした程度なのでスライムがどんな生き物という設定なのかは分からないが、スライムが人間の村の中を悠然と移動しているのは違和感を感じるものだった。
「ほら、あそこではレンガをつくってますね」
男が俺に声をかける。
視線を移すと、2体のスライム…もといウガリが並んでいる。
どうやってレンガを作っていくのかまじまじと見ていると、女性たちが談笑しながら粘土と水、砂と藁のような茎が中空の植物の束をスライムに突っ込んでいく。
スライムは投入された材料を体内で押しつぶしたりしているのか、激しくクネクネとした蠕動運動を繰り返し成型されたレンガをブピッッという音とともに後端からひり出した。
出てきたレンガはゴザを敷いた上に綺麗に並べられる。これを日干しして建材として使用しているのだろう。
スライムの周りを、頭に花飾りをつけた子供たちが笑いながら駆けまわったり、スライムを撫でたりしている。
子供たちの様子を見ると、スライムは村の生活に深く関わっていると同時に、村人たちはスライムに全く恐れを抱いてはいない、むしろ村の資源として大事に扱っているということがよく分かった。
「これはす、凄いですね…」
「でしょう?おつかいモンスターによって我々の生活がつくられている、神秘的な光景だぁ…」
男はスライムの仕事ぶりに満足していたのか、恍惚な表情で目を細めながらそう言った。
「あのスライムを使えば薬剤や武器を大量生産できそうだな…とでも考えているのかい?」
突然の独鈷杵ボム太郎の声…。俺に巣くう肉塊”ぷわふも”も目を覚ましていたようだ。
「君はハイエルフに敗けたみたいだね」
”ぷわふも”のその余計な一言は、村の様子に興奮していた俺を一気に現実へ引き戻した。
「いや、敗けたのは”俺たち”だ。加えて言うと、俺たちはまだ命を繋いでいる。だから、再戦の機会もあるだろうし奴を屠る準備をする時間もある」
「ふぅん…それはえらく前向きなのだ」
”ぷわふも”は俺に嘲笑するように言った。
「ポジティブシンキングは俺の長所の一つだ。言い換えれば楽観視する傾向があるということで短所とも言えるがな」
「うーむ、メラヒポのくせに冷静な自己分析するとは生意気なのだ…しばらく休む」
”ぷわふも”はそう言うと黙りこくってしまった。
「あら…貴方が例のお客人?」
鈴のように澄んだ声。俺を呼んでいるようだ。
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