8 / 16
第7話 ハイエルフ
しおりを挟む
「ふぅ…これは不味いな」
俺はこの状態を悲観し溜息をついた。ハイエルフの後ろには、その他の一般エルフ戦士が10匹ほど控えている。
どのエルフも殺意に目をぎらつかせ、凶器を握る手にも力が入っている。それも当然か…普段自分たちが喰らっている素材によって集落が壊滅したのだから。
「アドゥム…エル」
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」
ハイエルフが呟くと、周りのエルフ達も雄叫びをあげた。
まったくもって予想外の事態。”生き残り”がここまでいるとはな…。
奴らが遠間にいるうちに仕留めねば。
そう考えた俺は投槍器を瞬時に構え、右腕を思いきり振りぬいた。放たれた槍は緩やかに回転しながら、ハイエルフの頸を捉える。
キンッ!
高い音がして高速で放たれたはずの槍が撃ち落される。
そう、奴の脚によって―。
「なんという早業…」
俺はハイエルフの恐るべき技に思わず感嘆の声をあげる。
手持ちの中で最有力の飛び道具を封じられ、俺は純粋な”白兵戦”を余儀なくされた。
俺はかわって、黒エルフから鹵獲した鉄剣をスラリと抜く。
刃渡り40センチほどと少し小ぶりの剣。片手で扱うのにちょうどいい重量と全長。エルフも外道のくせになかなかいいものを作る…と今回の襲撃前に感心していたものだった。
構えは左手足を前に、右手足を後ろに引く。会敵時には得物を相手から遠い位置にもってくる、一方で前に構えた手足で敵の攻撃を捌き攻めの好機を狙う。これは俺が従軍していた際に白兵戦のイロハとして最初に学んだことだった。
ハイエルフは、俺をまっすぐに見つめながら目を細めて口角を吊り上げた。
笑っているのか?俺の事を…。
奴はまるで準備運動でもするかのように、トントンと二回ほど軽やかにその場で跳躍する。
ドゥッ!!
ハイエルフが地面を蹴る音―。
「速いッ!」
視界からハイエルフの姿が消え、次の瞬間あまりの衝撃により意識が遠のく。
左足による前蹴り。奴は足の拇指を鉤爪のように曲げながら、俺のみぞおちに食い込ませてくる。他の足指はグッと丸まっており、拇指の一点にインパクトが集中するタイプの打撃だ。
「くッ!」
俺は身体にめり込んでいる奴の脚に向かって剣を払いながら後退する。
さらに奴は右回し蹴り。それが避けられて蹴り足が着地した瞬間、俺の正面に向かってそのままサイドステップをするように右足で地面蹴り上げ足刀蹴りにつなげてきた。
それらの巧みな技の数々を俺は息を整えつつ躱していく。
今度は左からの斬りつけ。ハイエルフの腕は奴の肩から膝まで届くほどの
長さがある。よって、その腕から繰り出される斬撃は非常にリーチが長く、遠心力も相まって恐ろしい威力を誇るのだった。
3度鉄剣で蹴りや斬撃を受け、握る手がしびれ始める。
奴の”聖戦”の邪魔になるからか、それとも弓矢の斜線が俺と重なるからか、他の黒エルフは手を出してこない。
奴は右脚から左手、左脚から右手と対角線状のコンビネーションをフェイントやブラフを交えながら行ってくる。
うむ、これはなかなかの技巧派だ。
闘いの最中、そのようなことを考えながらひたすらに攻撃を躱す。
剣を奴へ突き出すものの、奴の身体は鎧もなく剥き出しの胴体ですら傷一つつかない。
奴の攻撃はさらに勢いを増し、スーフィーダンスのように剣を持った両手を伸ばしながら高速回転する。
そこから左回し蹴りを放ちつつ、倒立し今度はブレイクダンスのように両足を旋回させながら足の甲に付けている棘で俺を刺し貫いてくる。
俺は柔法の前回り受け身のように、その猛攻からエスケープし距離を取る。
一度立て直しを図らなければ…。
俺が3メートルほど奴から距離を取り、次の攻勢のために吸息したその瞬間!
ヒュッ!
倒立から体勢を立て直した奴は剣を俺に投擲した。
「あっ…」
虚をつかれた俺の喉笛に深々と奴の鉄剣が突き刺さっている。剣の柄尻(持ち手の後端)には縄が結わえ付けられており、それが奴の手甲まで伸びて繋がれていた。
ハイエルフが素早く腕を引くと、剣は俺の身体から抜け奴の手に再び握られた。
「迂闊ッ…!」
己の不覚を恥じるものの、意思とは関係なしに意識が遠のいていく…。
俺がまた死を覚悟した、その時―。
「闘うんだ…山田くん」
俺の思考に何者かが介入してきた。
俺はこの状態を悲観し溜息をついた。ハイエルフの後ろには、その他の一般エルフ戦士が10匹ほど控えている。
どのエルフも殺意に目をぎらつかせ、凶器を握る手にも力が入っている。それも当然か…普段自分たちが喰らっている素材によって集落が壊滅したのだから。
「アドゥム…エル」
「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」
ハイエルフが呟くと、周りのエルフ達も雄叫びをあげた。
まったくもって予想外の事態。”生き残り”がここまでいるとはな…。
奴らが遠間にいるうちに仕留めねば。
そう考えた俺は投槍器を瞬時に構え、右腕を思いきり振りぬいた。放たれた槍は緩やかに回転しながら、ハイエルフの頸を捉える。
キンッ!
高い音がして高速で放たれたはずの槍が撃ち落される。
そう、奴の脚によって―。
「なんという早業…」
俺はハイエルフの恐るべき技に思わず感嘆の声をあげる。
手持ちの中で最有力の飛び道具を封じられ、俺は純粋な”白兵戦”を余儀なくされた。
俺はかわって、黒エルフから鹵獲した鉄剣をスラリと抜く。
刃渡り40センチほどと少し小ぶりの剣。片手で扱うのにちょうどいい重量と全長。エルフも外道のくせになかなかいいものを作る…と今回の襲撃前に感心していたものだった。
構えは左手足を前に、右手足を後ろに引く。会敵時には得物を相手から遠い位置にもってくる、一方で前に構えた手足で敵の攻撃を捌き攻めの好機を狙う。これは俺が従軍していた際に白兵戦のイロハとして最初に学んだことだった。
ハイエルフは、俺をまっすぐに見つめながら目を細めて口角を吊り上げた。
笑っているのか?俺の事を…。
奴はまるで準備運動でもするかのように、トントンと二回ほど軽やかにその場で跳躍する。
ドゥッ!!
ハイエルフが地面を蹴る音―。
「速いッ!」
視界からハイエルフの姿が消え、次の瞬間あまりの衝撃により意識が遠のく。
左足による前蹴り。奴は足の拇指を鉤爪のように曲げながら、俺のみぞおちに食い込ませてくる。他の足指はグッと丸まっており、拇指の一点にインパクトが集中するタイプの打撃だ。
「くッ!」
俺は身体にめり込んでいる奴の脚に向かって剣を払いながら後退する。
さらに奴は右回し蹴り。それが避けられて蹴り足が着地した瞬間、俺の正面に向かってそのままサイドステップをするように右足で地面蹴り上げ足刀蹴りにつなげてきた。
それらの巧みな技の数々を俺は息を整えつつ躱していく。
今度は左からの斬りつけ。ハイエルフの腕は奴の肩から膝まで届くほどの
長さがある。よって、その腕から繰り出される斬撃は非常にリーチが長く、遠心力も相まって恐ろしい威力を誇るのだった。
3度鉄剣で蹴りや斬撃を受け、握る手がしびれ始める。
奴の”聖戦”の邪魔になるからか、それとも弓矢の斜線が俺と重なるからか、他の黒エルフは手を出してこない。
奴は右脚から左手、左脚から右手と対角線状のコンビネーションをフェイントやブラフを交えながら行ってくる。
うむ、これはなかなかの技巧派だ。
闘いの最中、そのようなことを考えながらひたすらに攻撃を躱す。
剣を奴へ突き出すものの、奴の身体は鎧もなく剥き出しの胴体ですら傷一つつかない。
奴の攻撃はさらに勢いを増し、スーフィーダンスのように剣を持った両手を伸ばしながら高速回転する。
そこから左回し蹴りを放ちつつ、倒立し今度はブレイクダンスのように両足を旋回させながら足の甲に付けている棘で俺を刺し貫いてくる。
俺は柔法の前回り受け身のように、その猛攻からエスケープし距離を取る。
一度立て直しを図らなければ…。
俺が3メートルほど奴から距離を取り、次の攻勢のために吸息したその瞬間!
ヒュッ!
倒立から体勢を立て直した奴は剣を俺に投擲した。
「あっ…」
虚をつかれた俺の喉笛に深々と奴の鉄剣が突き刺さっている。剣の柄尻(持ち手の後端)には縄が結わえ付けられており、それが奴の手甲まで伸びて繋がれていた。
ハイエルフが素早く腕を引くと、剣は俺の身体から抜け奴の手に再び握られた。
「迂闊ッ…!」
己の不覚を恥じるものの、意思とは関係なしに意識が遠のいていく…。
俺がまた死を覚悟した、その時―。
「闘うんだ…山田くん」
俺の思考に何者かが介入してきた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる